【消費税の豆知識】総額表示の導入の背景は? どんな表示方法があるの?
配信日: 2021.09.19
消費税は導入時3%でした。そこから税率が変更され、5%になった時、その5%のうち1%が地方消費税とされました(ここから消費税は地方消費税を含むため、消費税等と表記されています)。8%に変更された際には、8%のうち1.7%が地方消費税とされました。
元号が変わった令和元年10月には、消費税等は10%に変更され、飲食料品については軽減税率が導入され、消費税は一律何%ではなく10%と8%の2つの税率が存在することとなりました。10%のうち、7.8%が消費税、2.2%が地方消費税で、飲食料品については8%のうち消費税は6.24%、1.76%が地方消費税とされました。
税率だけを見ると3%、5%、8%、10%と変更されたようにみえますが、このように内訳が新しく追加(5%の時に地方消費税1%)されたり、新しい税率が追加されていたりする(飲食料品の軽減税率8%うち消費税6.24%、地方消費税1.76%)のです。
執筆者:高畑智子(たかばたけ ともこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者
総額表示
実は、令和3年4月1日から消費税の取り扱いが少し変わっていることに、みなさん気づかれているでしょうか?
令和3年4月1日から総額表示が義務付けられています。総額表示とは、消費者に対する「値札」や「広告」などにおいて価格を表示する場合には、消費税相当額(含む地方消費税相当額)を含んだ支払総額の表示を行うことです。
この総額表示は平成16年4月から実施されており、一目で消費税相当額を含む支払総額がわかるよう、値札等の記載が変更されています。
「総額表示」導入前は、「税抜価格表示」が主流で、商品をレジに持っていきレジをとおすまでは、いくら払えば良いのかが分かりにくいということがありました。また、同じ商品・サービスでも「税抜価格表示」と「税込価格表示」のお店があり、比較がしづらいということもあり、この状況への対策が求められていました。
「総額表示」になり、消費者にとっては、値札や広告を見ただけで総額いくら払えばその商品・サービスを購入できるのかが一目で分かること、そして価格の比較も簡単になることにより、それまでの価格表示によって生じていた煩わしさが解消されることから導入されました。
「総額表示」の対象は、消費者に対して商品やサービスを販売する課税事業者が行う価格表示を対象とするもので、具体的には、以下のような価格表示があげられます。
値札、商品陳列棚、店内表示、商品カタログ等への価格表示
商品のパッケージなどへ印字、あるいは貼付した価格表示
新聞折込広告、ダイレクトメールなどにより配布するチラシ
新聞、雑誌、テレビ、インターネットホームページ、電子メール等の媒体を利用した広告
ポスター
など
具体的な表示例としては、次に掲げるような表示が総額表示として認められます(標準税率10%が適用される場合)。
1万1000円
1万1000円(税込)
1万1000円(税抜価格1万円)
1万1000円(うち消費税額等1000円)
1万1000円(税抜価格1万円、消費税額等1000円)
1万1000円(税抜価格1万円、消費税率10%)
1万円(税込価格1万1000円)
このように、総額表示といってもいろいろな表示方法がありますが、消費者が支払う金額を一目で分かるようにするという趣旨のもと導入されているのです。
消費税の総額表示は、一般消費者を対象としているため、企業間で行う取引や相対取引については義務化されていませんが、齟齬(そご)がないように契約書等には消費税等を明確にするために記載されていることもあります。
例外規定
以上のように、総額表示義務について記載いたしましたが、平成25年10月1日から令和3年3月31日までの間は、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のために特別措置法(平成25年法律第41号)により、一定の場合には税込価格の表示を要しないこととする特例が設けられていました。
この特別措置法が終了したため、令和3年4月1日から再度総額表示が義務付けられることとなったのです。
出典
財務省「消費税における「総額表示方式」の概要とその特例」
執筆者:高畑智子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者