55歳の会社員が“ねんきん定期便”の「見込み額12万円」に絶望! 60歳以降“月収25万円”で働いても、増えるのは「月6800円」だけ…50代でこの金額は“お先真っ暗”!? 年金額を増やす「現実的な手段」
「老齢年金の種類と見込額……月12万円!?」
住宅ローンはまだ残っているし、子どもの学費だってピークを迎えるかもしれない。この先の容赦ない物価高を考えると、月12万円でどうやって生活していけばよいのでしょうか。目の前が真っ暗になる人もいるはずです。
特に40代から50代の会社員にとって、この金額は文字通り死活問題です。共働き夫婦なら2人分の年金を合わせるという手段もありますが、独身者や配偶者の年金が少ない場合は、大部分を1人で賄わなければなりません。
家賃や更新料、さらには加齢に伴う医療費の負担を考えれば、月12万円での生活は困難でしょう。
しかし、絶望してハガキをゴミ箱に捨てるのは早いです。50代からでも、年金受給額を「自力で増やす」泥臭く現実的な手段は確実に存在します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、第一種/第二種電気工事士、医療情報技師、2級ボイラー技士、ボイラー整備士
50歳からの「ねんきん定期便」は現実を突きつける
50歳未満の定期便には「これまでの加入実績に応じた年金額」が記載されていますが、50歳以上の定期便には「現在の加入条件で60歳まで働き続けた場合の、将来の年金見込額」がはっきりと記載されます。
例えば、現在55歳で会社員として働いている人の見込額が「年額144万円(月12万円)」だったとします。これは「今と同じ給料で60歳まで働き続けた」という前提の数字です。
しかし、現実は厳しいものです。役職定年などで給料が下がることもあれば、体調を崩して時短勤務を余儀なくされることもあるかもしれません。そうなれば、実際の受給額はさらに下ブレする危険性をはらんでいるのです。
諦めるのは早い! 60歳以降も厚生年金に加入して働く
では、どうすればよいのでしょうか。最も確実な方法は「60歳以降も会社員として働き、厚生年金に加入し続ける」ことです。
老齢厚生年金は、加入期間と標準報酬月額(給与の平均)によって決まります。60歳を過ぎても厚生年金保険料を払い続ければ、その分、将来の老齢厚生年金の報酬比例部分は上乗せされる仕組みです。
例えば、60歳から65歳までの5年間、標準報酬月額25万円で働き続けた場合を計算してみましょう。
25万円×5.481÷1000×60ヶ月=年額約8万2000円
月額に換算すると、約6800円のアップです。「たったそれだけ? 」と思うかもしれません。しかし、これが生きている限り一生涯続くとなれば話は別です。仮に65歳から85歳までの20年間受け取れば、総額で約164万円の違いになります。
隠れたボーナス「経過的加算」の存在
さらに見落とされがちなのが「経過的加算」の存在です。国民年金(老齢基礎年金)は、20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)すべて保険料を納めて初めて満額受け取れます。しかし、学生時代に未納期間があったり、転職の合間に払い忘れたりして、480ヶ月に達していない人は意外と多くいます。
実は、60歳以降も厚生年金に加入して働くと、この「不足していた国民年金の期間」を補う形で、老齢厚生年金に含まれる「経過的加算」が増える場合があります。
経過的加算とは、老齢基礎年金に反映されない期間などを調整するために、老齢厚生年金に上乗せされる仕組みです。
仮に国民年金の未納期間が36ヶ月(3年分)あったとします。60歳以降に厚生年金に3年間加入して働けば、老齢基礎年金そのものが満額に近づくわけではありませんが、経過的加算によって年金総額を補える可能性があります。
これだけで年額約6万円(月額約5000円)の増額につながる場合があるのです。先ほどの厚生年金の上乗せ分と合わせれば、月額1万円以上のリカバリーも十分に射程圏内に入ります。
「稼ぐと年金が減る」は本当? 在職老齢年金のリアル
ここで、世間によくある不安を取り上げておきます。「60歳以降も働くと、稼ぎすぎて年金がカットされるから損だ」という噂です。
これは「在職老齢年金」という制度のことです。たしかに、働きながら受け取る年金(基本月額)と、その月の給与やボーナス(総報酬月額相当額)の合計が一定の基準額を超えると、年金の一部または全額が支給停止になってしまいます。
しかし、安心してください。令和8年度の基準額は「65万円」です。
つまり、在職老齢年金の計算対象となる老齢厚生年金の基本月額が12万円の人の場合、月収(ボーナスを含む)が53万円を超えなければ、年金は1円もカットされないのです。しかし、多くの会社員にとって、60歳以降に月収53万円以上を稼ぐのは少数派ではないでしょうか。
一部の高所得者の悩みを真に受けて「働くと損」と思い込むのは非常にもったいないです。月12万円の年金見込額なら、カットされる心配はほぼなく、働いた分だけ将来の年金を増やせる余地があるのです。
究極の選択「繰下げ受給」の壁
もう1つ、受給額を劇的に引き上げる手段が「繰下げ受給」です。原則65歳からの受け取りを1ヶ月遅らせるごとに、受給額は0.7%増額されます。仮に70歳まで5年間遅らせれば、増額率は42%にも跳ね上がります。
月12万円×1.42=月17万400円
数字だけ見れば魅力的です。しかし、ここでリアルな心の声が聞こえてきそうです。「70歳まで年金なしで、どうやって食いつなぐんだよ」と。
そう、繰下げ待機中の生活費をどう捻出するかが最大の壁となります。退職金を取り崩すのか、はたまた70歳まで働き続けるのか。住宅ローンが残っていたり、手元の貯蓄に余裕がなかったりするなら、繰下げは現実的な選択肢とはいえないかもしれません。
だからこそ、まずは目の前の「60歳以降も厚生年金に加入して働き続ける」という泥臭い選択が、自分の身を守る最も確実な防衛策となります。
まとめ
ねんきん定期便に印字された「月12万円」という数字は、決して変えられない運命ではありません。「まだまだこれからだ」と腹をくくり、定年後の働き方を今から戦略的に組み立てていくための、強烈なアラームなのです。
出典
日本年金機構 ねんきん定期便の見方
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
執筆者 : 西村和樹
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、第一種/第二種電気工事士、医療情報技師、2級ボイラー技士、ボイラー整備士
