68歳の母は「遺族年金7万円」「パートで10万円」の収入があります。遺族年金は“収入が多いと減る”と聞きましたが、本当ですか? いくらまで非課税で働けるでしょうか?
なかには遺族年金を受け取りながら、経済的余裕や社会とのつながりを持つために、パートで働いている人もいるのではないでしょうか。
遺族年金を受け取りながら働く場合、支給額は減らされないのでしょうか? 今回は、遺族年金を受け取りながらパートで働く場合の税金などについて解説します。

2級ファイナンシャル・プランニング技能士
自身の老齢年金を受け取る場合は支給額が減る可能性もある
遺族年金の受給者が65歳以上で自身の老齢厚生年金を受け取る場合、その金額によっては遺族厚生年金の支給額が減る可能性があります。それは、遺族厚生年金よりも自身が受け取る老齢年金のほうが優先され、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する金額の支給は停止されるためです。
65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利のある人が、遺族厚生年金を受け取るときは、次の2つを比較し、高いほうが遺族厚生年金の支給額となります。
1. 死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4の額
2. 死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の1/2の額と自身の老齢厚生年金の金額の1/2を合算した額
例えば、上記の1を7万円、自身の老齢厚生年金の額を10万円とした場合、2は9万6667円となります。この場合、自身の老齢厚生年金の10万円は、遺族厚生年金の金額9万6667円よりも高くなっていることから、このケースでは遺族厚生年金は支給されません。
遺族年金に税金はかからない
遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者だった人が亡くなったとき、その人に家計を支えられていた遺族が受け取れる年金です。亡くなった人の納付状況や、年金を受け取る人の年齢などの条件を満たしている場合に受け取れます。
遺族年金は、原則として所得税や相続税が課されません。実際に、所得税法の第9条第1項第3号で次のように定められています。
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
三 恩給、年金その他これらに準ずる給付で次に掲げるもの
イ 恩給法(大正十二年法律第四十八号)に規定する増加恩給(これに併給される普通恩給を含む。)及び傷病賜金その他公務上又は業務上の事由による負傷又は疾病に基因して受けるこれらに準ずる給付で政令で定めるもの
ロ 遺族の受ける恩給及び年金(死亡した者の勤務に基づいて支給されるものに限る。)
ハ 条例の規定により地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して実施する共済制度で政令で定めるものに基づいて受ける給付
遺族年金は非課税ですから、パートの収入に対してのみ所得税や住民税などの税金が発生します。
税金がかからない収入ライン
それでは、所得税や住民税の税金が発生しない収入はいくらなのでしょうか。所得税と住民税の2つに分けて見ていきましょう。
所得税がかからない収入ライン
令和7年度の税制改正により、所得税の基礎控除などが見直されました。令和8年において所得税が非課税となる収入ラインは、基礎控除95万円、給与所得控除65万円を合わせた160万円となります。
しかし、寡婦控除の適用を受ける場合は、寡婦控除額の27万円を合わせた187万円となります。なお、寡婦控除の対象となる人は次のいずれかに該当する人です。
・夫と離婚した後、婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で合計所得金額が500万円以下の人
・夫と死別した後、婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人
ただし、事実婚など、納税者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいる場合は寡婦控除の対象にはなりません。
住民税がかからない非課税ライン
住民税の非課税限度額は45万円、給与所得控除額が65万円のため、合わせた110万円が非課税ラインとなります。しかし、住んでいる自治体によっては110万円以下であっても、住民税がかかる場合があるため、詳しくは自治体に問い合わせましょう。
また、所得税と同様、寡婦控除の適用を受ける場合は非課税ラインが変わります。例えば、東京都の場合、住民税の所得割・均等割ともに非課税となる条件は次の通りです。
・生活保護法による生活扶助を受けている
・障害者・未成年者・寡婦またはひとり親で、前年中の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合は、年収204万4000円未満)
・前年中の合計所得金額が区市町村の条例で定める額以下
<東京23区内の場合>
・同一生計配偶者または扶養親族がいる場合:35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円 以下
・同一生計配偶者または扶養親族がいない場合:45万円以下
つまり、給与所得を得ている寡婦の場合、年収204万4000円未満の場合に住民税が非課税となります。
自身の年金も考慮しよう
今回は、遺族年金とパート収入の2つを考慮して非課税ラインを解説しました。しかし、68歳であれば、自身の老齢年金を受け取っている人も多いでしょう。
その場合には、自身の年金は収入とみなされるため、パートの収入を抑えなければ、税金が発生する可能性もあります。また、自身が受け取る老齢年金の金額によっては、遺族年金そのものを受け取れないケースもあります。
税制改正などによって、非課税となる収入ラインは毎年のように変化しています。「知らなかった」で損することのないよう、新しい情報を押さえておくようにしましょう。
出典
e-Gov法令検索 所得税法
国税庁 No.1170 寡婦控除
東京都主税局 個人住民税
執筆者 : 金成時葉
2級ファイナンシャル・プランニング技能士





