更新日: 2021.10.26 控除

「扶養親族等申告書」とは? 届いたらどうすればよい?

執筆者 : 新美昌也

「扶養親族等申告書」とは? 届いたらどうすればよい?
毎年秋ごろ、「扶養親族等申告書」という書類が届くことがあります。これはいったいどのような方が対象で、どのような時に届くものなのでしょうか。対象者や手続きの方法などをお伝えします。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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「扶養親族申告書」は誰に送られてくるの?

この申告書は、所得税の課税対象となる老齢年金受給者(公的年金について源泉徴収の対象となる方)に毎年送られてきます。65歳未満は年金108万円以上、65歳以上は同158万円以上の方に送られます。令和4年分の申告書は令和3年9月17日より順次、送られます。
 
この申告書を提出すると、確定申告せずに配偶者控除、扶養控除、障害者控除などの所得税の控除を受けることができます。一方、提出をしないとこれら控除が受けられず、年金から天引きされる所得税(源泉徴収税額)が過大になり、受け取る年金額が減ってしまう可能性があります。
 
申告書は、期限内に同封してある返信用封筒に切手を貼って投函(とうかん)します。
 
なお、税制改正に伴い、令和2年分以降の扶養親族等申告書については、提出された場合と提出されなかった場合で、所得税率に差がなくなりました。そのため、各種控除に該当しない方(受給者本人が障害者・寡婦・ひとり親に該当せず、控除対象となる配偶者または扶養親族がいない方)は、扶養親族等申告書を提出する必要はありません(※1)。
 

扶養親族がいなくても「扶養親族申告書」は必要?

「扶養親族申告書」の名称から、扶養親族がいない場合、この申告書を提出しなくてもよいと勘違いする方も少なくありません。しかし、この申告書の提出することで確定申告をしなくとも配偶者控除、扶養控除、障害者控除などの所得控除が受けられますので提出したほうがよいでしょう。
 
なお、出し忘れた方は5年以内であれば、確定申告することで払い過ぎた所得税を取り戻すことができます。
 
年金受給者で、公的年金等による収入合計が400万円以下でかつ、公的年金等に関わる雑所得以外の所得が20万円以下の場合、確定申告が不要になりますが、払い過ぎた税金を取り戻すためには確定申告が必要ですので注意してください。
 

「扶養親族申告書」の書き方のポイント

日本年金機構「令和4年分扶養親族等申告書の記入方法」(※2)には、記入の仕方を細かく解説していますので、これを参考に記入するとよいでしょう。この中から、間違いやすいと思われる「配偶者の区分」について見てみましょう。
 
申請書には「〇」をする場合と金額を記入する場合があります。「〇」をする場合は、以下のとおりです。
 
配偶者の年収が年金のみで、(1)65歳以上場合、年金額が158万円以下の方、(2)65歳未満の場合、年金額が108万円以下の方。
 
それ以外の方は金額(所得)を書きます。
 
所得は収入とは違います。この違いがわからないと、所得を記入しなければならないのに収入を記入してしまうリスクがあります。
 
違いをざっくり説明すると、収入から必要経費を差し引いた金額が所得です。
 
例えば、配偶者の収入が年金だけの場合、65歳以上で年金収入が158万円超330万円以下なら110万円差し引いた金額が所得です。65歳未満なら年金収入が108万円超130万円以下なら60万円差し引いた金額が所得になります。
 

〈計算例1〉65歳以上の方で受け取る年金額が145万円の場合

145万円(受け取る年金額)-110万円(公的年金等控除額)=35万円(年間所得の見積額)

 

〈計算例2〉65歳未満の方で受け取る年金額が50万円の場合

50万円(受け取る年金額)-60万円(公的年金等控除額)=0万円(年間所得の見積額)*マイナスとなった場合、所得額は0円です。

 
なお、申請書にマイナンバーを書く欄があります。マイナンバーを記載する機会は多くないと思いますので「番号がわからない」人もいらっしゃるでしょう。マイナンバーの記載がなくても申告書は受け付けてくれます。
 
出典
(※1)
日本年金機構「年金Q&A (扶養親族等申告書の提出)」
(※2)
日本年金機構「令和4年分扶養親族等申告書の記入方法」
日本年金機構「「令和4年分公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の送付」
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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