更新日: 2021.06.18 控除
住宅ローン減税改正は高所得者に有利ってホント?
税制上における高所得者とは、年収850万円以上に該当する方をいいますが、今回は住宅ローン減税を含む税制改正の内容と併せて、高所得者が住宅ローン減税において有利になるケースについて解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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2020年税制改正の内容とは?
ではまず、2020年の税制改正の内容についてもう一度整理していきましょう。
■基礎控除
所得金額にかかわらず、一律38万円の控除を受けることができていた基礎控除が、今回の改正で10万円引き上げられ48万円となりました。
また、一定の所得層以上は一律の控除は不要とするという考えから、年間合計所得金額が2400万円を超える方は段階的に控除額が引き下げられ、最終的に年間合計所得金額が2500万円を超える方の基礎控除額は0円となったことは、注目すべき点といえるでしょう。
■給与所得控除
会社員や公務員などの給与所得者が、勤務する上での必要経費にあたる額として控除される「給与所得控除」は、今回の改正により、一律10万円引き下げられました。また、控除額の上限が適用される給与収入額が1000万円から850万円へと引き下げられ、所得控除額の上限も195万円へと引き下げられています。
住宅ローン減税制度改正の内容とは?
住宅ローン減税の内容が改正となった、2021年の税制改正についても見ていきましょう。
■適用期間の延長
まず、この改正により、2021年12月までだった住宅ローン控除の適用期間が、2022年12月末まで延長されました。延長が可能な住宅の要件は以下のとおりです。
1.住宅ローン控除の要件に適合していること
2.注文住宅の場合は2021年9月末まで、分譲住宅の購入や増改築等の場合は2021年11月末までに契約していること
3.2021年1月1日から2022年12月31日までの間に住み始めること
■床面積要件の緩和
改正前は住宅ローン控除を受けるためには、床面積50平方メートル以上あることが必要でした。今回の改正により、床面積40平方メートル以上であれば住宅ローン控除を受けられるようになりましたが、適用を受けるためには合計所得金額が1000万円以下(給与所得者であれば、年収では1195万円以下)であることが要件となります。
税制改正によって影響を受ける人はどんな人?
今回の改正によって減税になる人、そして増税になる人とはどのような人なのでしょうか。
■減税となる人
合計所得金額が2400万円以下の人は、基礎控除が10万円引き上げられるため減税です。さらに、青色申告を行っている方であれば、確定申告方法をe-Taxにしたり、電子帳簿保存を導入したりすることで、本来であれば55万円に引き下げられる青色申告控除が65万円となるため減税となります。
■増税となる人
基本的に、給与所得者のうち所得金額が850万円を超える方は増税です。ただし、23歳未満の扶養親族がいる子育て世帯や、特別障害者の扶養家族等がいる介護世帯等は、給与の収入金額が850万円超える場合であっても、増税の対象とならないように、控除の上限額については一律10万円減、つまり210万円となります。したがって、独身者や子どもが独立した世帯などは増税です。
住宅ローン減税は税額控除であることに注目
では、なぜ住宅ローン減税の改正が高所得者に有利となるのでしょうか。それは、住宅ローン減税は所得控除ではなく、税額控除であるからです。
今回の改正では、基本的に高所得者にとっては増税となる内容となっています。しかし、言い方を変えると増税になった分、控除できる枠が広がると解釈できます。特に、住宅ローンを利用し始めたばかりの人であれば、年末のローン残高も多く、控除額も大きくなります。
住宅ローン控除で差し引くことができるのは、所得税および住民税からです。また、住民税については、所得税の課税所得金額の5%(上限9万7500円)と、上限が決められています(住み始めた年が2014年4月1日から2021年12月31日までの場合)。
したがって、これまでは控除できる所得税や住民税が少なかったために引き切れなかった住宅ローン控除額が残っていた方であれば、今後増税となることによって、住宅ローン控除を最大限利用することができるケースも考えられるということです。
まとめ
住宅ローン控除可能額が所得税額を上回っていたという人で、今回の改正により増税になるのであれば、その分控除できる枠が広がる可能性があります。
所得税および住民税から引き切れなかった控除額については、他に差し引く手段がないため、せっかくの控除制度を最大限利用できないというデメリットがあるケースもありますが、今後はそのデメリットが少し解消されることになるといえるでしょう。
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員