夫が亡くなりました。義父の介護はしたくないのですが、死後離婚をしたら遺族年金を受け取れなくなりますか
A子さんは、義父の手助けはしようと思うけれど、将来的に在宅介護で身のまわりの世話まではできない、同じお墓にも入りたくないと考えています。そのようなときに「死後離婚」の制度があると聞き、相談にいらっしゃいました。
CFP(R)認定者
宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。
いわゆる死後離婚とは
「死後離婚」とは配偶者が亡くなった後、義理の親や兄弟姉妹などとの親族関係を終わらせるために「姻族関係終了届」を提出することです。
姻族とは、結婚によってつながった配偶者の父母や兄弟などの親族です。離婚であれば、夫婦関係がなくなると自動的に夫の親族との関係はなくなります。しかし死別した場合、何もしなければ法律上の姻族関係はそのまま残ります。
かつては、夫の死後も「嫁」が義父母の老後の世話や介護、墓の管理などを担うのが当たり前と考えられてきました。昨今、若い世代ではそうした考え方は薄れていますが、その価値観のもとで暮らしてきた高齢世代には、「夫が亡くなっても嫁が義父母の面倒を見るのは当然」という意識が残っているケースも少なくありません。
「姻族関係終了届」は、本籍地または住まいのある市区町村に提出することで完了します。いつまでに出さなければいけないという期限はなく、配偶者の親族に了解を得る必要もありません。届を出せば戸籍に「姻族関係終了」の記載がされますが、戸籍を調べられなければ誰かに知られることもありません。
遺族年金はどうなる?
A子さんがまず心配したのは、遺族年金を受け取れるかどうかでした。A子さんには中学生と高校生の子どもがいます。遺族年金を受け取れなくなったら、A子さんのパート収入だけでは子どもたちの望む高校や大学に行かせてやれるか不安です。
一般には「死後離婚」と呼ばれていますが、姻族関係終了届によって終了するのは、配偶者側の親族との姻族関係だけです。亡くなった配偶者との関係そのものが否定されるわけではありません。そのため、届を提出しても遺族年金を受け取る権利は変わらず、相続をやり直す必要もありません。
祖父と孫の関係に影響はあるか?
死後離婚しても、祖父と孫の関係に変わりはありません。義父が亡くなったときには一人息子であるA子さんの夫がすでに亡くなっているので、その子どもたちが代襲相続人としてすべての財産を相続します。
A子さんがもう一つ心配しているのは、義父と法律上の関係を切ることで自分は楽になるけれど、代わりに子どもたちが祖父の扶養や介護をすることになるのではないか、ということでした。
今は二人とも未成年なので、そのようなことはないでしょうが、いずれは相応の責任が生ずるようになるでしょう。でも、姻族関係終了届を提出したかどうかで、この点が変わることはありません。
A子さんの決意
A子さんは、まだ中学生と高校生なのでかわいそうだとは思いましたが、子どもたちに相談することにしました。子どもたちは義父にかわいがられていましたが、何度か母親が怒鳴られたのを見ていたので、賛成してくれました。
A子さんは姻族関係終了届を提出して死後離婚することにしました。ただ、義父や親せきに知らせるつもりはありません。自分が「これ以上は無理!」となったときのお守りにするつもりです。
子どもたちはいずれ義父の財産を相続することになるので、そのときに事情を知らない人たちから誤解されることがないよう、できる範囲で義父を支えるつもりということでした。
「死後離婚」は、自分の人生を自分で選択するための制度でもあります。制度を正しく知って、よりよいライフプランへの一歩を踏み出しましょう。
執筆者 : 蟹山淳子
CFP(R)認定者
