更新日: 2022.03.03 確定申告

転職した人は確定申告が必要? ケース別に解説

転職した人は確定申告が必要? ケース別に解説
会社の年末調整で所得税の納税を完結している会社員の多くは、確定申告の必要はありません。しかし、これは転職をした方にも当てはまるのでしょうか。
 
実は転職をした場合、確定申告が必要なケースと、不要なケースがあります。この記事では、転職した方の確定申告の必要性の有無について解説します。
遠藤功二

執筆者:遠藤功二(えんどう こうじ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)

三菱UFJモルガン・スタンレー証券とオーストラリア・ニュージーランド銀行の勤務経験を生かし、お金の教室「FP君」を運営。
「お金のルールは学校では学べない」ということを危惧し、家庭で学べる金融教育サービスを展開。お金が理由で不幸になる人をなくすことを目指している。

年末調整とは

年末調整とは、会社が従業員の給与から源泉徴収する所得税と復興特別所得税(以下、所得税等)の1年間の合計額が、適正な税額になるように調整をすることです。毎月の給与から源泉徴収されていた金額が多過ぎる方は、税金として徴収されていたお金が還付されます。
 
例えば、生命保険に加入している方は生命保険料控除、iDeCoなどの確定拠出年金に個人で掛け金を支払っている方は小規模企業共済等掛金控除といった所得控除を利用できます。その他にも配偶者控除、寄附金控除などもあり、所得控除は多岐にわたります。
 
所得控除を利用することで実際に納めるべき所得税等の金額が、源泉徴収されていた金額よりも少なくなり、還付を受けられたという経験がある方は多いと思います。
 
また、住宅ローン控除の対象となる住宅ローンがある方で、1年目に確定申告で住宅ローン控除を申請している方は、2年目以降の控除は年末調整で完了します。
 

確定申告が不要なケース

年末調整の役割を理解した方は、「転職をした場合、前の会社で源泉徴収された所得税等は引かれたままになり、確定申告をしないと支払った所得税等の超過分の還付は受けられないのではないか」と心配になると思います。
 
実は年末調整を行う会社は、転職してきた方が別の会社で給与の支払いを受けたことで、源泉徴収されている所得税等が存在するのかどうかを確認することになっています。
 
転職した方が「給与所得の源泉徴収票」を提出することで、転職先の会社は、その方が以前の会社で源泉徴収された所得税等の金額を知ることができます。
 
そして転職先の会社は、自社が源泉徴収した所得税等の金額と、転職してきた方が以前に勤めていた会社で源泉徴収されていた所得税等の金額を合わせて、年末調整の計算をすることになります。そのため、確定申告は不要です。
 

確定申告が必要なケース

年末調整の手続きは、通常11月~12月に行います。転職のタイミングがそれらの時期と重なっている方は、年末調整の締め切りまでに「給与所得の源泉徴収票」を転職先に提出できない可能性があります。この場合には、確定申告が必要になります。
 
また、退職をした後、同じ年内中に次の職に就かない場合は、年末調整が行われないことになります。このような場合も確定申告が必要です。
 

住民税は特別徴収先を変える

確定申告は所得税の申告手続きですが、転職をした場合の住民税の納付手続きについても確認しておきましょう。
 
給与所得者で住民税が特別徴収となっている方は、1年分の住民税を毎月の給与天引きで納付しています。住民税の特別徴収の納付期間は、毎年6月から5月にかけての12ヶ月間です。
 
転職をする場合は、住民税を特別徴収する会社を変更することで、転職前と同様に転職先でも給与天引きで住民税を納付できます。手続きは以下のとおりになります。


1. 転職前の会社から給与所得者異動届出書を受け取る
2. 転職先の会社に給与所得者異動届出書を提出する
3. 転職先の会社が給与所得者異動届出書を自治体に提出する

なお、退職によって給与所得者でなくなる方は、特別徴収を選択することはできませんので、一括徴収または普通徴収といった形で住民税を納付することになります。
 
一括徴収は、退職した会社が特別徴収による残りの期間分の住民税を、納税者本人から一括で徴収する方法です。また、普通徴収は納税者本人が自治体から届く納税通知書で納付する方法で、退職時期によっていずれかが選択肢となります。
 

まとめ

ここまで解説したとおり、転職をすると所得税においては確定申告、住民税においては一定の手続きが必要となるケースがあるため、必ず確認をしておきましょう。
 
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.2674 中途就職者の年末調整
大田区 給与所得者(サラリーマン)の方を対象とした特別徴収
 
執筆者:遠藤功二
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)

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