公開日: 2020.01.17 税金

医療費控除は夫と妻のどちらが申告すべき? 知っておきたいポイント

執筆者 : 大泉稔

確定申告の際、医療費はご自身が払ったものはもちろん、ご自身とともに暮らす家族が払った医療費についても合計して申請できます。では、収入のある家族の中で収入が低い人が控除を受けやすいというのは本当でしょうか? 解説していきます。
 
 
大泉稔

執筆者:

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

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大泉稔

執筆者:

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

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まずはケースの想定

以下のような家族を想定します(令和元年の税制を適用)。
 
■夫:50歳/年収1000万円
給与所得の金額1000万円 − (1000万円×10% + 120万円) = 780万円
基礎控除38万円
特定扶養控除63万円
生命保険料控除12万円
地震保険料控除3万円
総所得金額は664万円
 
■妻:50歳/年収370万円
給与所得は370万円 − (370万円 × 20% + 54万円) = 242万円
基礎控除38万円
総所得金額は204万円
 
■長女:23歳/年収240万円
給与所得は240万円 − (240万円 × 30% + 18万円) = 150万円
基礎控除38万円
総所得金額は112万円
 
■次女:20歳/学生
総所得は0円
 
また、家族それぞれの医療費には以下を想定します。
■夫:医療費0円/セルフメディケーション対象の医療費3万円
■妻:医療費4万円/セルフメディケーション対象の医療費1万円
■長女:医療費3万円/セルフメディケーション対象の医療費1万円
■次女:医療費0円/セルフメディケーション対象の医療費1万円
 

医療費控除の申告をするのは誰か?

さて、医療費控除は実際に支払った医療費をそのまま申告できるわけではありません。以下の計算に基づいた結果の金額を申告することになります。
 
(1)掛かった医療費 − (2)保険などで補填される金額 − (3)10万円 = (4)医療費控除の申告金額
 
(1)は、1月~12月までに実際に支払った医療費が対象です。つまり、医療機関から発行された領収書が手元にあればOKです。また、冒頭に申し上げたように、家族の分を合計します。
(2)は、本稿における想定では0円とします。
(3)は、総所得金額が200万円に満たない場合には10万円ではなく、「総所得金額の5%」です。
(4)の医療費控除の申告金額は、200万円が上限です。
 
では、先述の想定に基づいた家族に当てはめてみることにします。
 
■夫
(1)家族の医療費の合計7万円 − (2)0円 − (3)10万円 = ▲3万円
この場合、医療費控除の申告はできません。
 
■妻
(1)家族の医療費の合計7万円 − (2)0円 − (3)10万円 = ▲3万円
この場合、医療費控除の申告はできません。
 
■長女
(1)家族の医療費の合計7万円 − (2)0円 − (3)(112万円×5%=5.6万円) = 1.4万円
長女は家族の医療費のうち、1.4万円を医療費控除として申告できます。長女の所得は110.6万円(=112万円 − 1.4万円)になります。
 

もう一つの医療費控除

さて、4人家族のうち3人が給与所得を得ています。そして、長女が医療費控除の申告を行うことになりました。しかし、医療費控除にはもう一つ「セルフメディケーション税制」という特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例があります。
 
なお、セルフメディケーション税制による医療費控除もご自身が払った医療費はもちろん、ご自身とともに暮らす家族が払った医療費についても合計して申請できます。セルフメディケーション税制による医療費控除額の計算式は以下のとおりです。
 
(1)特定一般用医薬品等購入費の合計額 − (2)保険などで補填される金額 − (3)1.2万円 = (4)セルフメディケーション税制による医療費控除の申告金額
 
(1)は、1月~12月までに実際に支払ったセルフメディケーションによる医療費が対象です。薬局等から発行された領収書が手元にあればOKです。また、前述のとおり、家族の分を合計します。
(2)は、本稿における想定では0円とします。
(3)は、総所得金額にかかわらず1.2万円です。
(4)の医療費控除の申告金額は、8.8万円が上限です。
 
想定した家族のセルフメディケーション税制の、医療費の合計は6万円(夫3万円+妻1万円+長女1万円+次女1万円)でした。上述の計算式に当てはめると、セルフメディケーション税制の医療費の申告金額は4.8万円になります。
 
(1)6万円 − (2)0円 − (3)1.2万円 = (4)4.8万円
 

セルフメディケーション税制の医療費控除の申告を行うのは誰か?

さて、セルフメディケーション税制の医療費控除の申告を行うのは、先述の想定した家族のうち、誰でしょうか?
 
長女は医療費控除の申告を行うことになりましたので、セルフメディケーション税制の医療費控除の申告はできません。医療費控除かセルフメディケーション税制の医療費控除か、どちらか一方を選んで申告を行うからです。
 
ということで、夫か妻のどちらかがセルフメディケーション税制の医療費控除の申告を行うことになります。では、どちらでしょうか?
 
夫の総所得金額は664万円ですから、所得税の金額は
664万円 × 20% − 42万7500円 = 90万500円
夫がセルフメディケーション税制の医療費控除の申告を行うと
(664万円 − 4.8万円)× 20% − 42万7500円 = 89万900円
所得税の金額が9600円安くなりました。
 
妻の総所得金額は204万円ですから、所得税の金額は
204万円 × 10% − 9万7500円 = 10万6500円
妻がセルフメディケーション税制の医療費控除の申告を行うと
199万2000円 × 10% − 9万7500円 = 10万1700円
所得税の金額が4800円安くなりました。
 
妻のほうが税率を下げることができましたが、夫がセルフメディケーション税制の医療費控除の申告を行ったほうが有利なことが分かりました。
 

まとめに代えて

一般的には家族の医療費を合計し、所得が最も高い人が医療費控除の申告やセルフメディケーション税制の医療費控除の申告を行ったほうが有利です。
 
しかし、医療費控除の申告において、保険金等による補填分を差し引いた後の年間の家族の医療費の合計が「10万円を超えない」、という微妙な状況の時はどうでしょうか?
 
本稿の想定においては、所得が最も低い長女が医療費控除の申告を行えることが分かりました。医療費控除もセルフメディケーション税制の医療費控除も、どちらの申告も年末調整では行えず、確定申告が必要ですので留意してください。
 
(引用)
国税庁「No.1410 給与所得控除」
国税庁「No.2260 所得税率」
 
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役

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