年末調整に必要な書類はいつ届く?
配信日: 2021.11.07
しかし、多くの給与所得者にとっては、源泉徴収された分だけでなく、年末調整によって納税が完了することになります。必要となる年末調整の手続きを見ていきましょう。
執筆者:小山英斗(こやま ひでと)
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
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目次
年末調整とは?
年末調整とは、給与や賞与から源泉徴収された年間(1月~12月)の合計額と、本来徴収すべき所得税の1年間の総額を再計算した額とを比較し、その過不足金額(差額)を調整するものです。
もし、源泉徴収された額の方が再計算された額より多い場合は、余分に源泉徴収されていた分の差額が還付されることになります。また逆に本来徴収すべき額の方が源泉徴収された額より多い場合は、その差額が徴収されることになります。
年末調整において過不足金額が発生する理由は、給与や賞与から源泉徴収されている額があくまで概算で計算されたものであることです。
年の途中で給与額が変わったり、転職や家族構成が変化したり、また、給与・賞与からの控除以外で控除対象となる保険料などを払ったりしている場合などでも発生することがあります。
年末調整で必要な申告書類
年末調整の手続きで勤務先に提出が必要な申告書類は以下になります。
(1)扶養控除等(異動)申告書
(2)基礎控除申告書
(3)配偶者控除等申告書(「配偶者控除」または「配偶者特別控除」を適用する場合提出)
(4)所得金額調整控除申告書(「所得金額調整控除」を適用する場合に提出)
(5)保険料控除申告書(生命保険料控除等を受ける場合のみ提出)
(6)住宅借入金等特別控除申告書(住宅ローン控除を受ける場合のみ提出)
紙での申告の場合、上記(2)~(4)の申告書ついては「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」といった形に1枚で申告ができる様式にまとめられています。
(1)の扶養控除等(異動)申告書は、扶養親族や源泉控除対象配偶者などがいない人でも提出しなければならないこととされています。提出が無い場合、源泉徴収税額は、この申告書を提出した場合よりも高い税率が適用されます。
(2)の基礎控除申告書は、合計所得金額が2500万円以下である場合に、その人の合計所得金額に応じて最大48万円が控除される控除です。基礎控除申告書は令和2年分から新しく設けられた申告書です。
令和元年までは合計所得金額にかかわらず一律38万円の控除を受けることができたので、この申告書を提出する必要がありませんでした。
(2)については新設された申告書でもあることから、提出漏れにより基礎控除を受けることができないこととならないように注意が必要です。年末調整する人の多くの人は特に(1)と(2)の申告書の提出は必須と考えておいた方がいいでしょう。
年末調整で必要な添付書類
申告書に添付する形で提出が必要な書類には以下のようなものがあります。
・保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書や地震保険料控除証明など
・個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金払込証明書など
・国民年金、国民健康保険などの社会保険料を証明する書類など
・住宅ローン控除のための借入金の年末残高等証明書など
・配偶者特別控除のための源泉徴収票などの収入証明など
その年に前職で給与を支払われていた場合は、前職の源泉徴収票も提出する必要があります。
年末調整に必要な書類が届く時期と申告書の提出時期
年末調整で必要な申告書や添付書類などが手元に届き始める時期はおおむね10月中旬頃からになります。申告書類は勤務先の会社から、生命保険料控除証明書や個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金払込証明書、住宅ローンの残高証明書などは利用している金融機関から届きます。
毎年10月~11月頃は金融機関からの各種証明書が届くのが多くなる時期です。証明書が届くことで申告するものがあることに気づく人も少なくないかと思います。他の郵便物などに混じって見落としが無いように注意が必要です。
年末調整を開始する時期は会社によって異なりますが、申告書類などの回収については多くの会社は11月中旬頃から始めているようです。回収の早い会社では、11月上旬を書類の提出期限としているところもあるようです。
必要書類が手元に届いてから提出期限まで必ずしも余裕があるとは限りませんので、手元に必要書類がそろったら早めに手続きを済ませるようにしましょう。
なお、年の途中で海外勤務などにより非居住者になった人や、年の途中で死亡により退職した人などは、年末ではなく退職時に年末調整を行うことになります。
年末調整で納税手続きが完了しない人
勤務先に「扶養控除等(異動)申告書」を提出していても、年収が2000万円以上ある人や給与所得以外の所得(副業など)が20万円を超える人など、一定の条件に当てはまる人は個別に確定申告をする必要があります。
また、雑損控除、医療費控除、寄附金控除の3つについては、会社で年末調整が行われないので、それらの控除を受けたい場合は確定申告をする必要があります。
なお、住宅ローンを組んで住宅購入した人なども、初年度(1年目)は住宅取得等特別控除(住宅ローン控除)などの還付を受けるためには確定申告をする必要がありますが、次年度(2年目)以降は年末調整で住宅ローン控除が受けられます。
年末調整を忘れた場合は?
年末調整を忘れた場合、その対処としては2つです。1つは、会社に年末調整をお願いする方法。これは、年末調整に必要な書類の提出期限を過ぎてしまった場合ですが、会社によっては提出期限を過ぎていても受け付けてくれる場合もあるようですので、まずは勤務先に相談しましょう。
もう1つは自身で確定申告を行う方法です。通常、確定申告の期限は2月16日から3月15日です。この期限までに源泉徴収票と添付書類を所轄の税務署まで持参し、手続きしましょう。
余裕をもって必要書類の準備をしましょう
年に1回の年末調整。人によってはそろえる必要のある書類も多くなるかと思います。年末調整は会社が代わりに納税手続きを行ってくれるものですので、自身で確定申告をするよりも手間が省けるメリットがあります。
必要書類の提出期限に間に合うよう、余裕をもって準備をしましょう。
出典
国税庁 給与所得者(従業員)の方へ
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)