更新日: 2022.04.06 控除

学費を自分で稼ぐなら知っておきたい「勤労学生控除」。その対象とは?

学費を自分で稼ぐなら知っておきたい「勤労学生控除」。その対象とは?
学生であっても、親からの仕送りを受けることができず、働いて収入を得なければならない人もいます。そのような人のための所得控除として、「勤労学生控除」が設けられており、基礎控除とは別に適用を受けることができます。
 
この「勤労学生控除」の適用を受けるためには、一定の要件を満たす必要がありますが、その要件とはどのようなものなのでしょうか。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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勤労学生控除

一定の所得がある人は、その所得に応じた所得税を納めなければなりません。しかし、その納税者本人が勤労学生であるときには、一定の控除が認められています。控除の額は27万円で、所得控除の対象となります。
 

勤労学生控除を受けるための要件

勤労学生控除は、働いている学生すべてが受けられるわけではなく、以下の要件すべてを満たす必要があります。
 
勤労学生控除の適用を受けるには、その年の12月31日時点で、

1.就労による所得がある(給与所得など)
2.本人の合計所得金額が75万円以下であり、かつ、就労による所得金額以外の所得が10万円以下である
3.特定の学校に在学している学生もしくは生徒である

 

■特定の学校とは

要件の1つである「特定の学校」とは、以下に当てはまるものを指します。

1.学校教育法に規定されている学校(小中学校や高等学校、大学や高等専門学校など)
2.学校法人などにより設置された専修学校(一定の過程を履修させる学校も含む)
3.認定職業訓練を行う職業訓練校で一定の過程を履修させるもの

 

■一定の過程とは

履修すべき一定の過程については、以下のように定められています。

●職業に必要な技術を身につける目的であること
●修業期間が1年以上あること(場合によっては2年以上が要件となる)
●その年の1年間の授業時間が800時間もしくは680時間以上であること(夜間の場合は年間450時間以上、かつ、就業期間を通じて履修時間が800時間以上)
●授業期間が2年を超えない一定間隔で行われ、かつ、終了時期が明確となっていること

 

控除を受けるためには申請もしくは確定申告が必要

勤労学生控除を受けるためには、勤務先に対し「扶養控除等(異動)申告書」(給与所得者の場合)を提出し、控除の適用を受けるか、自身で確定申告を行う必要があります。
 
また、通っている学校が専修学校や職業訓練校の場合は、在学する学校の校長から必要な証明書を受領(ずりょう)し、申告書に添付する必要があります(給与所得者で、年末調整で控除を受けた場合を除く)。
 

勤労学生控除の適用を受けることでどのくらいの節税になる?

勤労学生控除の適用を受けることで、所得控除の額が増え、最終的な課税所得金額を抑えることができます。
 
例えばアルバイトをしており、年間に180万円の給与収入があった場合、所得税の計算は以下のとおりです。
 
給与収入180万円-給与所得控除額62万円=118万円
 
ちなみに学生の場合は、原則として健康保険や厚生年金保険へ加入できないことから、社会保険料の負担は発生しません。したがって、課税所得金額は、給与所得118万円-(基礎控除48万円+勤労学生控除27万円)=43万円です。
 
課税所得金額43万円に対する税率は5%ですので、2万1500円の所得税を納めることになります。
 
仮に勤労学生控除が適用されなかった場合の課税所得金額は77万円となり、所得税額は3万8500円です。勤労学生控除が適用されることで1万3500円の節税効果が生まれます。
 

学生でも雇用保険への加入は可能

前述のように、学生の場合は原則として健康保険や厚生年金保険への加入はできません。
 
しかし、雇用保険への加入については、就労状況しだいで認められることがあります。ちなみに雇用保険の加入条件は以下のとおりです。

●1週間の所定労働時間が20時間以上であること
●31日以上の雇用見込みがあること

さらに、卒業後もその企業で勤務する予定であり卒業見込証明書があることや、休学中であれば、雇用保険への加入が可能です。
 
雇用保険に加入することで、失業中の生活が保障されるなどといったメリットがあります。雇用保険料は勤め先の業種によって決められており、負担割合は事業主の方が多く設定されています。
 

まとめ

勤労学生控除は、納税者本人が勤労学生の要件に当てはまる場合に適用されます。
 
したがって、自身がその要件に当てはまるかどうかを事前に確認しておきましょう。特に専修学校や職業訓練校などは、場合によっては要件に当てはまらない可能性もあります。
 
もし、自身が通っている学校が要件の1つである「特定の学校」に当てはまるかどうか不安に思った場合は、通っている学校の窓口で「特定の学校」に当てはまっているかどうか確認しておきましょう。
 
そして、適用を受ける際には、年末調整で行うか、確定申告のいずれかを選ぶ必要があり、場合によっては学校が発行する証明書の提出が求められますので、事前に準備しておくことをおすすめします。
 
出典
(※1)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1175 勤労学生控除
(※2)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1410 給与所得控除
(※3)厚生労働省 令和3年度の雇用保険料率について 〜令和2年度から変更ありません〜
(※4)厚生労働省 Q&A〜事業主の皆様へ〜
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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