更新日: 2021.06.01 iDeCo(確定拠出年金)

確定拠出年金の加入年齢拡大、受取時に注意することは?

執筆者 : 林智慮

確定拠出年金の加入年齢拡大、受取時に注意することは?
2001年10月から掛け金の運用が始められた確定拠出年金。2021年の今、運用が始まってから20年たちました。そろそろ受け取りを考える方もいらっしゃるのではありませんか。
 
一時金で受け取るか年金で受け取るか、税制面でどちらがお得になるか考えるだけでなく、受取開始時期や加入可能年齢が拡大されることから、働き方との兼ね合いを考える必要が出てきます。
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

受取開始時期の選択肢拡大

2020年の国民年金法改正により、公的年金の受取開始時期を60歳から75歳まで拡大できるようになることに伴い、現行、受取開始期間60歳(加入資格喪失後)から70歳の間で受け取りを選べる企業型確定拠出年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)の受取年齢も5年間拡大され、75歳までの間に受取開始時期を選べるようになります。
 
確定拠出年金を一時金で受け取る場合、退職所得控除を差し引くことができ、差し引いた残りがあっても2分の1にした分にしか課税されませんが、他に退職金がある場合は、退職所得控除の勤続年数の計算が異なることがあります。
 
重複する期間は差し引かなければなりませんが、他の退職金を受け取ってから一定年数が経過すれば、重複期間を差し引く必要はありません。
 
退職金や小規模企業共済の一時金は、その年の前年から4年(その年からみれば5年)の間に他の退職金を受け取ってなければ、重複期間があっても勤続年数を丸々使うことができます。一方、確定拠出年金の場合は、その年の前年から14年(その年からみれば15年)の期間が必要です。
 
現行は、60歳~70歳までの間で受け取らなければならず、定年退職で他に退職金があり確定拠出年金を後で受け取る場合の重複期間は避けられません。
 
しかし、改正後は75歳になるまで受取開始期間を選べるようになるため、後で確定拠出年金を一時金で受け取る際、15年の期間を取ることができるようになります。
 

加入可能年齢の拡大

2020年の制度改正により、原則60歳までである企業型確定拠出年金・iDeCoの加入可能年齢が拡大されます(2022年5月1日施行)。
 
現行、企業型DCの加入者となるのは、原則60歳未満の厚生年金被保険者です。60歳以降は、規約に定めがあればその年齢まで(65歳未満)、60歳前と同じ事業所で引き続き使用される厚生年金被保険者が加入できます。
 
しかし、2022年5月からは、厚生年金被保険者(70歳未満)であれば、同一事業所に継続して使用されていなくても、勤務先に企業型確定拠出年金があれば加入が可能となります(ただし、企業により加入可能年齢が異なります)。
 
iDeCoの場合も、国民年金被保険者であれば60歳を過ぎても加入可能になります。第2号被保険者は65歳未満、任意加入者は65歳未満で国民年金加入480ヶ月を満たすまでの期間です。
 

受け取ってしまったら、再度加入はできない

改正により、iDeCoは60歳から65歳(第2号被保険者、任意加入者)、企業型確定拠出年金は70歳まで(のうち規約に定めた年齢)は受取も加入も可能な期間になります。受け取る人もいれば加入をし続ける人もいます。
 
企業型DCまたはiDeCoの老齢給付金を受け取ってしまうと、改正により企業型DCまた はiDeCoの加入要件を満たした場合であっても、それぞれ再加入できません。
 
また、公的年金を65歳前に繰り上げ請求された方は、改正によりiDeCoの加入要件を満たした場合であっても、iDeCoに加入することができません。例えば、年金を受け取りながらパート労働で厚生年金に加入しているような場合です。ご注意ください。
 
働き方が多様化しています。体力、気力、一人ひとり異なるため、働き方も異なりますが、しっかり働ける間はなるべく加入をして、確定拠出年金の掛金全額所得控除・運用益非課税という税制優遇を受けながら資産形成をしたいですね。
 
(参考・引用)
厚生労働省「2020年の制度改正」
厚生労働省「企業型DC・iDeCoの加入者・運用指図者の皆さまへ 確定拠出年金制度が改正されます」
国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者