更新日: 2022.04.08 その他税金
ユニセフやNHKなどへの寄付には税制上の優遇が受けられることも。払った金額に対していくら戻ってくる?
しかし、災害時の被災者救護や新型コロナウイルスなどの感染症拡大防止への対応など、あらゆる国や地域でさまざまな支援が必要とされています。
支援団体がこうした活動を継続するための資金は「寄付」で賄われています。ユニセフやNHKなど特定の支援団体に対し「寄付」をおこなった場合には、税制上の優遇を受けられることがあります。
どんなときに、どのくらい戻ってくるのでしょうか。検証してみましょう。
執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)
CFP🄬認定者・相続診断士
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/
日本は「冷たい国」? 「寄付」で社会貢献という選択肢
2021年版世界寄付指数(World Giving Index 2021 イギリスのチャリティー団体Charities Aid Foundation発表)によると、ここ数ヶ月以内に「寄付」を行ったかどうかのアンケート調査の結果、インドネシアが前回調査から引き続き世界第一位となり、日本は調査対象のうち最下位でした(※1)。
「市民団体が少ない」、「国の対策に対する期待が高い」などが要因として指摘されています。決して、冷たい国ということではなく、「寄付をする」という文化が根付いていないというのが実情かもしれません。
ただ、2008年に「ふるさと納税制度」が登場し、少しずつ「寄付」に対する認知度が上がっているようです。地方活性化を目的とした「ふるさと納税」は、特定の自治体に寄付をすることで、寄附金控除の対象となり、所得税の所得控除、住民税の税額控除(特例控除)により税負担の軽減が可能です。寄付先からの返礼品があるのも人気の要因とも言えます。
一方で、国内外の貧困や災害に対する支援活動への「寄付」は、実は以前から募集されてきました。NHKが中央共同募金会と共催で実施する「歳末たすけあい」は、目や耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
「NHK歳末たすけあい」は、中央共同募金会を通じて、国内の支援を必要とする子どもたちや体の不自由な方々、介護を必要とするひとり暮らしのお年寄り、福祉施設などに助成されています。
同様に「NHK海外たすけあい」は日本赤十字社を通じて、世界各地の紛争や自然災害、病気などに苦しむ人々のため、海外における救援事業や長期的な視点に立った開発協力事業に役立てられます。
いずれも、寄付金額から一定額(2000円)を差し引いた金額について、税制上の優遇(所得税や住民税の負担軽減)が適用されます。
特定寄附金の支出による税制優遇の適用
国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合には、寄附金控除(所得控除)が適用され、課税所得が下がるため、結果として税額も下がります。寄附金控除として認められるためには、指定の団体(特定寄付金に該当する団体)に寄付をすることが条件です(※2)。
また、個人が支出した(1)政治活動に関する寄附金のうち政党もしくは政治資金団体に対する寄附金、(2)認定NPO法人等に対する寄附金、(3)公益社団法人等に対する寄附金については、
・寄附金控除(所得控除)の適用を受けるか、
・寄附金特別控除(税額控除)の適用を受けるか、どちらか有利な方を選ぶことができます。
年間寄付金額や所得税率によりますが、一般的には「税額控除」を選択するほうが、所得税額が少なくなります。いずれも勤務先などで行う年末調整では寄付金控除を受けることはできないため、確定申告が必要です。
前述の「歳末たすけあい(中央共同募金会)」「海外たすけあい(日本赤十字社)」は、いずれも、寄付金特別控除(税額控除)の適用が可能です。そのほか該当する団体として、ユニセフ(国際連合児童基金)なども聞いたことがあるのではないでしょうか。
ユニセフは、すべての子どもの命と権利を守るため、保健・栄養・水と衛生・教育・保護・緊急支援などの活動を行っています。
寄付をした際に受け取る領収証には「寄付金特別控除(税額控除)の対象となる」旨が記載されていることが一般的ですが、不明な場合には、寄付先団体のWebサイト等で確認してください。
税制上の優遇ってどのくらい戻るの?
特定の寄付をした場合、税制上の優遇がどのくらい受けられるのか、それぞれの場合で見てみましょう。
■寄附金控除(所得控除)…所得金額から差し引くことのできる控除
所得税率は所得金額により異なるため、所得金額が高いほど、節税の効果が大きいと言えます。
■寄附金特別控除(税額控除)……所得税から差し引くことのできる控除
■個人住民税
住所地の都道府県・市区町村が条例で指定する寄付金である場合には、個人住民税の寄附金税額控除の対象となります。団体により、都道府県のみに指定される場合、市区町村のみに指定される場合、いずれにも該当など異なる場合がありますのでホームページなどで確認が必要です。
思いが届きますように。寄付先は信頼できる団体を選ぶ
確定申告を行う際には、受領証(領収証)の添付が必要となるため、確実に受け取り、紛失しないよう注意が必要です。(Web上でダウンロードできる場合もあります。)
なお、「寄付」といえども、進学時の学校に対する寄付、寄付をした人に特別の利益が及ぶと認められるもの、政治資金規正法に違反するものなどは、税制上の優遇はありません。
誰もが笑顔になれることを願い、寄付することは素晴らしいことです。そのためにも、確実に必要とする人に届くよう信頼できる寄付先を選ぶことも大切です。そうした意味もふまえて、特定寄付金に該当する団体への寄付は有効な選択肢と言えます。
出典
(※1)Charities Aid Foundation World Giving Index 2021(2021年版世界寄付指数)
(※2)総務省 個人住民税における寄附金税額控除の対象寄附金
(※3)国税庁 寄附金を支出したとき
参考
NHK NHK歳末たすけあい・NHK海外たすけあいQ&A
赤い羽根共同募金(中央共同募金会) 寄付金の税制優遇
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士