更新日: 2021.12.07 その他税金

台風や大雨の被害を受けたときに知っておきたい。税金や社会保険料を減額する手続き

執筆者 : 新井智美

台風や大雨の被害を受けたときに知っておきたい。税金や社会保険料を減額する手続き
台風や大雨などで被害を受けた際に、受けることができる公的な支援制度があります。しかし、実際に被害を受けたことがない方は、どのような支援制度があるのか知らないということもあるでしょう。
 
とはいえ、実際に被害に遭う可能性はあると考え、どのような支援制度があるのかについて知っておくことが大切です。
 
今回は、災害時の公的支援制度にはどのようなものがあるのか、それらの具体的な内容についても併せて紹介します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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災害時に受けることができる公的支援制度

災害時に受けることができる公的支援制度には、以下のようなものがあります。
 

■経済・生活面の支援

1.給付その他

●災害弔慰金(市区町村)
●災害障害見舞金(市区町村)
●雇用保険の失業給付(職業安定所・労働局)
●未払賃金立替払制度(労働者健康安全機構・労働基準監督署)

2.融資・貸付

●災害援護資金の貸付(市区町村)
●生活福祉資金制度による貸付(社会福祉協議会)

3.猶予・免除など

●地方税の特別措置(都道府県および市区町村)
●国税の特別措置(税務署)
●医療保険の保険料および窓口負担の減免措置など(加入している保険制度の窓口)

 

■住まいの確保および再建のための支援

1.給付

●被災者生活再建支援制度(市区町村)

2.融資および貸付

●災害復興住宅融資(住宅金融支援機構)

3.現物支給

●公営住宅への入居および住宅の応急修理(都道府県および市区町村)

 

地方税の特別措置

災害により地方税である住民税を払えない場合は、「納付の猶予」「納付期限の延長」「減免」を受けることができます。
 
納付の猶予は、納付できないと認められた期間を限度とし、1年以内の期間で納付猶予を受けることができます。また、地方自治体は災害により、定められた納付期限までに地方税の納付が難しいと判断した際には、その自治体の条例に基づいて納付期限の延長ができるとしています。
 
さらに、災害によって受けた損害の程度と前年中の合計所得金額に応じて、8分の1から全額までの減免を受けることも可能です。
 

■特別措置を受けるための手続き

お住まいの市区町村の窓口となります。手続きには「(納税の)猶予申請書」もしくは「災害減免申請書」および、受けたい措置の申請書や「罹災(りさい)証明書」等が必要です。
 

国税における特別措置

前述で説明した地方税だけでなく、国税である所得税にも特別措置が設けられています。内容としては地方税と同様に「納付の猶予」「納付期限の延長」「減免」を受けることができるほか、「雑損控除」の制度が設けられています。
 

■納付の猶予・延長・減免

災害によって、納税者が資産に甚大な損害(全積極財産のおおむね20%以上の損失)を受けた際には、申請することにより納付期限から1年以内、所得税の全部および一部の納付を猶予できます。
 
また、猶予期間内に納付ができないやむを得ない理由がある場合は、すでに認められている猶予期間と合わせて2年を超えない期間内で、申請により猶予期間の延長を受けることができます。
 
さらに、災害によって受けた損害金額が、住宅および家財の50%以上で、その年の合計所得金額が1000万円以下の場合は、雑損控除との選択になりますが、その年分の所得税額の軽減もしくは免除を受けることができます。これを災害減免法による所得税の軽減免除といい、この方法で軽減される所得税額は、その年の合計所得金額によって異なり、4分の1~全額が適用されます。
 

■雑損控除

災害によって、資産に損害を受けた場合に受けることができる所得控除です。前述で紹介した「災害減免法による所得税の軽減免除」との併用はできず、どちらかの選択ですので注意が必要です。
 
ちなみに、雑損控除の額は以下の方法で計算した額のいずれか多いほうの金額となります。

1.(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
2.(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円

 

■特別措置を受けるための手続き

災害減免法の適用による、「納付の猶予」「納付期限の延長」を受けるためには、税務署に対して「源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予・還付申請書」を提出する必要があります。
 
また、災害減免法による所得税の軽減免除を受ける際には、確定申告書に「軽減免除の適用を受けること」と「被害の状況および損害金額」を記載し、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。
 
雑損控除の適用を受ける場合においては、確定申告書に雑損控除に関する内容を記載するとともに、災害に関連したやむを得ない支出の金額がわかる領収書などの書類を添付して提出します。雑損控除を選択した際、その損失額が多く、その年の所得税額から引き切れない場合は、翌年以降3年間を限度に繰り越して控除することも可能です。
 

社会保険料の減免制度

災害によって大きな被害を受けた方のために、国民年金保険料や国民健康保険料の減免や納付猶予の制度が設けられています。これらの内容および手続き方法は各自治体で異なりますので、お住まいの市区町村のホームページなどで確認するようにしてください。
 

まとめ

災害にあった際には、税金や社会保険料の納付におけるさまざまな特別措置が設けられています。対象が地方税なのか、国税なのか、あるいは社会保険料なのかによって窓口が異なりますので、これまで記載したような制度があることを覚えておくとよいでしょう。また、国税庁もしくはお住まいの自治体のホームページで制度の詳細を確認しておくこともおすすめします。
 
災害の際の特別措置を受けるためには、罹災証明書が必要となるケースがほとんどです。自治体の窓口で発行してもらいますが、その際には、被害状況がわかる写真の添付が必要になることがありますので、そのような資料も併せて用意しておくと安心です。
 
出典
(※1)国税庁「災害被害者に対する救済」
(※2)国税庁「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
(※3)沼津市 ホームページ
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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