更新日: 2021.08.09 その他税金

消費税のかかる取引とかからない取り引き その2

消費税のかかる取引とかからない取り引き その2
前回の「その1」では消費税の課税のルールを説明し、どのような取引に消費税がかかるのか、かからないのかについて解説しました。
 
ただ、この取引は消費税がかからないと思って安心していると、「えっ、ここには消費税がかかるの?」ということがあります。消費税がかかる、かからないの境界をきちんと見極めることが、実際の取引で失敗しないためのポイントです。
 
今回は、消費税がかからない取引を具体的に挙げ、どこまでが消費税がかからないのか、また、実際の取引における注意点について説明したいと思います。
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。

現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。

ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。

FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。

2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。

現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。

早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。

サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

消費税がかからない取引と、その注意点

それでは、消費税がかからない取引と、その注意点について見ていきましょう。
 

給与・賃金

給与・賃金は事業として行うサービスの対価ではなく、雇用契約に基づく労働の対価とみなされるものであり、「事業」という要件を満たしていないので消費税の不課税取引となります。
 

寄付金・祝い金・見舞金・補助金など

これらは事業の対価として支払われるものではないため、消費税の不課税取引になります。
 

保険金

保険契約に基づいて支払われるものであり、資産の譲渡等の対価とはいえないので、消費税の不課税取引になります。
 

土地の購入および貸し付け

土地の購入や賃貸には、原則として消費税がかかりません。ただし、次の点には注意が必要です。
 
(1)土地と居住用住宅を購入した場合
土地の購入には消費税がかからないのに対し、その土地の上に居住用の住宅を建てて不動産会社から購入した場合には、住宅の価格には消費税がかかります。これは一戸建住宅だけではなく、マンションなどの区分所有住宅でも同じことがいえます。
 
1つの契約で土地付き住宅を購入しても、土地には消費税がかからないが、建物には消費税がかかるということが起きるのです。また、消費税が上がっても、土地付き住宅の価格全てが上昇するというわけではありません。価格上昇は建物部分に限られます。
 
(2)土地の貸し付けの場合
土地の賃貸の場合、消費税が非課税になるためには、貸付期間が1ヶ月以上であることが必要となります。また、駐車場や野球のグラウンドのように、土地の上に駐車設備や照明設備などが設置されている場合には、単なる土地の賃貸ではなくなるため消費税がかかります。
 

住宅の貸し付け

居住用の住宅、アパート、マンション、社宅、寮などの賃貸料には消費税がかかりません。ただし、土地と同様に賃貸期間が1ヶ月以上という条件があるので、1ヶ月未満のベッド・アンド・ブレックファストの宿泊料やウイークリー・マンションの賃貸料などには消費税がかかります。
 
居住用住宅とは別に、事務所や店舗の家賃には消費税がかかります。消費税非課税の対象となるのは、居住用住宅の貸し付けであって、居住用住宅を不動産会社から購入した場合や居住用住宅の改造工事、修繕工事などを行った場合は消費税の課税対象となります。
 

株式等の有価証券の売買、保険料等の支払い、借入金の支払い

株式等の有価証券の売買には消費税がかかりません。保険料、保証料、借入金の支払いにも消費税はかかりません。
 

商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡

商品券、ビール券、プリペイドカード、図書券、旅行券、遊園地の前売り入場券などの売買には消費税はかかりません。
 
商品券などはそれを使った時点で、消費税込みの価格を商品券で支払うことになります。購入時に消費税をかけると二重課税になってしまうので、商品券などの売買には消費税がかからないようになっているのです。
 

医療・福祉・教育関連

医療・福祉・教育関連の取引にも、基本的に消費税はかかりません。それぞれ具体的に見ていきましょう。
 
(1)医療関連
健康保険適用の治療費・入院費・手術費・医薬品などは非課税ですが、予防接種や人間ドックの費用、個室などの差額ベッド代、自由診療費用、健康保険が適用されない医薬品などについては消費税がかかります。
 
(2)福祉関連
社会福祉事業、介護保険サービス、身体障害者用物品(義足など)は消費税がかかりませんが、介護サービスの利用者が選択した特別室や特別食の費用には消費税が課税されます。
 
(3)教育関連
授業料、入学金・入園料、施設設備費、入学試験検定料、教科書代は消費税がかかりませんが、給食費、スクールバス代、参考書・ドリルなどの副教材、学習塾の費用などには消費税が課税されます。
 

まとめ

消費税課税の考え方と身近な費用を例にして、消費税がかからないものについて解説してきました。消費税がかからないと思われる費用の中でも、その境界にあるものについて消費税がかかる場合があります。消費税がかかる、かからないという基本の考え方を押さえるとともに、詳細についても気を付けることをお勧めします。
 
出典
国税庁 No.6105 課税の対象
国税庁 No.6157 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例
国税庁 No.6209 非課税と不課税の違い
国税庁 No.6201 非課税となる取引
国税庁 No.6205 非課税と免税の違い
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

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