退職金の税金はどこまでかかる? 優遇される場合とは
配信日: 2021.04.01
厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」によると、定年時の退職金は企業規模や学歴などによって大きく異なります。企業規模で見ると、企業規模が大きくなるにしたがって受け取れる金額が大きくなります。
具体的には、1000人以上は2233万円、30~99人は1407万円と、826万円の差があります。また、学歴別で見ると、大学・大学院卒は1983万円、高校卒は1618万円となっており、365万円の開きがあります。
もちろん、仕事の内容や昇進の有無によって金額は異なりますので、これらの数字はあくまで平均額です。自分がこのまま定年まで勤めたらいくら退職金がもらえるかは、所属する会社の担当部署に確認する必要があります。
退職金は、長い間苦労して勤めるわけですし、今後のライフプランにとって大切な資金になりますので、少しでも多く手元に残したいものです。
今回は、退職金制度の基本を振り返り、退職金にかかる税金について確認してみます。
執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)
ファイナンシャル・プランナー
中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。
退職金制度の基本
1.退職金制度のない会社もあるので注意が必要
会社に勤めていて正社員であれば、退職金が必ず支払われるかというと、実はそうではありません。法律では、企業に退職金制度の導入を義務付けることは定められていませんので、企業が退職金制度の有無を選択することができるのです。
具体的に、厚生労働省が平成30年度に調査した結果を確認すると、「退職金制度がある会社」は80.5%、「退職金制度がない会社」は19.5%でした。
自分が勤めている会社に退職金制度がない場合は、それを踏まえてしっかりと老後資金を準備する必要がありますので、会社の退職に関する制度をよく確認しておきましょう。
2.退職金制度
退職年金制度は、大きく分けて以下の2つです。主に大企業などでは両方の制度を併用している企業もありますので、自分の会社の制度をしっかりと把握しておきましょう。
退職金を労働契約や就業規則で定められた規則にもとづき、積み立てておき、退職時に一括して支払う制度です。
算定方法には、勤続年数に応じて定額を支給する定額制や、給与の金額に比例して支給する給与比例制など、労使間の話し合いで制度の規則が決まります。
選択した期間、あるいは生涯にわたって給付がされる退職年金制度です。
退職金にかかる税金
退職金は、長年の勤労に対する報償的給与として一時に支払われるものであることなどから、退職所得控除を設けたり、他の所得と分離して課税されるなど、税負担が軽くなるよう配慮されています。
退職金の受け取り法は、全部で3つあります。1つ目は、退職金を全額一度に受け取る「一時金」として受け取る場合。2つ目は、「すべて年金」として受け取る方法。そして、3つ目は、「一時金と年金を組み合わせる」方法です。
1.一時金としてもらう場合の退職所得控除額
一時金でもらう場合には、税制上では「退職所得」とします。そして、他の所得と合算せず分けて課税されます。その「課税対象金額」の算出法は以下です。
「課税対象金額」=(「退職一時金」-「退職所得控除額(表1参照)」)×1/2
このように、一時金で退職金を受け取ることのメリットは、退職所得控除により税負担が軽減されることで、税制面で有利になることです。また、勤続年数が長いほど、控除額が大きくなり、税制負担がより少なくなります。
2.年金としてもらう場合の税金
年金でもらう場合には、「雑所得」として課税されます。通常、同時期に公的年金ももらうことになるので、年間に受け取る年金額が多くなってしまうと、所得税、住民税、社会保険料の負担が増える可能性があり注意が必要です。
また、年金で受け取る場合には、2%などの運用率で運用した金額を受け取れるというメリットがあります。
一時金と年金を組み合わせることもできますが、個人によって税額が変わってきますし、ライフスタイルによってどの方式がよいかは変わってきます。具体的に相談したい人は、ファイナンシャルプランナーや税理士などに相談しましょう。
(出典)
厚生労働省「平成30年就労条件総合調査/4 退職給付(一時金・年金)の支給実態」
国税庁「退職金と税」
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー