更新日: 2021.11.30 控除

税制改正で新たに設置された「ひとり親控除」。具体的な内容や寡婦(夫)控除との違いは?

執筆者 : 新井智美

税制改正で新たに設置された「ひとり親控除」。具体的な内容や寡婦(夫)控除との違いは?
2020(令和2)年より新設された「ひとり親控除」。納税者がひとり親である場合、所得控除において一定の額を控除できる仕組みで、すでに適用された方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はこの「ひとり親控除」の概要と、以前からある寡婦(夫)控除との違いについて解説します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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ひとり親控除とは?

所得税の納税者本人が「ひとり親」に該当する場合、所得控除において一律35万円の控除が適用されることになりました。この控除のことを「ひとり親控除」といい、2020(令和2)年より適用されています。
 

■ひとり親に該当するための要件

この控除における「ひとり親」に該当するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

1.その年の年末時点で婚姻をしていない、または配偶者の生死がわからない
2.事実上の婚姻関係と同じ事情にあると認められるような人がいない
3.納税者本人と生計を一にする子どもがいること
4.合計所得金額が500万円以下

ちなみに生計を一にする子どもとは、その年のその子の総所得金額等が48万円以下で、他の人の扶養に入っていないことや、他の人の同一生計配偶者になっていないことが要件です。
 

寡婦控除とは?

納税者が寡婦であるときは、所得控除にて一定の額の控除を受けることができます。ちなみに2020(令和2)年以降の寡婦控除の額は27万円となっています。
 

■寡婦と認められるための要件

寡婦とは、その年の年末時点で「ひとり親」に該当しないことが要件です。そのうえで以下の要件のいずれかに該当する場合に、寡婦とみなされます。

1.夫と離婚した後、再婚しておらず、扶養親族がおり、合計所得金額が500万円以下である人
2.夫と死別もしくは生死が明らかでない場合において再婚しておらず、合計所得金額が500万円以下である人

この場合の夫とは、民法上の婚姻関係にある人のことをいい、また、その年の年末の時点で事実婚もしくは事実婚と同様の関係にあたる人がいる場合は、寡婦の対象となりませんので注意が必要です。
 

■改正前との変更点は?

ひとり親控除が創設されたことから、寡婦控除の対象者も変更となっています。改正前(2019(令和元)年)の寡婦の対象者は、その年の年末時点で以下のいずれかに当てはまる人となっていました。

1.夫と死別(生死が不明な場合を含む)もしくは離婚した後、再婚していない人で、扶養親族もしくは生計を一にする子ども(総所得金額等が38万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族となっていない人)がいる人
2.夫と死別(生死が不明な場合を含む)もしくは離婚した後、再婚していない人で、合計所得金額が500万円以下である人

また、寡婦控除額については、一般の寡婦と特別の寡婦に分かれており、一般の寡婦の場合は控除額が27万円であるのに対し、特別の寡婦の場合は35万円となっていました。特別の寡婦とは、以下のすべての要件に該当する人のことです。

1.夫と死別(生死が不明な場合を含む)もしくは離婚した後、再婚していない人
2.扶養親族である子どもがいる人
3.合計所得金額が500万円以下である人

 

寡夫控除とは?

税制改正前は、寡婦控除と寡夫控除とで要件や控除額が分かれていました。寡夫控除の場合の控除額は27万円となっており、寡婦控除のように一般と特別の区別はなかった点が異なります。さらに、改正前の「寡夫控除」については「ひとり親控除」移行され、改正後は「ひとり親控除」と「寡婦控除」の2つが存在することになった点も覚えておきましょう。
 

■寡夫の要件

寡夫控除を受けるにあたり、寡夫と認められるためには、以下の要件をすべて満たす必要がありました。

1.その人の合計所得金額が500万円以下であること
2.妻と死別(生死が不明な場合を含む)もしくは離婚した後、再婚していないこと
3.その人に生計を一にする子どもがいること

この場合の妻についても、民法の婚姻関係が要件となります。
 

まとめ

税制改正により、それまでの寡夫控除については2020(令和2)年から「ひとり親控除」としてまとめられています。ただし、寡婦控除については、継続して要件を満たすことで適用されることから、今後は「ひとり親控除」と「寡婦控除」が存続することとなります。寡婦控除の適用を受けるのは、あくまでも「ひとり親」に該当しない「寡婦」であることが要件ですので、「ひとり親」の要件をしっかりと理解しておく必要があります。
 
ちなみに、配偶者控除とひとり親控除は併用が認められています。あってはならないことですが、年の途中で妻が亡くなった場合、その年末に納税者がひとり親の要件を満たす場合は、配偶者控除とひとり親控除の両方が適用されることも覚えておきましょう。
 
出典
(※1)国税庁「ひとり親控除」
(※2)国税庁「寡婦控除」
(※3)国税庁「寡夫控除」
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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