「年金を70歳で受け取ると42%増える」という65歳の夫…でも「5歳年下の妻」がいると、加給年金“年41万円”を受け取れず損!?「繰下げでの増額分」「取り逃す加給年金額」を比較
ただし、5歳年下の妻がいるような家庭では、見落としやすい落とし穴があるのです。繰下げの待機中は「加給年金」を受け取れないため、ここを踏まえずに待機期間を延ばすと、思わぬ取りこぼしにつながりかねません。
本記事では加給年金の仕組みと令和8年度の金額を確認しながら、繰下げによる増額分と取り逃す加給年金をモデルケースで比べてみます。
2級ファイナンシャルプランナー技能士
加給年金の仕組みと令和8年度の年額
加給年金は、厚生年金の家族手当にあたる加算です。厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人が65歳に達した時点で、その人に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合、老齢厚生年金へ上乗せされます。
配偶者が65歳になって、自身の老齢基礎年金を受け取り始めるまで支給されるため、期間の限られた加算といえます。
金額は年度ごとに改定されますが、令和8年度の配偶者加給年金額は、基本額が24万3800円です。これに、受給者の生年月日に応じた特別加算が加わり、昭和18年4月2日以後生まれの場合は特別加算が17万9900円で、合計は42万3700円となります。
年に40万円を超える加算であり、5歳年下の配偶者がいれば、その差の5年間にわたって受け取れる計算になるわけです。
繰下げの増額分と加給年金の逸失分を比べる
ここで注意したいのが、繰下げ待機中の扱いです。繰下げ待機期間中は、加給年金額や振替加算を受け取れません。
さらに、加給年金額は繰下げによる増額の対象にもならないため、老齢厚生年金を70歳まで繰り下げると、その5年間の加給年金はそのまま受け取れずに終わってしまうのです。
モデルで比べてみましょう。昭和36年生まれで、老齢厚生年金の報酬比例部分が年120万円の夫、5歳年下の妻という設定です。
主な数字は次のとおりです。
・繰下げ後の老齢厚生年金:120万円×1.42=年170万4000円
・繰下げによる増額分:170万4000円-120万円=年50万4000円
・受け取れない加給年金(5年分):42万3700円×5年=211万8500円
繰り下げなければ65歳から70歳までの5年間、加給年金を毎年受け取れますが、繰下げを選ぶとこの分を丸ごと取り逃すことになります。
累積の受取額で追うと、この設定で両者が並ぶのはおよそ86歳です。加給年金がない場合の分岐点はおよそ82歳ですので、加給年金がある家庭では、繰下げが有利に転じる年齢が4年ほど後ろにずれるといえるでしょう。
判断のポイント
損益分岐点は、前提しだいで動きます。厚生年金額や配偶者との年齢差、その後の寿命によって結果は変わるため、一律にどちらが得とは言い切れません。
長生きを見込むなら繰下げの増額が効いてきますが、早い時期の受取を重視するなら、加給年金を確保する選択にも合理性があるといえます。
整理のポイントは、基礎年金と厚生年金を別々に繰り下げられることです。つまり、どちらか一方のみを繰り下げることが可能なのです。
加給年金は老齢厚生年金への加算であるため、厚生年金は65歳から受け取って加給年金を確保しつつ、基礎年金だけを繰り下げるという組み合わせも考えられるでしょう。
まとめ
70歳までの繰下げで42%の増額は、たしかに大きな効果があります。ただし、年下の配偶者がいる家庭では、繰下げ待機中に加給年金を受け取れず、令和8年度で年42万3700円、5年で200万円を超える金額を取り逃す可能性があります。
増額分と加給年金の逸失分の両方を並べたうえで、厚生年金だけ先に受け取る方法も含めて検討するとよいでしょう。判断に迷う場合は、年金事務所やねんきんダイヤルで自身の見込み額を確認しておくと安心です。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 加給年金額と振替加算
執筆者 : 高橋祐太
2級ファイナンシャルプランナー技能士

