更新日: 2019.01.10 iDeCo(確定拠出年金)
2018年注目の「iDeCo」 制度を活用して自分なりの老後資金を作ってみましょう
iDeCoには、3つもの税メリット(掛金、運用中、受取時)があり、将来に向けての資産形成世代にとって、是非積極的に活用したい制度です。しかし、「毎月一定額を拠出」しなければならないという点で利用しづらいという方も多かったのではないでしょうか。
つまり、年間収入の中で、ボーナスに比重が寄っているという方や、年単位で収入が確定する個人事業主の方は、ちょっと不便を感じ、利用開始に踏み出せないでいらっしゃったかもしれませんね。
そんな方のために、朗報です。2018年1月から、より柔軟な掛金拠出方法、『掛金拠出の年単位化』がスタートします。
そして、この『掛金拠出の年単位化』は、考え方・使い方によっては、すべての方にとって、利用価値あり!の側面もあります。一方、利用の仕方を間違えると、【運用効果(リスク分散)に黄信号】の側面もありますので、利用開始は慎重に決めたいところです。それでは、ポイントをまとめていきましょう。
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Text:平田純子(ひらた じゅんこ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、2級建築士、インテリアコーディネーター
大阪市立大学・生活科学部・住居学科卒業。電機メーカーで商品企画の仕事を経て、好きが高じて、株式会社良品計画に中途入社。無印良品の店舗にて、家具やカーテン、照明のコーディネート提案を得意とする店長として10年以上勤務。しかしある時、お金に無計画・無頓着に過ごした自身のこれまでの人生を振り返り、後悔の念。豊かな人生を送るために、ライフプランニングの必要性を痛感。その必要性をより多くの人に伝えたいとの思いで、ファイナンシャルプランナーを志す。
現在、ファイナンシャルプランナーとして、ライフプランとキャッシュフロー分析・アドバイスを個別相談で行う傍ら、セミナー講師,や執筆も行う。得意分野はライフプラン(資金計画)、生命保険見直し、資産形成・運用。お金の相談に加えて、インテリア計画や片付け、収納計画についても、ご要望に応じて相談を承っている。
https://hataraku-okane.com/
『掛金拠出の年単位化』とは?
簡単にまとめると、次の2点です。
(1)掛金の拠出時期について
今までは、掛金の拠出時期が『各月につき』だったのが、『年一回以上、定期的』となる
(2)拠出限度額の考え方
『ひと月につき拠出することができる掛金の額』から、『1年間に拠出することができる掛金の額の総額』との基準に定める
つまり、
・年1回や年2回など、月単位以外の掛金拠出も可能になる
・各月ごとの掛金拠出限度額の使い残しが発生しても、例えば、賞与が支給される月を見込んで一括拠出を行うことも可能
(注)各月ごどの掛金拠出限度額
例えば、企業年金を導入していない企業にお勤めの会社員の場合は、月額23,000円。個人事業主の方の場合は、月額68,000円(国民年金基金等と限度枠共有)
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ちょっと待った!運用効果(リスク分散)に黄信号!?
より柔軟な掛金拠出が可能になる、『掛金の年単位化』。しかし、安易に『年1回』『年2回』の拠出に設定・変更してしまうのは、お勧めできません。
iDeCoは、定期的に掛金を積み立てて、みなさんお一人お一人が選んだ《金融商品》で運用・管理をしていきます。一部、《定期預金》等、元本保証型の値動きのない商品を除き、概ね、《投資信託》等の運用商品を選択して、元本を運用し、長期的に資産をふやしていこうという目的の制度です。
その元本を【リスクを分散しながら安全、かつ、確実に】ふやすために、守るべき3つのルールがあります。それが、【時間の分散】【投資先の分散】【長期投資】です。聞いたり、目にしたことがある方も多いでしょう。この3つは、1つや2つではいけません。3つ全てを網羅する必要があるのです。
しかし、この『掛金の年単位化』で、安易に掛金拠出を『年1回』や『年2回』などに設定・変更してしまうと、3つのルールのうち、【時間の分散】効果が薄れてしまう、なくなってしまうのです。
本来なら、毎月拠出、1年間で12回に分けて分散投資できるところが、『年1回』の拠出になると、投資タイミング(回数)が12分の1になってしまいます。それでは、リスクが分散できません。…?? どういうことか?
簡単に言うと、年1回の掛金投入のそのタイミングが、もし、タイミング悪いことに、「年間で最も高値のタイミング」だったら…!?その元本がふえるためには、「そこからさらに値があがること」ことが必要になるのです。
だとしたら、12回に分けて掛金を投入した方が、リスクを分散でき、ふえる可能性が高いことが理解できるのではないでしょうか。
つまり、やっぱり、毎月コツコツ掛金を拠出することの方が、運用面では〇なのです。
唯一!『掛金まとめて拠出』メリットがある人
ズバリ!iDeCoの掛金の積み立て先として、《定期預金》等、元本保証型商品を選んでいる人は、『年1回』など、1年分をまとめて拠出したほうがメリットがあります。
何故なら、これら元本保証型商品は、《投資信託》商品のような値動きがありません。つまり、いつ掛金を投入してもリスクがありません。(ちなみに、現在の低金利では、リターンも期待できませんが。)一方、掛金は、拠出の度に、手数料がかかります。口座のある金融機関に関わらず、国民年金基金連合会に支払っているもので、103円(2017年12月現在)です。月々掛金拠出すると、年間で1,236円。年1回にまとめてしまうと、103円で済みます。
これは大きいと言えば、大きいですよね。
ちなみに、節税効果は年単位なので、『年12回』も『年1回』も、年間の総拠出額が同じであれば、節税効果は同じです。
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結論!本当に効果がある『掛金の年単位化』の活用術
結論的に、iDeCo『掛金の年単位化』の効果的な活用術は、
・月々コツコツ掛金拠出で【時間の分散】しつつ値動きのある投資商品で運用
その補助的な策として、
・ボーナスや(個人事業主等の)年間収入確定タイミングで、年間拠出可能額の残りを拠出しきることにより、所得税と住民税の節税効果を最大限に得る
の2本立てでの活用です。
この方法で『掛金の年単位化』を活用すると、投資・運用のリスクを分散しつつ、且つ、最大限の税メリットを得ることができます。これこそ、iDeCo制度を隅から隅まで活用しきる、言わば【iDeCoの達人】と言えるかもしれません。
ただし、この『掛金の年単位化』の利用には、事前に掛金年額の設定等、詳細設定が必要なこと、そして、iDeCo制度共通の注意点である【掛金は60歳まで引き出せない】という点には注意をして、あなたなりのベストな活用ポイントを探っていただきたいと思います。
自分に適正な掛金拠出パターンに迷ったら、是非、お近くのファイナンシャルプランナーへのご相談をお勧めします。
そして、あくまでも、ファイナンシャルプランナーとしての私見ですが、折角、iDeCoを活用して、将来の自分年金を準備するなら、《元本確保型商品》ではなく、ルールを守り、リスク分散をしながら、《投資・運用商品》で元本をふやすことを目指していただきたいと考えています。
Text:平田 純子(ひらた じゅんこ)
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、2級建築士、インテリアコーディネーター