扶養内パートを続けるか、社会保険に入って働くかで迷っています。第3号被保険者のままでいるのは本当に得なのでしょうか?
そこで本記事では、そのような方に向けて社会保険の加入条件や内容を整理したうえで、扶養内でいる場合と、外れた場合のメリットとデメリットについて解説します。
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。
社会保険、第3号被保険者とは?
まずは、表題にある「社会保険」や「第3号被保険者」とは何かについて簡単に整理しましょう(すでに知っている、という方は読み飛ばしてください)。
日本における(公的)社会保険は主に、「健康保険」「年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つがあります。
それぞれ、病気やけがへの備え(健康保険)、障害を負った場合や老後の保障(厚生年金保険)、介護が必要になったときの備え(介護保険)、失業等への備え(雇用保険)などの役割があります。これらに加入し、一定条件を満たせば、必要なときに給付を受けることができます。
一方、これらの名前に「保険」が付いているとおり、一種の保険制度ですので、自身で保険料を支払う必要があります。
では、もう一つの「第3号被保険者」とは何でしょうか?
これは、国民年金に加入する方のうち、主に扶養されている方が加入する形態の一つです。主な特徴は以下に記すとおり、年金保険料の支払いが不要になることです。
日本在住の20歳以上60歳未満の方が加入する国民年金には、その加入する方の働き方等に応じて次の3つがあります。
・第1号被保険者
日本在住で、かつ以下の第2、第3号被保険者でない方が対象です。主に、自営業や学生などが加入します。
・第2号被保険者
働く方のための年金である厚生年金に加入している方が対象です。主に、会社で働く方や公務員、一部のパート・アルバイトの方が加入します。
・第3号被保険者
第2号被保険者に扶養されている配偶者が対象です。
国民年金も、老齢年金など将来の給付のために保険料を支払います。ただし、第3号被保険者については保険料を支払う必要がありません。第2号被保険者が支払う保険料で、カバーされているからです。
扶養内、扶養外のメリット・デメリット
では、これまでの内容を踏まえて、表題にある質問の内容をもう少し深く明らかにしてみましょう。
今回の質問者の悩みを要約すると、次のどちらにすべきか迷っています。
・扶養の範囲内で働く
・(扶養から外れて)社会保険に入って働く
実際、どちらにすべきなのでしょうか。
その答えは、自身が希望する働き方や金銭面での考え方によってさまざまです。まずはそれぞれの主なメリット・デメリットで比較してみましょう。なお、質問者の配偶者は会社勤め、つまり国民年金第2号被保険者であることを想定しています。
(メリット)
・健康保険の保険料を支払わなくて済む
・第3号被保険者であるかぎり、国民年金保険料を支払わなくて済む
・比較的短い勤務時間で働けるため、生活の自由度が増す
(デメリット)
・収入が一定額で頭打ちになる
・収入を扶養の範囲内に収めるために、働き方を制限しなければならない
・扶養者である配偶者が退職するなどした場合、自身が保険料を負担しなければならなくなる可能性がある
(メリット)
・収入を一定額に抑える、働き方を制限する、などを気にすることなく働くことができる
・収入を好きなだけ増やすことができる
・万が一病気やけがで働けなくなった場合の傷病手当金が得られたり、自身の年金を増やしたりすることができる
(デメリット)
・健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料を自分で支払わなければならない
・働く時間を増やすことも可能だが、その分生活の自由度が減る可能性がある
以上のメリット・デメリットを見ても、どちらにするかの決め手は一概にはいえません。しかし、一般的には、主に働き方や収入や支出など金銭面が、選択のカギになるといえそうです。
130万円の壁に注意!
前項では、「選択は一概にはいえない」とお伝えしましたが、今度は質問者に合わせて、「どちらが金銭面で得か」という点で考えてみましょう。
どちらが得かは、単純化すると、次の2つの選択肢となります。
・扶養を外れたことにより増えた収入や年金の増加などの金銭的メリットが、社会保険料の負担増を上回る場合
→金銭面のメリットあり
・扶養を外れたことにより増えた収入や年金の増加などの金銭的メリットが、社会保険料の負担増を下回る場合
→金銭面のメリットなし
したがって、金銭面のメリット・デメリットを計算して選べばよい、ということになりますが、ここでは注意すべき点を挙げておきます。
それは、扶養を外れた場合の年収が「130万円の壁」をギリギリ超える場合です。
注:これ以外に、社会保険の加入要件の一つである「106万円の壁」がありますが、2026年10月に撤廃予定のため、割愛します(※1)。
130万円の壁とは、年収が130万円を超えると、配偶者の扶養から外れるため、自分で国民年金や国民健康保険に加入するか、もしくは勤務先を通じて社会保険に加入する必要がある基準のことです。
具体的な例で見てみましょう。
例えば、表題の方が勤務時間を増やした結果、収入が130万円の壁を5万円超過したとします。
この場合、それまでは国民年金第3号被保険者、かつ扶養者の健康保険に加入できていましたが、それができなくなります。
代わりに、勤務先の社会保険の加入要件を満たす場合は、厚生年金に加入し、勤務先を通じて健康保険に加入することになります。つまり、自身でこれらの保険料を支払うことになります。
厚生年金保険料の料率を9.15%(※2)、健康保険の料率を5.77%(※3)とすると、保険料負担はおおよそ次のようになります。なお、分かりやすくするため、税金など他の要素は無視し、計算方法を単純化しています。
135万円×(9.15%+5.77%)=20万1420円
収入が130万円の壁を5万円超えただけで、年20万1420円の負担増となります。
迷ったら、まずは雇用主に相談を
前項の結果を見ると、「130万円ギリギリ超えて扶養から外れると、全然トクじゃない!」となってしまいそうです。
しかし、実際にはたとえギリギリ超えたとしても、将来給与がもっと上がる可能性があるか、また、それに伴いどれだけ年金が増えるか、扶養者である配偶者がこれからも本当に扶養者であり続けるのだろうか、などを考えると、「長期的にはトク」となる場合も考えられます。
したがって、扶養のままでいるべきか、それとも社会保険を自分で払って働くべきか、という問いには、ご自身の今後も含めて慎重に検討する必要があります。
補足ですが、もし繁忙期などで一時的に残業が増えるなどで130万円を超えてしまった、という場合は、会社に事業主の証明書を提出することで、被扶養者のままと扱われる制度があります(※4)。
もし、実際に社会保険に入って働くべきかどうか迷われた場合は、まずは雇用主に相談してみましょう。そのうえで、年金や健康保険のことで分からないことがあれば、お近くの年金事務所やお住まいの市区町村の担当部署に問い合わせることから始めるのがよいでしょう。
出典
(※1)厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト 社会保険加入の要件
(※2)日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの保険料額表(令和8年度版)
(※3)全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
(※4)厚生労働省 「年収の壁」への対応
執筆者 : 酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。

