65歳になります。月収30万円で雇用延長の予定ですが、在職老齢年金制度に触れないでしょうか
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員
大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。
60歳以降の再雇用者の給与はどのくらいか
定年後に再雇用された場合、多くの方は定年直前の賃金から報酬額が下がります。
厚生労働省の調査では、再雇用時に基本給の時間単価が「50%以上80%未満」に下がるのが60.4%、「50%未満」が16.5%となっています(※1)。
また、60代前半就業者の平均収入は年間356.8万円、月額だと約30万円となっており(※2)、企業規模などによる違いはありますが、再雇用後の賃金は月30万円前後が一つの目安といえるでしょう。つまり、今回の相談にある月収30万円は、再雇用者としては平均的な水準と考えられます。
なお、60歳以降の賃金が75%未満に低下した方を給付対象としている高年齢雇用継続給付金は、多くの企業で60歳以降に賃金水準が下がる実態を前提とした制度です。最新の基準では、60歳時点の賃金から64%以下に下がると、新月収の10%が給付されます。
在職老齢年金の仕組みと減額例
在職老齢年金とは、厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受け取る方について、一定額を超えると老齢厚生年金の一部または全部を支給停止する制度です。制度はこれまで何度も見直しされており、2026年4月からは、支給停止基準額が62万円に引き上げられました。
具体体で確認してみましょう。
例えば、賞与も含めた年収額のひと月当たりの月収が50万円で、老齢厚生年金が月18万円の方の場合、50万円+18万円=68万円となり、最新の基準額62万円を6万円上回ります。超過した6万円の半分、3万円が支給停止となるため、老齢厚生年金の受給額は3万円減額され15万円になるということです。
ここで重要なのは、合算対象は老齢厚生年金(報酬比例部分)と、厚生年金加入中の給与・賞与だということです。つまり、老齢基礎年金や個人事業の売上、事業所得、不動産所得、配当所得などは合算対象になりません。
合算対象は被用者(雇用される側)として支給される給料なので、退職後にフリーランスでいくら稼いでも、在職老齢年金制度により厚生年金が減額されることはありません。(※3)
月収30万円は対象になるのか
相談者は65歳で雇用延長予定、月収は30万円です。年金額は個人差がありますが、厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」(※4)によると、厚生年金受給者の平均年金額は月15万289円です(老齢基礎年金を含む)。
仮に平均的な年金額の受給者であれば、給与30万円+年金約15万円=45万円程度です。支給停止基準額62万円を大きく下回るため、在職老齢年金による減額は発生せず、質問のケースでは在職老齢年金の対象になりません。
近年、高齢者の就労促進を目的として支給停止基準額の引上げが加速しています。方向性としては、将来さらに引き上げられる可能性もありますが、そうなると上限に触れるのは毎月けっこうな給料をもらえている方に限られてくると思われます。
また、見落としがちな点として、年金の繰下げ受給を計画し、待機しているケースがあります。
「受け取っていないのだから在職老齢年金は関係ない」と思い込みがちですが、実際は繰下げ期間中であっても、「本来受け取るはずだった老齢厚生年金額」を基に判定が行われます。この場合、もともと繰下げ中ですから、たとえ合算額が基準額を超えていても、支給停止の影響は実質的にありません。
ただし、本来支給停止されるべき部分は、「繰下げ加算」の対象になりません。つまり、将来受け取る年金額を増やそうとして繰下げを選択しても、在職老齢年金で停止される金額が計算上発生した場合、その部分については繰下げ加算の増額効果がないということです。
前章の減額されるケースでみると、15万円分は繰下げ加算されますが、3万円分はその金額のままの支給になるということです。
月収30万円であれば減額の心配はありませんが、高収入で会社に残り働き続ける予定の方や、繰下げ受給を検討している方は、事前に年金事務所や専門家に確認しておくと安心でしょう。
出典
(※1)厚生労働省 中央労働委員会 令和7年賃金事情等総合調査
(※2)厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況-雇用形態別-
(※3)厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
(※4)厚生労働省 令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
執筆者 : 伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

