再婚したら受給できなくなる遺族年金。では、事実婚の場合は?
配信日: 2020.03.19
しかし、遺族厚生年金は(30歳以上の)妻には制限はありませんが、夫が受け取ることができるのは60歳以上からと、年齢の制限があります。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
遺族年金をもらっている人が再婚すると
遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を、あるいはどちらか一方を、もらっていた方が再婚すると、その両方が「失権」します。失権とは読んで字のごとく「権利を失う」ことです。
失った権利が復活することはありません。なお、「支給停止」の場合は、要件が整えば支給が再開することがあります。
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遺族年金をもらっている人が出会いを
さて、人との出会い、巡り会いというのは、いつ、訪れるか分からないのは言うまでもありません。当然、遺族年金をもらっている女性にもあり得る話だと思われます。
しかし、遺族年金をもらっている女性にとっては、ここで重い判断をしなくてはなりません。そうです。入籍するためには、「遺族年金」を諦めなくてはならないのは、前述のとおりです。
重婚的内縁関係
上記のような理由から、同棲だけにとどめて入籍を行わない、すなわち内縁関係で済ませるカップルもいるようです。しかも住民票は別々、しかし暮らしは一緒、これにより女性の方は遺族年金をもらい続ける、ということです。
あるカップルは、女性がもらっている遺族年金だけで2人の生活を賄っていました。女性は現在のパートナーと暮らしつつ、亡くなった夫の遺族年金をもらっているということです。
重婚的内縁関係の是非について
本稿で申し上げている遺族年金は、社会保障制度の1つです。所得税や住民税における配偶者控除や配偶者特別控除、それに相続税における配偶者税額軽減など、税制における配偶者は事実婚や内縁関係は認められません。
しかし、健康保険における扶養や、国民年金における第三号被保険者などを含む社会保障制度においては、事実婚や内縁関係も「配偶者」に含まれます。これは受給、すなわち「年金を受け取る」側でも、事実婚や内縁関係は「配偶者」に含みます。
ここからは、前述の「重婚的内縁関係」の是非についてです。女性の方は、いわゆる死別ですし、入籍もしていない、いわば独身の女性ですが、だからこそ亡くなった夫の遺族年金を受け取ることができています。パートナーの男性も、入籍を果たしていない、れっきとした独身です。
この男女、戸籍上は別々です。加えて、お互いの住民登録も異なる市町村にされています。戸籍や住民登録などの手続きや書類の上での要件を満たしていないとしても、事実婚もしくは同棲の関係にあることは変わりなさそうですね。
社会保障制度における事実婚や同棲は、先述のとおり「配偶者」とみなされます。なので、件のカップル、特に女性の方は「再婚」とみなされ、女性がもらっている遺族年金は失権になるのではと筆者は考えます。
ところが……まとめに代えて
本件について年金事務所にたずねたところ「1件ごとに対応しています」ということで、明確な回答を得ることはできませんでした。ということは、「重婚的内縁関係」の是非は、『ケースバイケース』というのが結論になりそうですね。
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役