更新日: 2021.06.17 税金

中身が確認できない! 消費税込み価格の「総額表示」に一本化されたことによる、もどかしさとは?

執筆者 : 上野慎一

中身が確認できない! 消費税込み価格の「総額表示」に一本化されたことによる、もどかしさとは?
今年4月から消費税込み価格の「総額表示」が義務化されました。とはいえ、いろいろな経緯もあって、本体価格と消費税が併記される状況はまだまだ続いています。
 
そんな中で、先日「おやっ」と思うことがありました。
 
上野慎一

執筆者:

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

上野慎一

執筆者:

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

文庫本をフィルムパックする動き

それは、書店で書棚を眺めていたとき。文庫本がたくさん並ぶ一角に、本全体を薄いフィルムでパックしているものがありました。コミック誌やグラビア誌などで、(立ち読み防止のため)こうしたフルパックを見かけるのは珍しくないですが、文庫本となると別です。
 
この書店の文庫本の中でフルパックがされていたのは、講談社文庫の一部の本だけ。同文庫の本でパックされていないものも多く、他社の文庫本や新刊書ほかいろいろな本でも、こうしたパックは見かけませんでした。
 
フルパックされた文庫本を1冊購入してみたところ、パック上には1ヶ所だけシールが貼られ、本のタイトル、著者、そして「定価638円(本体580円+税10%)」の3行の記載がありました。
 
そしてパックを剥がしてみると、このシールでちょうど隠された表紙カバーの部分には、本のタイトル、著者、「定価:580円(税別)」の3行が表示されていました。
 
つまり、「総額表示」義務化に対応して価格表示を上書きしたようです。価格表示の1行だけよりも隠しやすいので本のタイトルや著者の部分もシール化した、苦肉の策に見えました。
 

消費税の動きのおさらい

消費税と価格表示をめぐる動きをおさらいすると、【図表1】のようになります。
 

 
以前にも書きましたが、出版業界では、消費税導入時、5%への増税時、総額表示の義務化など価格表示変更(消費税率変更)のたび、対応のために多大な経費や手間がかかっています。
 
こうした負担に耐えられずに出版物が流通できなくなることは、読者にも著作者にも不利益であり、学術や文化の振興・普及の損失にもつながってしまうことが懸念されています。
 

今回の総額表示義務化に、本はどう対応しているの

先述の事例で、表紙カバーに「定価:580円(税別)」と印刷しているものを、「定価638円(本体580円+税10%)」の表紙カバーに印刷し直して全部差し替えたり、この部分だけ変更シールを上からいちいち貼るのは、とても大きな負担で無理があります。
 
今回の総額表示義務化(正確には再義務化)に先立って出版業界ではガイドラインを公表し、各社それぞれの判断による対応を呼びかけました(※1)。
 
このガイドラインでは、スリップ(定価カード)のうち本から飛び出ているところ(ボーズ部分)や表紙カバーにかけられたオビ(帯)などに総額表示がされていれば、新刊や増刷でも表紙カバーの表示は、例えば「定価:580円(税別)」のままでオーケーとされています。
 
また、既刊書で店頭に並んでいるものについては、回収や返品、店頭での差し替えまでは必要なく、可能な限りで総額表示へ対応することが呼びかけられています。
 
今回の講談社文庫のフルパックは、総額表示義務化への対応が大きな要因であり、当面は新刊のみが対象、来店者の立ち読み用の見本としてフィルムを剥がしたものを置くことを推奨する。こうしたことが報道されています(※2)。
 
決して立ち読み防止を目的にしたものではないようです。しかし、すべての本にフィルムを剥がした見本がいつでも必ず用意されているわけでもありません。
 

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まとめ

消費税の表示がより分かりやすくなるのは、決して悪いことではありません。でもその根底には、消費税の徴収をできるだけ批判や反論がないように進めたいという本音があるのかもしれません。
 
徴税をスムーズに進めるため、税率変更等のたびにさまざまな業界において、価格表示をめぐって費用や手間の面で大きな負担や混乱を余儀なくされる。もしもそうだとすれば、本末転倒です。
 
あらかじめ買うものを決めて書店を訪れる人もいるでしょう。一方、ちょっと気になる本について中身を実際に少し確認して買うかどうかを決める。あるいは、店頭でいろいろな本をざっと目を通しながらお気に入りの1冊を見つける。こうした本との出会いを楽しみにしている方も少なくないでしょう。
 
よい意味でのそんな“立ち読み文化”がなくなっていくかもしれない、ひいてはリアル書店のさらなる衰退にもつながりかねない。
 
今回のような本のフルパック化がもしもどんどん進展していくとすると、こうした心配事がどうしても頭をよぎります。
 
[出典]
(※1)一般社団法人日本書籍出版協会ほか「消費税の総額表示への対応について(2020年12月版)」
(※2)文化通信社「The Bunka News」~「講談社、文庫のフィルムパック出荷へ 4月新刊から総額表示義務化に対応」(2021年3月10日)
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士