日本の消費税、滞納額はどれくらい?
配信日: 2022.02.05
実際に、事業者が、経営資金を確保しながら消費税の納税をしていくことは、バブル景気崩壊後30年が経過した現在でも厳しい経営環境が続いている中で、大変なことです。
その事業者が消費税を滞納してしまう背景について、いくつかの要因と滞納の回避につながる方策についてみていきましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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租税滞納状況から見える、滞納が最も多いのは身近な消費税だという事実
事業者の税金の滞納という話を聞いたときに、すぐに思いつくのは所得税や法人税なのではないでしょうか。
実は、国税庁が公表している「令和2年度租税滞納状況について」から、令和2年度に発生した税金の滞納についての「新規発生滞納額」を見ると、所得税や法人税をおさえて、消費税が突出して多い状況となっています。
このように多額の消費税の滞納が発生してしまう原因については、納税額の計算が簡単ではないことや、納税のタイミングが限られていること、消費者が物やサービスといった商品の購入時に支払う消費税の事業者における取り扱いの問題といったことがいわれています。
ところで、消費税が導入された平成元年からの消費税の新規発生滞納額の推移を見てみると、平成10年に新規発生滞納額がピークとなり、それ以降の20年間の推移は、滞納額の多少の増減はあるものの、基本的に減少傾向で推移していました。
ちなみに、直近の3年の消費税の新規発生滞納額を見てみますと、平成30年度の3521億円、令和元年度の3202億円、令和2年度では3456億円となっており、平成10年のピーク時から比べると、半分程度にまで減少している状況となっています。
消費税の納税の仕組みが、事業者が滞納してしまう一因にもなり得る背景
「国税のうちで、滞納額が一番大きいのは消費税である」と聞いて、消費者の側からしてみると「自分たちは買い物のたびに払っているけどなあ?」と思われる方も少なくないかもしれません。これには、消費税が「間接税」であることが関係しています。
中学生の社会科の授業で教わった「直接税」と「間接税」ですが、このうちの間接税とは、税金を負担する人と、国や地方自治体に税金を納める義務のある人とが異なるという特徴を持っています。
すなわち、物やサービスといった商品にかかる税金を実際に負担しているのは、それらを購入した消費者であること、そして、商品価格と消費税とを合わせて販売した結果の売り上げから、税金分を計算して納税するのは事業者ということとなります。
このような消費税の仕組みを踏まえると、消費税滞納の原因には事業者の対応ミスや納税意識の不足が関係していることが見えてきます。
実際、事業者が消費税を滞納してしまう原因となるのは、例えば経理業務で税込経理方式か税抜経理方式を採用することになるのですが、消費税額の計算が正確にできないなどで滞納が発生してしまう場合や、事業者が消費税の納税を、所得税や法人税が赤字となった場合に納税をしなくてもよいことと同様にとらえてしまい、滞納してしまう場合があるようです。
この他にも、納税すべき消費税相当額を、仕方なしに企業の運転資金に流用してしまうケースが多いということもあります。このように、消費税の滞納をしてしまう原因は事業者ごとの事情で異なります。しかし、事業者側では滞納という状況を改善していかなくてはなりません。
滞納対策として考えられる方法としては、経理方式にもよりますが、あらかじめ納税に必要な資金を確保すること、それができるよう経理上の処理を通して資金確保の見通しを立てることが挙げられます。
事業者が「消費税」の納税の義務を果たしていくこと
「消費税」の納税義務は事業者が負っていて、お店で消費税を払っている消費者が負うものではありません。
平成10年以降の新規発生滞納額は、なだらかに減少してきました。この間にも、消費税8%から10%への増税への対応など、経営に厳しい状況がありましたが、事業を担う経営者の義務を果たすための努力と、経営改善を継続的に行っていることも関係しているといえます。
出典
国税庁 令和2年度租税滞納状況について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部