更新日: 2021.12.29 控除

歯の矯正にかかった費用は医療費控除の対象になる? ならない?

歯の矯正にかかった費用は医療費控除の対象になる? ならない?
一般的に会社員であれば年末調整があるため、確定申告をする人はあまり多くないかもしれません。しかし、病院などにかかり医療費が多くなった場合などで、医療費控除を受けたいときには会社員でも確定申告が必要となります。
 
それでは歯の矯正にかかった費用などは医療費控除の対象となるのでしょうか?
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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医療費控除とは

病気やけがなどで医療費がかかった場合、その医療費を1年間(1月1日から12月31日)に一定額以上支払った場合に所得控除を受けられるのが医療費控除です。
 
会社員であれば給与から天引きされた所得税の還付が医療費控除によって受けられます。自営業者や個人事業主なども確定申告に医療費控除を反映させることで節税につながります。
 
この医療費は自分自身にかかった医療費だけでなく、生計を同一にしている家族がいる場合は、それら家族にかかった医療費も控除の対象とできます。例えば、1人暮らしの学生の子どものように同居していなくても生計が同一であれば対象となります。
 
還付対象の所得税は累進課税のため、家族のうちで一番所得の高い人が家族全員分の医療費もまとめて医療費控除を申告することで税負担の軽減効果を高めることができます。
 

医療費控除額はいくらになる?

医療費控除額は以下のように計算できます。
 
医療費控除額 = 医療費(保険金などで補てんされた額を除く) - 10万円(※)
※その年の総所得金額などが200万円未満の人は、総所得金額などの5%の金額
 
医療費控除額の上限は200万円です。保険金などで補てんされた額というのは、生命保険契約などで支給される入院給付金や健康保険などで支給される高額療養費・出産一時金などです。
 
保険金などで補てんされた額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きます。そのため、引き切れない分があっても他の医療費からは差し引きません。
 

医療費控除額の計算例

例として簡単に医療費控除額を求めてみます。まずは、医療費控除額を求める上での医療費を計算してみます。

●1回目の医療費(病気による入院。保険会社からの給付金は15万円)
医療費15万円= 入院費用30万円 - 給付金15万円
 
●2回目の医療費(けがによる入院・手術。保険会社からの給付金は15万円)
医療費0万円 = 入院・手術費用10万円 - 給付金10万円(※)

※入院・手術費用の10万円を限度として差し引くため
 
医療費合計15万円

医療費合計が計算できたら、次に医療費控除額を求めてみます。
 
医療費控除額 5万円 = 医療費15万円 - 10万円
 

医療費控除を受けるための申請方法

医療費控除を受けるために必要な手続きは、医療費の領収書から「医療費控除の明細書」を作成して確定申告書に添付して申請します。また、医療保険者から交付を受けた医療費通知がある場合は、その添付によって医療費控除の明細書の記載を簡略化できます。
 
2017年分の医療費からは確定申告書に医療費の領収書を添付する必要はなくなりました。ただし、医療費控除の申告に使用した領収書は、確定申告期限等から5年を経過する日までの間、提示または提出を求められる場合がありますので、5年間はしっかり保管しましょう。
 

歯の矯正にかかった費用は医療費控除の対象となる?

医療費控除の対象になるかどうかは、「治療または療養を目的とした医療費」であるかどうかが判断の基本になるといえます。医師による診療や治療だけでなく、治療や療養に必要な医薬品や医療器具などの購入費用、通院に必要な交通費なども対象となります。
 
治療や療養を目的としていることから、風邪をひいたときに治す目的で購入した風邪薬代は対象ですが、ビタミン剤など病気の予防や健康増進のための医薬品の購入代金は対象とはなりません。
 
歯の虫歯治療などにかかる費用も治療が目的ですから医療費控除の対象となります。しかし、保険のきかない自由診療によるものなど治療代が高額になるような場合や、一般的な水準を著しく超えると認められる特殊なものは医療費控除の対象とならない場合があります。
 
歯並びの矯正といった場合も、その目的により医療費控除の対象になるかどうか変わってきます。子どもの成長を阻害しないようにする目的で行うかみ合わせを正すための歯列矯正のような場合は、医療費控除の対象となります。しかし、同じ歯列矯正でも、成人が美容のために行うものは対象になりません。
 
医療費控除の対象とならないものには、他にも、予防注射の費用や自家用車での通院のためのガソリン代や駐車場料金、入院時に個人の都合で利用した差額ベッド代などがあります。
 

医療費控除は住民税の負担軽減にも

医療費控除は所得税の還付だけではなく、翌年の住民税の負担軽減にもつながります。医療費が多くかかったときは、忘れずに医療費控除を申告して税の軽減を受けるようにしましょう。
 
出典
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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