更新日: 2022.03.23 その他税金
外国で給料を得た場合、日本でも所得税を支払う必要はある?
外国で受け取った給与に関しては、日本の所得税がかかるケースと、かからないケースがあります。この記事では、外国で得た給与の税制上の取り扱いについて解説します。
執筆者:遠藤功二(えんどう こうじ)
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券とオーストラリア・ニュージーランド銀行の勤務経験を生かし、お金の教室「FP君」を運営。
「お金のルールは学校では学べない」ということを危惧し、家庭で学べる金融教育サービスを展開。お金が理由で不幸になる人をなくすことを目指している。
日本で所得税の納税義務がある人
日本の所得税の納税義務者は、居住者、非居住者、内国法人、外国法人に分けられます。海外赴任などにより「外国で給与を得た人」は、このうちの居住者または非居住者に該当します。
居住者は「非永住者」と「非永住者以外の居住者」に分けられますが、非永住者とは日本に国籍がなく、過去10年間のうちの日本の居住期間が5年以下の方を指すため、日本で生まれ育ったという場合、ほとんどが「非永住者以外の居住者」となるでしょう。
この記事では、「非永住者以外の居住者」と「非居住者」のケースに絞って解説します。
非永住者以外の居住者が外国で給与を受け取った場合
非永住者以外の居住者は、国内だけでなく、国外で生じた所得に関しても所得税の課税対象として納税義務を負います。つまり、外国で受け取った給与も日本の所得税がかかるということです。
例えば、非永住者以外の居住者の方が1年未満など短期的に海外赴任となり、現地の会社から給与を受け取った場合は、日本の所得税の課税対象になります。
また、日本国籍がある方が非居住者とされる1年以上の期間の海外赴任から帰国し、居住者になった後に外国の会社から給与を受け取った場合は、海外の銀行口座での受け取りだったとしても、日本の所得税の計算上の所得に含めなければならない可能性が高いといえます。
外国税額控除の取り扱い
上記の例のように、非永住者以外の居住者が外国の会社から給与を受け取る際には、現地の国でも所得税などの税金が課税されている可能性があります。その場合、外国と日本で1つの給与所得に対して2重に税金が引かれていることになります。
2重課税による納税者の負担を軽減するために、外国で受け取った給与がある方は、一定の金額を所得税の計算上の所得から引くことができます。これを外国税額控除といいます。外国税額控除の計算式は以下のとおりです。
外国税額控除の金額=所得税額×(調整国外所得金額/所得総額)
所得税額とは、住宅ローン控除などの税額控除を引いた後の税額のことをいいます。また、所得総額と調整国外所得金額は、各種控除(例:純損失、雑損失など)を適用する前の所得金額で計算を行います。
調整国外所得金額が所得総額より高い場合は、調整国外所得金額を所得総額として計算するため、「調整国外所得金額/所得総額」の数字は最大値が1となります。
非居住者が外国で給与を受け取った場合
国税庁のウェブサイトによると、所得税法上の居住者とは以下のように定義されています。
●国内に住所を有する方
●国内に引き続き1年以上居所を有する方
住所は生活の中心がどこなのかで判定され、居所は本拠ではなくても現実に居住している場所を指します。非居住者とは、居住者以外の方のことをいうので、海外居住期間が1年未満の予定となっている方を除き、数年間の海外赴任をしている場合のほとんどは非居住者に該当します。
非居住者は国内源泉所得のみが課税の対象となっているので、外国で給与を受け取った場合は、日本国内の所得税を納める必要はないと考えられます。
まとめ
外国で収入を得た方が、その国で納税をしている場合、つい日本の所得税の納税義務はないものと勘違いしてしまう可能性があります。日本の居住者に該当する方は、国内外の所得のすべてが日本の所得税の課税対象になると覚えておきましょう。
出典
国税庁 No.1920 海外勤務と所得税額の精算
国税庁 No.2518 海外出向者が帰国したときの年末調整
国税庁 No.2010 納税義務者となる個人
国税庁 No.2875 居住者と非居住者の区分
国税庁 No.1240 居住者に係る外国税額控除
執筆者:遠藤功二
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)