2021年度税制改正でわたしの生活にどんな影響がある?
配信日: 2021.04.19
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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住宅関連
1.住宅ローン控除の特例の延長等
住宅ローンを組んでマイホームを購入等すると、ローン残高(上限あり)の1%が所得税額から控除される「住宅ローン控除」を受けることができます。
住宅ローン控除を受けるにはいくつかのポイントがあります。今回の改正では、控除期間13年の特例を受けられる入居期限が延長されました。具体的には、注文住宅は2021年10月から2022年9月末まで、分譲住宅などは2021年12月から2022年11月末までに契約した場合、2023年末までの入居者が対象です。
また、この延長した部分に限り、合計所得金額が1000万円以下の人は面積要件が床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅も対象となります。
2.住宅取得等資金に関わる贈与税の非課税措置の拡充
父母や祖父母など直系尊属から贈与してもらい、住宅取得等資金を取得した場合、一定の要件を満たすと、一定金額まで贈与税が非課税です。
非課税枠は、現行では、契約締結が2021年4月~12月の耐震・省エネ・バリアフリー住宅の場合、(1)消費税率10%適用住宅は1200万円、(2)それ以外の住宅は800万円となっています。なお、一般住宅の非課税枠は、それぞれ500万円減の金額です。
今回の改正により、上記の金額が(1)1500万円、(2)1000万円となります。また、合計所得金額1000万円以下の人の面積要件が緩和され、床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅にも適用されます。
子育て関連
1.教育資金、結婚、子育て資金の一括贈与に関わる贈与税の非課税措置の見直し
この制度は、祖父母や両親(贈与者)が、20歳以上50歳未満の子・孫(受贈者)名義の金融機関の口座等に、結婚・子育て資金を一括して拠出した場合、子・孫ごとに1000万円(結婚関係で支払われるものについては300万円)までを非課税とするものです。
今回の改正により、適用期間が2年延長され、2023年3月31日までとなります。ポイントは2つ。
教育資金の一括贈与について、贈与から経過した年数にかかわらず、贈与者死亡時の残高が相続財産に加算されます。また、受贈者が贈与者の孫等である場合は、贈与者死亡時の残高に関わる相続税額に2割加算が適用されます。
2.国や地方自治体の実施する子育てに関わる助成等の非課税措置
2021年分以降の所得税から、保育を主とする国や自治体からの子育てに関わる助成等(認可外保育施設等の利用料に対する助成など)については非課税となります。対象範囲は、子育てに関わる施設・サービスの利用料に対する助成で、対象は今後省令等の中で具体化されます。
医療関連
セルフメディケーション税制が見直されます。
セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例として、健康の維持増進および疾病の予防への取り組みとして一定の取り組みを行う個人が、スイッチOTC医薬品を年間1.2万円を超えて購入した場合、1.2万円を超える額について所得控除を受けることができるものです。
改正により、この税制の対象となる医薬品をより効果的なものに重点化し、手続きの簡素化を図った上で、適用期限が5年間延長されます。2022年4月以降の所得税について適用されます。
スイッチOTC医薬品から効果が薄いものを除外する一方、とりわけ効果があると考えられる薬効(3薬効程度)については、スイッチOTC成分以外の成分にも対象が拡充されます。
退職金関連
退職金は所得税法上最も優遇されています。(1)大きな退職所得控除、(2)2分の1課税、(3)分離課税といったメリットがあります。なお、勤続年数5年以下の役員等の退職金については、2分の1課税は適用されません。
改正により、2022年分以降の所得税について、勤続年数5年以下の法人役員等以外の退職金について、退職所得控除額を控除した残額のうち300万円を超える部分についても、2分の1課税が適用されません。
※この記事は2021年3月15日時点の情報に基づいています。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。