夫の「遺族年金8万円」を受給中です。65歳から「自分の年金10万円」も受け取れますが“上乗せ”は可能ですか?「全額支給停止」になる場合もあるのでしょうか? 支給ルールを確認
亡くなった人が国民年金または厚生年金の被保険者だった場合は、遺族年金を受け取れますが、自身が年金を受け取れる年齢に達した場合にはどうなるのでしょうか。今回は、どういう場合に遺族年金と自身の年金を受け取れるのか、働き方別にいくら受け取れるのかをシミュレーションします。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
遺族年金とは
遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つあります。国民年金の被保険者が亡くなった場合には遺族基礎年金、厚生年金保険の被保険者が亡くなった場合には遺族厚生年金が支給されます。
それぞれの受給対象者は次の通りです。なお、優先順位の高い順で記載しています。
・遺族基礎年金:子のある配偶者、子
・遺族厚生年金:子のある配偶者、子(※1)、子のない配偶者(※2)、父母(※3)、孫、祖父母(※3)
「子」とは、18歳になった年度の3月31日までにある人、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人です。なお、子は婚姻していない場合に限ります。
※1:子がいる妻または子がいる55歳以上の夫が遺族厚生年金を受け取っている場合、子どもに支給されません。
※2:子がいない30歳未満の妻は5年間のみ受給できます。子がいない夫は55歳以上である場合に受給できますが、60歳からとなります。ただし、遺族基礎年金を合わせて受給できる場合は55~60歳の間でも受け取れます。
※3:父母または祖父母は、55歳以上の場合受給できますが、受け取れるのは60歳からです。
65歳になったら遺族年金と自分の年金の2つを受け取れる?
年金は、一人1年金が原則です。しかし、遺族厚生年金の受給者が65歳以上の場合、老齢基礎・老齢厚生年金、障害基礎年金または旧厚生年金保険・旧国民年金の老齢年金の一部または全部を合わせて受け取れます。
例えば、現在63歳の妻が、60歳のときに厚生年金の被保険者だった夫を亡くして遺族厚生年金を受け取っていた場合、65歳になったときには自身の年金も受け取れます。しかし、妻がそれまで加入していた保険によって、受け取れる年金・金額は変化します。
2つの年金を受け取るときの金額はどうなる?
では、実際にどのような場合に2つの年金を受け取ることができるのか、金額はいくらになるのかをシミュレーションしてみましょう。
妻が専業主婦だった場合
現在、63歳の妻がずっと専業主婦だった場合、65歳になったときに受け取れる年金は老齢基礎年金となります。この場合、遺族厚生年金と老齢基礎年金の両方の受給が可能です。
令和8年度において、老齢基礎年金の満額の金額は月額7万608円です。遺族厚生年金が月額8万円だった場合、合わせて15万608円を受け取れます。
妻が厚生年金保険に加入して働いていた場合
妻が厚生年金保険に加入していた場合、老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金も受け取れます。老齢厚生年金の受給額は、加入していたときの報酬額や加入期間によって計算されます。
この場合、65歳になったときには老齢基礎年金・老齢厚生年金・遺族厚生年金の3つの年金を受け取れるようになりますが、遺族厚生年金よりも老齢厚生年金のほうが優先されます。具体的には次の通りです。
・老齢厚生年金→全額支給
・遺族厚生年金→老齢厚生年金に相当する金額が支給停止
遺族厚生年金の支給額が自身の老齢厚生年金の支給額より高い場合、その差額を受け取ることができます。例えば、遺族厚生年金の支給額が10万円、老齢厚生年金の支給額が8万円だった場合、差額の2万円を受け取ることができます。この場合、3つの年金を合わせると全部で17万608円を受給できます。
反対に、遺族厚生年金が8万円、自身の老齢厚生年金の支給額が10万円だった場合、遺族厚生年金は全額支給停止となるため、自身の老齢厚生年金の10万円のみが支給されることになります。老齢基礎年金と合わせた支給額は先ほどと同じ17万608円ですが、遺族厚生年金は受け取っていないことになります。
なお、現在63歳の女性の場合、特別支給の老齢厚生年金の受給の対象となります。特別支給の老齢厚生年金とは、昭和36年4月1日以前に生まれた男性、もしくは昭和41年4月1日以前に生まれた女性で、厚生年金保険または共済組合などの加入期間が1年以上ある場合、生年月日に応じた年齢から65歳になるまでの間受け取れるものです。
遺族厚生年金の男女差が解消される
現在、男女で遺族厚生年金を受け取れる条件が異なっていますが、女性の就業率の向上などに合わせ、見直しされることになりました。具体的には図表1の通りで、男性は2028年4月から実施、女性は2028年4月から20年かけて段階的に実施されます。
図表1
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについてより筆者作成
60歳以上で死別の場合や、すでに遺族厚生年金を受け取っている場合には現状のままです。
自身の加入している保険をよく確認しよう
これまで見てきたように、妻が加入していた保険によって、遺族厚生年金と同時に受け取れる年金の種類・金額は異なります。
特に、老齢厚生年金は、加入していた期間や報酬額によって受け取れる金額が大きく変化します。遺族厚生年金よりも金額が高い場合は、全額支給停止となりますが、それまで積み重ねてきたものが老後の生活を支える柱になるということです。
まずは、ねんきんネットやねんきん定期便で自身の加入している保険や受け取れる金額をしっかり把握しておきましょう。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 令和8年4月分からの年金額等について
執筆者 : 金成時葉
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

