更新日: 2021.11.30 控除
相続税を軽減できる「控除」って何?
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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基礎控除
相続税は、プラスの財産から借入金などのマイナスの財産を差し引いた正味の遺産総額を求め、その遺産総額が基礎控除を超えた場合に相続税が課税される仕組みになっています。つまり、正味の遺産総額が基礎控除以下であれば相続税は課税されません。
基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で求めます。例えば、法定相続人の数が妻と子2人の3名であれば、基礎控除は4800万円となりますので、正味の遺産総額が4800万円以下であれば相続税は課されません。
「法定相続人の数」とは、相続の権利を持っている人をいいます。相続の順位は民法で定められています(887条・889条)。「法定相続人の数」には相続を放棄した人も含まれます。
基礎控除を増やす方法のひとつに養子縁組があります。養子の数に制限はありませんが、「法定相続人の数」に加えることができるのは、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人までです。
ただし、特別養子縁組で養子になった人や配偶者の子で養子になった人などは、養子であっても実子とみなされるので養子の数の制限が受けません。
配偶者の税額軽減(配偶者控除)
基礎控除に次いで絶対知っておきたいのは配偶者の税額軽減です。これは、配偶者が実際に取得した財産額が、配偶者の法定相続分と1億6000万円のいずれか多い金額の控除を受けることができるというものです。
ここでいう配偶者は婚姻関係にある配偶者をいいますので、内縁の妻などは含まれません。また、この控除を受けるには、相続税の申告期限(10ヶ月)までに相続財産が分割されていることが必要です。
その他の控除
基礎控除と配偶者控除以外にも、相続人が未成年者や障害者である場合なども控除を受けることができます。ポイントを確認しましょう。
▽未成年者控除
相続人が未成年者である場合、成年に達するまで一定の金額(*)がその未成年者の相続税額から控除できます。
*未成年者控除額=10万円×(20歳-相続時の年齢)
▽障害者控除
相続人の中に85歳未満の障害者がいる場合、一定の金額(*)を相続税額から控除できます。
*障害者控除額=10万円(特別障害者は20万円)×(85歳-相続時の年齢)
▽相次相続控除
例えば、夫が亡くなって相続税を支払った妻が亡くなった場合、短期間で同じ財産に2度相続税がかかる場合があります。そこで、10年以内に相次いで相続が発生した場合には、一度目に支払った相続税額のうち一定額を、2度目の相続の相続税額から控除できるようになっています。
▽贈与税額控除
亡くなる前3年前に贈与された財産は相続の計算上、相続財産に加算されます。このままだと、贈与税と相続税の二重課税になります。そこで、支払い済みの贈与税を相続税から控除できるようになっています。
▽外国税額控除
海外にある財産を相続し、その国で相続税を支払った場合でも、日本で相続税が課され二重課税の問題が生じます。これを解消するため、その国で支払った税額を日本の相続税から控除できるようになっています。
相続税が加算される人もいます
相続税を軽くする控除について見てきましたが、相続税が加算される人もいます。
相続や遺贈によって財産を取得した人が、配偶者・一親等の血族(父母・子)以外の場合は、その相続税額の2割に相当する金額が加算されますので留意しましょう。
出典
国税庁「相続税の計算と税額控除」
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。