更新日: 2021.11.29 控除

今住んでいるマンションが高く売れそう。税金は払うの?

執筆者 : 村川賢

今住んでいるマンションが高く売れそう。税金は払うの?
国土交通省や東日本不動産流通機構などの調査によると、2013年ごろから首都圏を中心にマンション価格が上昇し続けています。5年前に購入して住んでいるマンションの見積価格を調べると、中古にもかかわらず購入した当時よりも上昇していることもあるようです。
 
30 数年前のバブル期を思い浮かべる人もいると思いますが、もし売却して売却益が出た場合には、税金を払わなければならないのでしょうか?
村川賢

執筆者:村川賢(むらかわ まさる)

一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)

早稲田大学大学院を卒業して精密機器メーカーに勤務。50歳を過ぎて勤務先のセカンドライフ研修を受講。これをきっかけにお金の知識が身についてない自分に気付き、在職中にファイナンシャルプランナーの資格を取得。30年間勤務した会社を早期退職してFPとして独立。「お金の知識が重要であることを多くの人に伝え、お金で損をしない少しでも得する知識を広めよう」という使命感から、実務家のファイナンシャルプランナーとして活動中。現在は年間数十件を越す大手企業の労働組合員向けセミナー、およびライフプランを中心とした個別相談で多くのクライアントに貢献している。

3000万円の特別控除の特例とは

不動産を売却して売却益が出た場合には、その譲渡所得に対して譲渡所得税がかかります。しかし、現在住んでいる住宅を売却して売却益が出た場合には、所有期間の長短にかかわらず、譲渡所得から最高3000万円まで控除できる特例があります(※1)。
 
つまり、売却益が出ても譲渡所得が3000万円以下なら、この特例を適用することで譲渡所得税を払わなくて良いのです。ただし、以下のような適用要件があるので留意してください。なお詳細については、国税庁のホームページ(※1)を参照してください。

(1)現在住んでいる土地・建物を売却すること。以前に住んでいた場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の同じ年の12月末までに売却すること。
(2)売却した年、その前年および前前年にこの特例やマイホームの譲渡損失についての損益通算や繰越控除の特例を受けていないこと。
(3)売却した年、その前年および前前年にマイホームの買替特例や交換特例を受けていないこと。
(4)売却した土地・建物について、収容等の場合の特別控除など他の特例を受けていないこと。
(5)災害によって失った家屋では、その土地に住まなくなった日から3年を経過する日の同じ年の12 月末までに売却すること。
(6)売り手と買い手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。

この特例を受けるためには、売却前の住民票、売却した土地・建物の全部事項証明書などの住居として使用していたことを証明する書類や、取得時と売却時の価格等を証明する書類などを添えて、確定申告をしなければなりません。
 

住宅ローン控除と同時には受けられない

住んでいるマンションを売却して、すぐに新しく戸建てやマンションを購入する人も多いと思いますが、入居した年、その前年または前前年に、この特別控除の特例を受けると住宅ローン控除の適用ができません。従って、どちらの控除を受けるのが得か、十分考慮して適用を受ける必要があります。
 

マイホームを売却したときの軽減税率の適用とは

さらに、売却した年の1月1日において10 年を超えて所有していたマイホームを売却した場合には、この3000万円特別控除の適用と併用して「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」を適用することができます。(※2)
 
この軽減税率の特例は、(3000万円特別控除適用後に)譲渡所得が6000万円以下であれば譲渡所得への税率が14.21%(所得税+復興特別所得税10.21%+住民税4%)に軽減されます。ただし、この特例を受けるためには適用要件を満たしていなければならないので、国税庁のホームページ(※2)を参照してください。
 

マイホームを売却して損した場合は?

マイホームを買い換えたときに損失があった場合や、住宅ローンが残っているマイホームを売却して損失があった場合には、譲渡損失の損益通算や繰越控除の特例がありますので、国税庁のホームページを参照してください。(※3、※4)
 

終わりに

住居としていない土地・建物を売却して譲渡所得があった場合、その譲渡所得へは、長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日時点での所有期間5年超)の場合で20.315%(所得税+復興特別所得税15.315%+住民税5%)、短期譲渡所得(譲渡した年の1月1日時点での所有期間5年以下)の場合で39.63%(所得税+復興特別所得税30.63%+住民税9%)と大きな税率が適用されます。
 
しかし、住居としている土地・建物を売却して譲渡所得があった場合には、これまで述べてきたような各種特例制度があり、税制優遇されています。ただし、3000万円特別控除と住宅ローン控除との併用ができないなど、注意すべき点もあります。
 
(出典)
(※1)国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
(※2)国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
(※3)国税庁 No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき
(※4)国税庁 No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき
 
執筆者:村川賢
一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)

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