夫が定年退職し、年金をもらい始めてすぐに他界。夫がもらうはずだった年金はどうなるの?遺族年金として全額もらえるわけではない?

配信日:
この記事は約 4 分で読めます。
夫が定年退職し、年金をもらい始めてすぐに他界。夫がもらうはずだった年金はどうなるの?遺族年金として全額もらえるわけではない?
老齢年金を受給中に亡くなった場合、一定の条件を満たせば、その方に生計を維持されていた配偶者には遺族年金が支給されます。
 
今回は、老齢年金と遺族年金の仕組みについて解説します。
辻章嗣

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

老齢年金の仕組み

会社員など厚生年金の被保険者であった方が65歳になると、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給します。
 

1. 老齢基礎年金

老齢基礎年金の額は、20歳から60歳になるまでの40年間の国民年金や厚生年金の加入期間などに応じて計算されます。20歳から60歳までの40年間、すべて保険料を納めているか、厚生年金の被保険者であった場合は、満額の老齢基礎年金84万7300円(令和8年度額)が支給されます(※1)。
 

2. 老齢厚生年金

老齢厚生年金の額は、勤務期間と報酬額によって計算される報酬比例部分と、経過的加算額、加給年金額を合計した額になります(※2)。
 
老齢厚生年金額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額
 
報酬比例部分の額は、下式により計算されます(※3)。
報酬比例部分=平均標準報酬額×5.481/1000×加入期間の月数
 
なお、報酬比例部分の額は、平均年収と勤務年数から下の式で概算することができます。
報酬比例部分(概算額)=平均年収×5.481/1000×勤務年数
なお、平成15年3月までの勤務期間については、計算式が異なります。
 
経過的加算額は、制度改正に伴う修正額であり、ごくわずかな額になります。
 
加給年金額は、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時点において、その方に生計を維持されている要件を満たす配偶者や子がいる場合に加算されます。配偶者の要件は65歳未満で、加算額は42万3700円(令和8年度額)になります(※4)。
 

遺族年金の仕組み

厚生年金の被保険者であった方や老齢厚生年金を受給していた方が亡くなった場合、死亡当時、その方に生計を維持されていた要件を満たす遺族に遺族年金が支給されます。
 

1. 遺族基礎年金

老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したときは、死亡当時、その方に生計を維持されていた子のある配偶者に遺族基礎年金が支給されます(※5)。子のある配偶者に支給される遺族基礎年金の額は、84万7300円(令和8年度額)に子の加算額を加えた額になります。
 

2. 遺族厚生年金

老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したときは、死亡当時、その方に生計を維持されていた要件を満たす配偶者がいる場合は、配偶者に遺族厚生年金が支給されます(※6)。遺族厚生年金の額は、原則として報酬比例部分の4分の3の額となります。
 
また、夫が死亡した当時、40歳以上65歳未満の子のない妻には、中高齢寡婦加算の63万5500円(令和8年度額)があわせて支給されます。
 

死亡前後の年金額の違い

老齢年金を受給していた夫が死亡した場合について、死亡前に夫婦が受給していた年金額と、死亡後に妻が受給する年金の違いについて、夫婦2人の家族を例に解説します。
 

1. 会社員であった夫と65歳未満の主婦

生前、夫婦に支給されていた老齢年金は、夫の老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額です。老齢厚生年金には、報酬比例部分に加え、加給年金額が加算されています。
 
夫の死亡後は、妻に遺族厚生年金が支給されますが、妻が40歳以上65歳未満の場合、その額は報酬比例部分の4分の3に中高齢寡婦加算が加算された額になります。
 

2. 会社員であった夫と65歳以上の専業主婦

生前、夫婦に支給されていた老齢年金は、夫の老齢基礎年金と老齢厚生年金に、妻の老齢基礎年金を加えた額になります。夫の死亡後は、夫の遺族厚生年金(報酬比例部分の4分の3)と妻の老齢基礎年金が支給されます。
 
したがって、夫の老齢基礎年金分と、夫の報酬比例部分の4分の1に相当する額が減額となります。
 

3. 会社員であった夫と65歳以上の会社員であった妻

生前、夫婦に支給されていた老齢年金は、夫の老齢基礎年金と老齢厚生年金に加え、妻の老齢基礎年金と老齢厚生年金です。夫の死亡後は、妻の老齢基礎年金と妻の老齢厚生年金に加え、夫の遺族厚生年金から妻の老齢厚生年金を差し引いた額が支給されます。
 
したがって、妻の老齢厚生年金の額が夫の遺族厚生年金額以上の場合は、遺族厚生年金は全額支給停止となります。
 

4. 自営業であった夫と自営業であった65歳以上の妻

生前、夫婦に支給されていた老齢年金は、夫と妻の老齢基礎年金のみです。この場合、夫が死亡しても、妻に遺族基礎年金は支給されず、妻の老齢基礎年金のみとなります。
 

まとめ

夫が老齢厚生年金を受給していた子のない夫婦の場合、夫が死亡すると、夫に支給されていた老齢基礎年金と老齢厚生年金は支給停止となり、代わって夫の遺族厚生年金が支給されます。夫の遺族厚生年金の額は、原則として、夫に支給されていた報酬比例部分の4分の3に相当する額となります。
 
ただし、妻にも老齢厚生年金が支給されている場合、夫の遺族厚生年金の額が妻の老齢厚生年金を上回るときは、その差額が遺族厚生年金として支給されます。
 

出典

(※1)日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※2)日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※3)日本年金機構 年金用語 は行 報酬比例部分
(※4)日本年金機構 加給年金額と振替加算
(※5)日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
(※6)日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
 
執筆者 : 辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

  • line
  • hatebu

LINE