父は“平均年収500万円”で厚生年金を「1500万円」以上納めたのに、母の遺族年金は「月8万円」だけ…正直“払い損”に感じますが、なぜこんなに少ないのでしょうか?
年収500万円で働き続け、1500万円以上の保険料を納めてきた父。それでも母が受け取る遺族年金が月8万円程度に留まるのは、なぜなのでしょうか。本記事では、遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い、年収500万円の場合の受取額の目安、そして「払い損」かどうかという疑問について解説します。
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遺族基礎年金とは
遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者が亡くなった際に、一定の要件を満たす遺族に支給される年金です。支給対象は「18歳到達年度末まで(障害等級によっては20歳未満)の子のいる配偶者」または「子ども本人」に限定されており、対象年齢の子どもがいない配偶者は受け取れません。
令和8年4月以降の受給額は年額84万7300円(月額約7万600円)が基本額で、子どもの人数に応じた加算があります。1人目・2人目の子には各24万3800円、3人目以降は1人あたり8万1300円が上乗せされる仕組みです。
受給するには、亡くなった方が国民年金の被保険者であった期間中に死亡していることや、保険料の納付要件を満たしていることが必要です。
遺族厚生年金とは
遺族厚生年金とは、厚生年金に加入していた会社員や公務員が亡くなった際に、その遺族に支給される年金です。遺族基礎年金と異なり、子どものいない配偶者でも受け取れる点が特徴の1つです。
受給額は、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3と定められており、生前の収入が高いほど受取額も大きくなります。計算式は「平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数×3/4」が基本で、加入期間が300ヶ月(25年)未満の場合は300ヶ月とみなして計算します。
夫が亡くなった時点で40歳以上65歳未満の妻(子なし)には、「中高齢寡婦加算」として年額63万5500円(令和8年度)が加算される制度もあります。また、65歳以降に自身の老齢厚生年金を受け取る権利がある場合は、有利な方が優先的に支給される仕組みになっています。
年収500万円の人の遺族年金の受取額とは?
年収500万円の会社員が40年間働いて亡くなった場合、遺族が受け取れる遺族厚生年金はどのくらいになるのでしょうか。年収500万円の場合、平均標準報酬額はおおよそ月41万円程度となります。これを計算式に当てはめると、遺族厚生年金は年額約81万円(月額約6万7500円)が目安になります。
子どもが独立して対象年齢の子どもがいない状態で、夫が亡くなった時点で妻が40歳以上65歳未満であれば、中高齢寡婦加算(年額63万5500円)が上乗せされます。この場合の合計は年額約144~145万円(月額約12万円)となりますが、65歳以降は中高齢寡婦加算がなくなるため、受取額は遺族厚生年金のみの月額7万円前後に下がります。
一方、子どもが18歳到達年度末(または障害等級によっては20歳未満)以前の状態で父が亡くなった場合は、遺族基礎年金も合わせて受け取れます。子ども1人の場合は、基礎年金分として年額約109万円(令和8年度)が加わるため、合計は月額15万円を超えるケースも出てきます。
タイトルにある「月8万円」という金額は、子どもが独立済みで中高齢寡婦加算も対象外となった状況など、特定の条件が重なったケースでの目安額に相当します。実際の受取額は、亡くなった時点での年齢や家族構成、妻自身の年金受取状況や収入状況によっても変わるため、年金事務所に個別に確認するのが確実です。
厚生年金を遺族年金で受け取ると払い損になる?
「これだけ保険料を払ってきたのに、遺族年金がこれだけ?」と感じる方は少なくありません。年収500万円の場合、厚生年金の本人負担の保険料は年間約45万円程度で、40年間の累計では約1800万円にのぼります。それに対して遺族厚生年金の月額が7万円前後では、少なく感じるのは自然な反応です。
ただし、年金はそもそも「保険」の仕組みで設計されており、払った保険料を返してもらう貯蓄型などとは根本的に異なります。遺族年金は、火災保険と同じように「使わなくてよかった」状態が本来の理想であり、本人が長生きした場合には老齢厚生年金として生涯にわたって受け取り続けられます。
また、厚生年金は遺族年金だけでなく、障害厚生年金のリスクカバーも兼ねています。病気やけがで働けなくなった際にも給付を受けられる仕組みが組み込まれており、払い損かどうかを単純な数字の比較だけで判断するのは難しい面があります。
さらに、厚生年金の保険料は労使折半のため、会社が負担した分も合わせれば累計の納付額は約3600万円にのぼります。個人の貯蓄では到底カバーしきれない長寿・障害・死亡という3つのリスクに対応できる点こそ、公的年金が持つ社会保障としての本質です。
まとめ
年金はあくまで「保険」の仕組みであり、老齢・障害・遺族の3つのリスクに対応した社会保障として機能しています。
「払い損」かどうかは単純な金額の比較だけでは判断できないものであって、万一のリスクへの備えとして捉えることが大切です。なお、正確な受取額が気になる場合は年金事務所への相談などで確認するとよいでしょう。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
執筆者 : 高柳政道
FP1級、CFP、DCプランナー2級

