更新日: 2021.07.06 確定申告
年金受給者の確定申告不要制度どんな人が利用できる?
今回は、そもそも公的年金にかかわる課税制度とはどのような仕組みになっているのか、そしてこの確定申告不要制度を利用できるのはどのような方なのかについて解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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公的年金等の課税について
公的年金等を受給している場合、その所得金額については公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を引いた額で計算します。公的年金等については、所得の中でも「雑所得」に該当し、国民年金や厚生年金などの公的年金に加え、勤めていた企業から支給される年金なども対象となります。
■源泉徴収割合
公的年金の所得金額に対して、現在(2021年6月時点)では5.105%が源泉徴収されることとなっています。また、所得金額を算出する際の公的年金等控除額については、受給者の年齢が65歳未満か65歳以上かで異なる点にも注意が必要です。
(参考・引用:国税庁「公的年金等の課税関係」(※1))
公的年金等に関わる確定申告不要制度
公的年金等を受給している方で、「公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下」かつ「公的年金等に関わる雑所得以外の所得の金額が20万円以下」の場合に受けることができる制度です。
■公的年金等に関わる雑所得以外の所得とは?
公的年金等に関わる雑所得以外の所得と、その所得金額の計算方法については以下のとおりです。
1.給与所得
年金を受給しながら企業等に雇用されて働いている方は給与収入が発生します。給与所得の額については、給与収入額から給与所得控除額を引いたものです。
ちなみに、給与所得控除額の最低金額は65万円です。給与収入が85万円を超える場合は、公的年金に関わる雑所得以外の金額が20万円を超えることとなり、確定申告不要制度の対象外となりますので、注意しましょう。
2.雑所得
ここでいう雑所得とは、年金および給与以外の収入がある場合です。例えば、執筆の仕事をしていて執筆料を受け取っている、もしくは個人年金の受給もその対象です。これらの所得金額は、総収入金額から必要経費を引いたものとなります。
3.配当所得
公的年金以外の所得の中で忘れがちなのが配当所得です。投資している株式などの運用商品からの配当金などが該当します。
ただし、運用口座が特定口座で、配当所得の申告不要制度が適用されている場合は、すでに配当に関わる税金を納めていることになりますので、申告は不要です。
それ以外の場合における配当所得の計算は、受け取った配当などの収入から、それらの株式などの取得するために要した借入金の利子を引いたものとなります。
4.一時所得
加入している生命保険の満期返戻金などが該当します。一時所得の額は、その収入額から払い込んだ保険料総額を差し引き、さらに特別控除額である50万円を引いて算出した金額の2分の1の額となります。
(参考・引用:国税庁「公的年金等を受給されている方へ」(※2))
公的年金等に関わる確定申告不要制度を利用する際の注意点
上記で挙げた要件に当てはまる場合であっても、確定申告不要制度を利用できないケースがあります。それは以下のようなケースです。
■医療費控除の還付申請などを行う場合
還付申請は確定申告を行う必要がありますので、医療費控除の還付申請や住宅ローン減税などの適用を受ける方は確定申告を行う必要があります。
(参考:国税庁「公的年金等を受給されている方へ」(※2)
住民税の申告が別途必要となるケースもある
確定申告不要制度を利用した場合であっても、住民税の申告が必要となるケースもあります。
■各種控除を受ける場合
公的年金等の源泉徴収票に記載されている以外の控除を受ける場合は、住民税の申告が別途必要です。具体的には生命保険料控除や損害保険料控除などです。
(参考:政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」(※3))
まとめ
基本的に収入が公的年金等のみの場合で、その雑所得金額が400万円以下の場合は確定申告不要制度を利用できます。ただし、医療費控除などで還付申請が発生する場合や、損害保険料や生命保険料の控除を申告する必要がある場合は確定申告を行う必要があります。
特に気をつけたいのが、生命保険の満期返戻金です。契約者、保険料支払者、受取人すべてが自分であれば一時所得の対象となりますが、契約者および保険料の支払者と受取人が異なる場合は、金額によっては贈与の対象となる可能性もあります。
また、満期保険金を年金形式で受け取った場合は、公的年金等以外の雑所という取り扱いとなり、その雑所得の金額についてはその年に受け取った年金額からそれに関わる払込保険料を引いた額です。
リタイア後も公的年金以外で収入があった際には、それらがどのような所得になるのか、そして所得金額はどのように計算するのかをしっかりと理解しておきましょう。
(※1)国税庁「公的年金等の課税関係」
(※2)国税庁「公的年金等を受給されている方へ」
(※3)政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員