更新日: 2022.01.26 確定申告

医療費控除の対象になる費用は? どんな費用だと対象外?

執筆者 : 菊原浩司

医療費控除の対象になる費用は? どんな費用だと対象外?
医療費控除は一定の要件のもとで支払った医療費が控除の対象となり、適用を受けることで所得税・住民税が還付・軽減されます。医療費控除の対象となる医療費は、通常の医療費控除と医療費控除の特例である「セルフメディケーション税制」のどちらを選択するかによって異なります。
 
医療費控除を十分に活用するため、確定申告前に制度の仕組みを把握しておきましょう。
菊原浩司

執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

http://conserve-investment.livedoor.biz/

医療費控除の仕組みと適用方法

医療費控除は所得税・住民税に関する所得控除のひとつで、納税者自身と生計を同じくする配偶者・扶養親族に対して、その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費が10万円または総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%を超えた分が控除対象となります。
 
また、セルフメディケーション税制は、2026年12月31日までの医療費控除の特例として、制度の対象となる市販の医薬品を購入した場合、その購入金額が年間1万2000円を超えた金額が控除対象となるものです。
 
医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方を選択しての適用となりますが、いずれも傷病というセンシティブな情報に基づくため、勤務先が社員に代わって申告・納税を行う年末調整では適用することができず、自分自身で確定申告を行う必要があります。
 

医療費控除の対象になる費用は?

医療費控除の対象となるには一定の要件があり、医療に関する費用ならばどんなものでも対象となるわけではありません。対象とならない費用まで医療費控除に含んで確定申告を行ってしまうと修正申告を求められるばかりではなく、延滞税などのペナルティーの対象となってしまう恐れもあります。
 
医療費控除の対象となる費用は、基本的には病院や鍼灸(しんきゅう)師・柔道整復師などに治療のために支払った費用のほか、治療に必要な医薬品やコルセット・松葉づえといった医療用器具の購入代金も対象となります。
 
また、通院や入院に際しての公共交通機関による交通費や、医師の送迎費用、療養上の世話のために看護師など家族・親族以外の方が付き添って通院した場合の人件費のほか、介護保険による施設・居宅サービスの自己負担額も医療費控除の対象となります。
 
一方で、医療費控除の対象外となる費用として、自家用車を使ったガソリン代・高速道路代などの交通費やタクシー代(公共交通機関が使えない場合は除く)は対象外となります。この他にも健康診断費用やサプリメントやエタノール製剤といった予防を目的とした費用も医療費控除の対象外となります。
 
また、支払った金額が全て医療費控除となるわけではなく、生命保険の保険金などで補てんされた場合、その金額分を差し引く必要があります。
 
医療費控除は期間内に実際に医療費を支払うことが要件となっており、未精算のまま年をまたいだ場合はその年の医療費控除の対象とならず、翌年以降に実際に支払った年の医療費控除の対象となるため注意しましょう。
 

セルフメディケーション税制の対象になる費用は?

セルフメディケーション税制は、従来は医師による処方が必要であったもののうち、長年の使用実績があって比較的副作用も少ないため市販できるよう規制緩和された「スイッチOTC医薬品」の購入代金が対象となります。
 
スイッチOTC医薬品は薬ごとに判定されるため、同じメーカーで似たような薬効・名称であってもスイッチOTC医薬品に分類されていない場合もあります。
 
また、対象となる医薬品は定期的に見直されているため、購入していた医薬品が対象外となってしまうこともあるので購入前に確認しましょう。
 

まとめ

医療費控除は病院などに支払った医療費のほかに交通費や介助を依頼した場合の人件費も含まれます。控除対象となる金額は納税者の所得額にもよりますが、基本的に10万円を超えた分が控除対象となるため、適用を受けるには比較的多額の医療費を支払う必要があります。
 
これに対し、セルフメディケーション税制は、医薬品の中でもスイッチOTC医薬品の購入代金のみが対象となるため、対象範囲が比較的狭いですが、1万2000円を超えると適用を受けることができます。
 
医療費控除はどちらか一方のみが適用となるため、入院などで多額の医療費を支払った場合は医療費控除を活用するなど、自身の医療費の支出内容に沿って利用する制度を決めるとよいでしょう。
 
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表

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