更新日: 2021.08.17 控除

2020年分の申告から創設された「所得金額調整控除」とは?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

2020年分の申告から創設された「所得金額調整控除」とは?
令和2年分(2020年分)の確定申告から「所得金額調整控除」という項目が新設され、給与所得者の方が控除の適用を受ける場合、年末調整で新たに書類を提出したり、対象によっては確定申告での手続きが必要となっています。この「所得金額調整控除」について簡単に解説します。
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所得金額調整控除とは?

所得金額調整控除は、給与所得から一定の金額を控除するものであり、令和2年分から所得税について適用されています。適用の対象となるケースによって2種類ありますので、それぞれ解説していきます。
 

子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除

対象は、その年の給与等の収入金額が850万円を超える給与所得者で、以下のいずれかに該当する方です。


・本人が特別障害者に該当する
・23歳未満の扶養親族がいる
・特別障害者である同一生計配偶者、または扶養親族がいる

これらに該当する給与所得者の方が総所得金額を計算する場合、以下の所得金額調整控除額が給与所得から控除されます。

〇所得金額調整控除額の計算式
 
{給与等の収入金額(1000万円超の場合は1000万円)-850万円}×10%=控除額

※控除額の1円未満の端数は切り上げ

こちらの控除の対象となる場合は年末調整で適用できるので、給与の支払者に「所得金額調整控除申告書」を提出します(提出期限は、その年の最後の給与支払日の前日まで)。
 
ただし、後述する「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」も適用する場合には、確定申告で手続きを行う必要があります。
 
また、この控除は扶養控除のように同一生計内のいずれかの所得者のみに適用するという制限がなく、給与等の収入金額が夫婦ともに850万円を超えており、要件に該当する子どもがいる場合などでも夫婦両方が控除の適用を受けられます。
 

給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除

こちらの対象となる方は以下のとおりです。


・その年分の給与所得控除後の給与等の金額と、公的年金等に係る雑所得の金額がある給与所得者で、それらの合計額が10万円を超える

該当する給与所得者の方が総所得金額を計算する場合に、以下の所得金額調整控除額が給与所得から控除されます。

〇所得金額調整控除額の計算式
 
{{給与所得控除後の給与等の金額(10万円超の場合は10万円)+公的年金等に係る雑所得の金額(10万円超の場合は10万円)}-10万円=控除額

こちらの控除額について、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」の適用を受けた場合は、適用後の給与所得の金額からさらに控除される仕組みになっています。対象となる方が適用を受ける場合は、確定申告で手続きを行います。
 

所得金額調整控除が新設された経緯

なぜ令和2年分の確定申告からこの控除が新設されたのか、簡単にひも解きます。
 
平成30年度の税制改正で、さまざまな控除についての見直しが行われました。その中で給与所得控除は、給与収入が850万円を超えた場合の控除額が引き下げられています。
 
しかしながら子育てなどの負担がある世帯もあり、この改正の影響による負担の増加を回避するために新設されたのが、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」です。
 
また、同税制改正では給与所得控除額、公的年金等控除額がそれぞれ10万円の引き下げとなった一方で、基礎控除額は10万円引き上げになりました。
 
この場合、給与所得控除と公的年金等控除の両方を受けている方は、トータルで控除額が最大10万円の減少になります(給与所得、年金所得の金額によっては10万円以下の場合もあります)。
 
その影響を無くすための措置として、「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」が新設されています。
 

まとめ

以上、簡単ではありますが、2つの所得金額調整控除について解説しました。
 
対象となるのは、年間給与が850万円を超えて23歳未満の子どもがいる方などや、給与収入と年金収入があり、その額が大きい方などです。せっかくの制度ですので利用しない手はありません。
 
詳細が気になる方は勤務先の担当部署、または税務署や税理士にご相談してみてはいかがでしょうか。
 
出典
国税庁 No.1411 所得金額調整控除
国税庁 No.2676 年末調整で所得金額調整控除の適用を受けるとき
国税庁 所得金額調整控除に関するFAQ(源泉所得税関係)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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