【1億円の壁】とは? 金融所得課税が引き上がる問題をFPが解説
配信日: 2022.06.28
改めて金融所得課税について解説しながら、生活に与える影響を併せて紹介します。
執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)
2級ファイナンシャルプランナー
金融所得課税とは?
金融所得課税とは、株式や投資信託で得た所得にかかる税金です。金融所得課税には以下2つの特徴があります。
株式や投資信託といった「金融商品」にかかる税金
どれだけ金融所得が増えても負担する税率は変わらない
金融所得に対する税率は、一律20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)となっています。特徴は金融所得がどれだけ高くても、負担する税率は同じ点です。
反対に、給与や事業で得た収入は「累進課税」が採用されます。所得が増えるほど税率も増えていく制度で、最も高い税率が45%です。
【図表1】
給与所得 | 金融所得 | |
---|---|---|
税率 | 5%~45% | 20.315% |
総合課税or分離課税 | 総合課税 | 分離課税 |
出典:国税庁 「所得税の税率」より筆者作成
金融所得課税で問題になっている「1億円の壁」とは?
「1億円の壁」とは、所得税の負担率が所得1億円をピークに下がる現象です。通常は所得が高いと税の負担率も上がる「累進制」をとっています。しかし、1億円を超えている富裕層は税率が20.315%に固定されている「金融所得」を増やそうとします。
結果的に金融所得が増えても一律の税率なので、図表2にあるように1億円を超えると税負担率が28.8%から減少し始めます。
【図表2】
出典:内閣府 「第19回税制調査会 財務省説明資料(個人所得課税)」
1億円を越える所得者の税負担率が減少している背景は、株式や投資信託への取り引きによって利益を出している富裕層が多い点です。こうした制度を変更するべく、金融所得課税を見直す言及をしています。
金融所得課税が引き上がるとどんな問題が起きる?
現段階では金融所得課税を見直す方法として、以下の方法を検討しています。
・総合課税に含めて給与などと合算して考える
・利益に応じて金融所得の税率を変える
金融所得課税が引き上がると、日常の生活でも大きな影響が起こる可能性が示唆されています。税率が現状の20.315%から引き上がると、売却しようとする人が増えるでしょう。
金融所得課税は今後の動向に注目すべき経済政策
金融所得課税が引き上がると、資産形成のために投資をしている一般投資家が株式市場から離れてしまう懸念があります。株式への投資額が減ってしまうと、株価の下落や起業家の資金集めが上手くいかない問題につながる可能性もあるでしょう。
iDeCo(イデコ)やつみたてNISA(ニーサ)といった機関投資への投資も控える形になると、政府が掲げている「貯蓄から投資に」という目標に逆らうことになります。金融所得課税を巡る今後の動向に注目していきましょう。
出典
国税庁 株式・配当・利子と税
国税庁 No.2260 所得税の税率
内閣府 第19回税制調査会 財務省説明資料(個人所得課税)
金融庁 金融所得課税の一体化に向けての論点と在り方
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー