「年収900万円」だった夫が59歳で死亡…「頑張って働いたから、老後は年金で悠々自適」のはずが、払った“保険料2500万円”や、受け取る予定だった「年260万円の年金」は払い損でしょうか?
60歳手前ともなると、支払ってきた厚生年金保険料はかなりの金額になります。本記事では、22歳から59歳まで会社員として働き、生涯の平均年収が900万円だった夫が受け取る予定だった老齢年金や、死亡後に妻が受け取れる可能性のある遺族年金について解説します。
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目次
年収900万円なら老後の年金はいくらもらえた?
まずは、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」を利用し、もしも生きていたら老後にどれくらいの年金を受け取れたのか見ていきましょう。
22歳から59歳まで会社員として働き、生涯の平均年収を900万円とした場合、65歳から受け取れる老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計は年間で約256万円が目安です。
なお、60歳まで働いた場合、約262万円となります。夫が「年金は年間260万円くらいある」と考えていたとしても不思議ではない金額でしょう。
22歳から59歳までに支払った年金保険料の総額はいくら?
59歳で亡くなったら、これまでにどれだけの年金保険料を支払ってきたのでしょうか。厚生年金保険料率は会社と従業員が半分ずつ負担しますが、保険料率は段階的に引き上げられています。
ただし、今回は計算を分かりやすくするため、年収900万円を月給75万円とし、現在の保険料率をもとに支払った年金保険料総額を計算します。この場合、22歳から59歳までに支払う年金保険料の総額は約2641万円です。
過去の保険料率は現在より低かったことなどから、この金額が実際の納付額というわけではありません。それでも、長期間にわたって多額の保険料を負担してきたことに変わりはないでしょう。
59歳で亡くなったら、これまで払った年金保険料は返ってくる?
それでは、65歳になる前に亡くなった場合、これまで納めた保険料を遺族が一括して返してもらえるのでしょうか。原則として、会社員として納めてきた厚生年金保険料が、そのまま遺族へ返還される仕組みはありません。
保険料が返ってこなくても遺族年金を受け取れる可能性がある
年金保険料は返ってきませんが、所定の条件を満たした場合、残された遺族は遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取れます。遺族基礎年金は一定の要件を満たす「子のある配偶者」または「子」が受給できます。
一方、遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者などが亡くなった場合に、生計を維持されている所定の遺族が受け取れる年金です。
今回は、子どもはすでに独立しており、受給要件を満たす妻が残されたケースを想定すると、受け取れる遺族年金の中心となるのは遺族厚生年金です。
妻が受け取る遺族厚生年金はいくら?
妻が受け取れる可能性がある遺族厚生年金の金額は、死亡した夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額です。今回のケースでおおまかに計算すると、妻は年間で約119万円の遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。
年金はあくまでも保険
「2500万円以上の保険料を払ったのに、その分が戻ってこない」と聞くと、損をしたように感じるかもしれません。しかし、公的年金は自分が支払ったお金を積み立てて老後に受け取る「貯蓄」ではなく、長生きや死亡、障害などに備える「社会保険」です。
そのため、本人が老齢年金を受け取る前に亡くなっても、納めた保険料がそのまま遺族に返還される仕組みではありません。その代わり、要件を満たす遺族には遺族年金が支給され、残された家族の生活を支える役割を果たします。
まとめ
今回のケースでは、夫が生きていれば65歳から年間約260万円の年金を受け取れる見込みでした。しかし、59歳で亡くなったからといって、これまで納めた厚生年金保険料が遺族へ一括返還されるわけではありません。
一方、要件を満たす妻は遺族年金を受け取れる可能性があります。年金は「払った分を取り戻す制度」ではなく、老齢・死亡・障害といったリスクを社会全体で支える保険である点を理解しておきましょう。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和8年度版)
執筆者 : 三浦大幸
2級ファイナンシャルプランニング技能士/ITパスポート/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など
