「男の健康寿命なんて73歳だから」と、年金20万円を「60歳から15万円」で“繰り上げて受け取る”という父…平均寿命は81歳ですが「元気なうちにお金を使う」なら、早めが得なのでしょうか?
一方、繰上げ受給すると年金額は一生減ったままです。長生きすれば、結果的に65歳から受け取ったほうが総額で多くなる可能性があります。
本記事では、男性の健康寿命や平均寿命と比較しながら、年金を60歳からに繰り上げた場合、本当に得なのかを考えてみます。
2級ファイナンシャルプランニング技能士/ITパスポート/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など
目次
年金は60歳から繰り上げて受け取れる
老齢基礎年金や老齢厚生年金は原則65歳から受け取ることができますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に「繰上げ受給」を選択できます。反対に、65歳で受け取らず、66歳以降75歳まで遅らせる「繰下げ受給」もあります。
昭和37年4月2日以降生まれの場合、繰上げ受給では受給開始を1ヶ月早めるごとに0.4%減額されます。60歳ちょうどから受け取ると、65歳より60ヶ月早いため減額率は24%です。
例えば、本来65歳から月20万円受け取れる人が60歳に繰上げ受給した場合に受け取れる年金額は次のとおりです。
20万円×(1-24%)=15万2000円
この約4万8000円の減額は、65歳になったら元に戻るわけではありません。この金額は生涯続き、一度繰上げ請求をすると取り消すこともできません。
「健康寿命73歳まで」で考えると繰り上げがお得?
厚生労働省によると、男性の健康寿命は約73歳です。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を意味します。
60歳から月15万2000円を受け取る場合、73歳までの13年間で受給額は約2371万円です。一方、65歳から月20万円なら8年間で約1920万円となります。
つまり、60歳から繰上げ受給したほうが約451万円多くなります。元気に旅行や趣味を楽しめるうちにお金を受け取りたいという考え方なら、繰上げ受給にも一定の合理性があるでしょう。
平均寿命の81歳まで生きた場合は?
厚生労働省によると、男性の平均寿命は約81歳です。仮に81歳まで年金を受け取った場合、60歳からなら約3830万円、65歳からなら約3840万円となります。
この条件では、ほぼ同じですが、65歳から受給するほうがわずかに多くなります。そのため、今回の条件で受給総額が逆転するのは、おおむね80歳10ヶ月です。
それより前なら60歳からの繰上げ受給の総額が多く、それより長生きすれば65歳から受給した場合の総額が多くなっていきます。
60歳からの繰上げ受給には慎重な判断が必要
繰上げ受給で特に注意したいのは、長生きした場合です。基本的には長生きするほど、65歳から受給したほうが総受給額は大きくなります。
一度繰上げ受給を選択すると後から変えることはできませんので、貯蓄が底をつき、少ない年金額で厳しい生活を強いられる可能性もあります。
繰上げ受給が向いている人・向いていない人
1つの事例ですが、例えば60歳で退職して収入がなく、貯蓄もそれほど多くないため、生活費として少しでも早く年金が必要な人なら、繰上げ受給を検討する余地があるかもしれません。また、「元気な60代に使えるお金を増やしたい」という価値観を重視する人もいるでしょう。
反対に、ある程度の貯蓄や仕事の収入があり、60~64歳の生活費を年金なしでも賄える人は、急いで繰り上げる必要性が低い場合があります。年金の本質は長生きしたときの保険と考え、65歳から通常どおり受け取ることも有力な選択肢です。
まとめ
本来65歳から月20万円受け取れる人が60歳から繰上げ受給すると、24%減額されて月15万2000円になります。単純計算では、男性の健康寿命である約73歳までになくなるとしたら、60歳から受け取ったほうが受給総額は約451万円多くなります。
一方、損益が逆転するのは約80歳10ヶ月で、それ以上長生きすると65歳から受給した場合のほうが総額は多くなります。
「健康寿命は73歳だから早くもらったほうが得」と数字だけで決めるのではなく、現在の健康状態や貯蓄、仕事を何歳まで続けるのか、長生きした場合の生活費なども考えたうえで、慎重に受給時期を決めることが大切でしょう。
出典
内閣府 令和8年版高齢社会白書(全体版)第2節 高齢期の暮らしの動向 2 健康・福祉
執筆者 : 三浦大幸
2級ファイナンシャルプランニング技能士/ITパスポート/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など
