1年間に1万2000円以上の特定医薬品を買ったら医療費控除の申請ができる?

配信日: 2021.03.30

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1年間に1万2000円以上の特定医薬品を買ったら医療費控除の申請ができる?
ちょっとした風邪や腹痛、肩こりなどは、近くの薬局に行って、病気に効く医薬品を買って飲んで治してしまうことが多くありませんか?
 
そんなときに、購入した医薬品の領収書を保管しておけば、確定申告して税金の一部を還付することができる場合があります。
 
ただし、どんな薬でもよいのではなく、「セルフメディケーション税制」の対象になっている特定医薬品だけが、医療費控除の対象になります。
村川賢

執筆者:村川賢(むらかわ まさる)

一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)

早稲田大学大学院を卒業して精密機器メーカーに勤務。50歳を過ぎて勤務先のセカンドライフ研修を受講。これをきっかけにお金の知識が身についてない自分に気付き、在職中にファイナンシャルプランナーの資格を取得。30年間勤務した会社を早期退職してFPとして独立。「お金の知識が重要であることを多くの人に伝え、お金で損をしない少しでも得する知識を広めよう」という使命感から、実務家のファイナンシャルプランナーとして活動中。現在は年間数十件を越す大手企業の労働組合員向けセミナー、およびライフプランを中心とした個別相談で多くのクライアントに貢献している。

セルフメディケーション税制とは

セルフメディケーション税制とは、健康の維持増進や疾病の予防への取組などを目的として、平成29年1月1日から施行されたもので、特定医薬品(医療用から転用された一般医薬品で、スイッチOCT医薬品という)を購入した際に、1年間に同一生計の家族全体での購入金額の合計が1万2000円を超えた金額(8万8000円が上限)について所得控除を受けられる制度です(※1)。
 
ただし、病院でかかった医療費などの医療費控除とは一緒に申告できません。どちらかの選択適用となります(※2)。この制度は今年末までが期限なのですが、今年の税制改正大綱に、特定医薬品の見直しと令和8年12月31日までの5年間延長が盛り込まれました(※3)。
 

対象の特定医薬品とはどんなものがあるの?

特定医薬品といっても、それほど特殊なものではなく、薬局で一般的に売られている医薬品が数多くあります。例えば、風邪薬でいえば、パブロンS(大正製薬)、ベンザブロックL錠(武田コンシューマーヘルスケア)、新コンタックかぜEX(佐藤薬品工業)、新ルルAゴールドS(第一三共ヘルスケア)、エスタックイブ(エスエス製薬)、その他多くの医薬品が対象です。
 
なおセルフメディケーション税制の対象となる特定医薬品には、【図1】のマークが付いています。
 
【図1】

※厚生労働省ホームページより引用
 
また、厚生労働省では、これらの対象となる特定医薬品の販売名や製造販売業者名、成分名などを公表しています。
 

取組関係書類の添付は不要に

確定申告するには、購入した特定医薬品の商品名や金額、販売店名、購入日などを一覧にした明細書に加えて、職場での定期健康診断の結果通知書など(取組関係書類)を、一緒に添付または提示する必要がありました。
 
それが、今年の税制改正大綱で、取組関係書類が不要となることが盛り込まれました。ただし、確定申告などから5年間は領収書と取組関係書類は保管しておかなければなりません。令和4年1月1日以降に確定申告する際に適用される予定です。
 

どのくらいの税金を得するの?

セルフメディケーション税制を適用した場合、どのくらいの税金を得するかは、以下のように計算できます。一例として、1年間の特定医薬品を3万円購入したとします。課税所得金額が330万円をこえ695万円以下の人の場合では、
 

●所得税の減税額
(3万円-1万2000円)×所得税率20%=3600円
 
●個人住民税の減税額
(3万円-1万2000円)×個人住民税率10%=1800円

合計で5400円が減税されます。
 
所得金額などにより、それぞれ税率や額は変わってきますので、ご自身の場合の数字を当てはめて確認してみてください。
 

おわりに

従来の医療費控除であれば、10万円を超えてかかった分の医療費のみが対象でした。病院でかかった医療費は健康保険の適用により3割負担であり、手術などによる高額な療養費も高額療養費制度により8万円強で済むため、10万円を超えないケースが多くありました。
 
それに対して、セルフメディケーション税制では、家族みんなが購入した特定医薬品の合計が1万2000円を超えていれば対象となるので、かなりハードルが低いと思います。今年の税制大綱では適用期間が5年間延長され、確定申告も取組関係書類の添付が必要なくなるなど申告しやすくなったので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
 
[出典]
(※1)厚生労働省「セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について」
(※2)国税庁「No.1131 セルフメディケーション税制と通常の医療費控除との選択適用」
(※3)厚生労働省「セルフメディケーション税制の見直しについて」(令和3年2月3日)
 
執筆者:村川賢
一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)

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