6月からの改正 「寡婦(夫)控除のみなし適用」 不公平の解消へ
配信日: 2018.03.15 更新日: 2021.06.21
厚労省の調査では、全母子世帯に占める未婚の母親世帯は2016年で8.7%、死別による母子世帯(8%)を上回っています。
母子世帯の母の年間就労収入は、死別が168万円、離婚が205万円に対し、未婚は177万円となっています。未婚に対する支援は薄く、同じ「ひとり親」の不公平の解消が問題になっているのです。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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寡婦(夫)控除とは
寡婦(夫)は所得税法で、配偶者と死別または離婚して扶養親族がいる者などとされています。
寡婦(夫)控除とは、所得税法上の一定の要件に当てはまる場合に受けることができる所得控除のひとつです。
●寡婦控除
寡婦とは、納税者本人(女性)が、原則としてその年の12月31日時点で、次のいずれかに当てはまる人のことを指します。「夫」とは、民法上の婚姻関係をいいます。控除できる金額は27万円です。
・夫と死別し、若しくは離婚した後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族がいる人または生計を一にする子がいる人です。この場合の子は、総所得金額等が38万円以下で、ほかの人の控除対象配偶者や扶養親族となっていない人に限られます。
・夫と死別した後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人です。この場合は、扶養親族などの要件はありません。
寡婦に該当する人が、さらに次の要件のすべてを満たすときには、寡婦控除額27万円とは別に、8万円を控除することができます(特定寡婦控除)。
・夫と死別し、または離婚した後婚姻をしていない人や夫の生死が明らかでない一定の人。
・扶養親族である子がいる人。
・合計所得金額が500万円以下であること。
●寡夫控除
寡夫とは、受給者本人(男性)が、原則としてその年の12月31日時点で、次のすべての要件に当てはまる人のことを指します。控除できる金額は27万円です。
・合計所得金額が500万円以下であること。
・妻と死別し、若しくは離婚した後婚姻をしていないこと又は妻の生死が明らかでない一定の人であること。
・生計を一にする子がいること。この場合の子は、総所得金額等が38万円以下で、ほかの人の控除対象配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。
未婚のひとり親への寡婦(夫)控除の「みなし適用」とは
各地方自治体では、利用者の所得によって、保育所の保育料・公営住宅の家賃・社会福祉施設の利用可否などが異なっています。
現行では、未婚のひとり親については法律上の定めがなく、寡婦(夫)控除の恩恵を法律上受けられません。
東京都内で「みなし適用」を実施した某市の試算によると、年収約201万円で2歳の子どもがいる未婚ひとり親の場合、「みなし適用」により保育料が年額約13万円安くなります。
このような、ひとり親の不公平を解消するため、自治体では未婚でも寡婦(夫)と見なして独自に支援しており、この動きが広まっています。
厚労省もこのような自治体での取り組みを受け、政令で、2018年6月より寡婦(夫)の「みなし適用」を、保育料の軽減、児童扶養手当の支給基準緩和、高等訓練促進給付金の増額、難病医療費の自己負担軽減などに拡大していきます。適用を受けるには申請が必要です。
ただし、所得税の寡婦(夫)控除、住民税の寡婦(夫)控除、国民年金保険料の減免などは、「寡婦」の定義を法律で改正しなければならないので、今回は見送られました。
法改正には、「結婚して出産するという伝統的な家族観」と関わるので改正は難しいでしょう。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。