離婚したら、年金が全額支給されないナゾ

配信日: 2017.11.18 更新日: 2019.01.10

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離婚したら、年金が全額支給されないナゾ
2016年は21万7千件の離婚がありました。

離婚時において、誰もが最終的にはお金の問題は避けられない道でしょう。
なかには「離婚の意志」は決定したものの、お金の問題でもめて離婚時期が延びてしまい、調停・裁判へと進んでしまうこともあります。

その中に「年金分割」における認識が間違っており、残念な結果から精神的な重荷を背負ってしまうこともあるようです。

今回はそこをクリアにしていただきたいと思います。
寺門美和子

Text:寺門美和子(てらかど みわこ)

ファイナンシャルプランナー、相続診断士

公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー
大手流通業界系のファッションビジネスを12年経験。ビジネスの面白さを体感するが、結婚を機に退職。その後夫の仕事(整体)で、主にマネージメント・経営等、裏方を担当。マスコミでも話題となり、忙しい日々過ごす。しかし、20年後に離婚。長い間従事した「からだ系ビジネス」では資格を有しておらず『資格の大切さ』を実感し『人生のやり直し』を決意。自らの経験を活かした夫婦問題カウンセラーの資格を目指す中「離婚後の女性が自立する難しさ」を目のあたりにする。また自らの財産分与の運用の未熟さの反省もあり研究する中に、FPの仕事と出会う。『からだと心とお金』の幸せは三つ巴。からだと心の癒しや健康法は巷に情報が充実し身近なのに、なぜお金や資産の事はこんなに解りづらいのだろう?特に女性には敷居が高い現実。「もっとやさしく、わかりやすくお金や資産の提案がしたい」という想いから、FPの資格を取得。第二の成人式、40歳を迎えたことを機に女性が資産運用について学び直す提案業務を行っている。
※確定拠出年金相談ねっと https://wiselife.biz/fp/mterakado/
女性のための電話相談『ボイスマルシェ』   https://www.voicemarche.jp/advisers/781 

離婚時の財産分与の考え方

「夫婦共有財産」という言葉を耳にする機会は多いと思います。
この「夫婦共有財産」の定義はいったい何なのでしょうか?
 
例えば、実業家のA氏と結婚をしたB子さん。
A氏が結婚前に取得した不動産の数々、この財産は夫婦共有財産となるのでしょうか?

答えは、NO。
二人が結婚する前に取得した財産は「夫婦共有の財産」とはなりません。
 
それでは、二人が結婚後に不動産を取得した場合はどうでしょうか?
B子さんは専業主婦で、不動産を取得する為に特別な努力をしたわけではありません。

しかし、「内助の功」で夫婦の協力で得たものは、答えはYES「夫婦共有の財産」となります。
名義が例えご主人単独でも、離婚時の財産分与の対象となります。
 
上記の例でわかるように、結婚した前に取得した財産か、後に取得した財産かでその評価は変わってくるのです。

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年金分割の基本的な考え方と請求期限

「離婚しても元夫の年金が半分はもらえる」
このように考えている方がいますが、これは大きな間違いです。
 
そもそもこの制度は2007年(平成19年)4月に施行されたもので、翌年には離婚時の第3号被保険者(専業主婦)の年金分割制度も施行されました。

この制度の基本的な考え方は、男女間に雇用格差や給与格差があるために、離婚後の夫婦双方の年金受給額の大きな差を是正し、主に離婚後の女性の老後の生活の安定を図るためのものでした。
 
なかには、離婚届を提出すると黙っていても年金支給時になれば、元夫の年金の半分が手元に入ると思っている人もいます。こちらも間違いです。
 
まず請求期限は、離婚をした翌日から2年以内となっておりますのでお忘れない様にして下さい。

この場合のポイントですが、2008年(平成20年)4月までに結婚した人とそれ以降の人とでは手続きに違いがあります。

2008年4月30日以前に結婚した人は双方の合意が必要で、2008年5月1日以降に結婚した人は年金事務所で手続きをすればOKです。
尚、事実婚でも認められますが要件がありますので、詳細は年金事務所にお問い合わせくださいませ。
 
<参考>2008年(平成20年)4月30日以前に結婚した場合
①双方の「合意」の手続きが必要です。相手が納得してくれない場合は裁判手続きをします。
②「①」が終了した証明書と併せて「3号分割」の手続きを行います。

年金分割のルール

10年前には離婚後の女性の老後の生活を守る制度として、スタートした年金分割ですが、この10年間で女性の社会進出は著しいものとなっております。
 
そのため、ご主人より収入があがってしまうというカップルがいたり、仕事のできる妻が外で働き夫が主夫をしたり、というスタイルもでてきました。

このような場合はどうなるのでしょうか? 基本的な考え方は以下の通りです。
 
・収入が多い方が、収入が少ない方へ分割する
・専業主婦(夫)は、会社員の配偶者の「厚生年金部分」の分割を受ける
 
ここで、多くの人が勘違いするポイントがでてきました。
年金で分割する部分はあくまで「厚生年金部分」であって、年金支給額全額の半分がまるまる入ってくるわけではありません。この計算を間違えると「大きな誤算」が生じます。

年金分割は「厚生年金」部分。自営業者の夫からはもらえません

公的年金の支給には下記の様な公式があります。
 
・「基礎年金」 + 「厚生年金」= 「年金支給額」
 
基礎年金とは、国民だれもが加入を義務付けられている年金で、20歳になると特例を除き、60歳になるまで払い込む年金です。
 
会社員でない人たちは「国民年金」といわれている部分です。

この基礎年金は、年金受取資格者の固有の財産となり、「年金分割」の対象にはなりません。
 
そのため、元夫が自営業者やフリーランスで「厚生年金」を受け取っていない場合は、そもそも「年金分割」を受けることはできないのです。

離婚後分割対象となる部分は「厚生年金」の部分のみです。それも婚姻期間中の厚生年金の50%となります。
 
万が一、別れた配偶者が離婚後大出世をして収入がUP(厚生年金の支給額UP)しても、それは元の配偶者には還元されませんので間違えないようにして下さい。
 
年金の仕組みは、少々わかりづらいかと思います。しかし、私たちにとって大切な老後の生活資金です。今後も制度の変更はあるかもしれません。ニュース等に良くアンテナを張り、学んでいただきたいと思います。
   
Text:寺門 美和子(てらかど・みわこ)
ファイナンシャルプランナー/公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー

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