更新日: 2023.06.01 控除

年収によって住宅ローン控除額は変わる! 「30万戻ってくる」はどこまで本当?

年収によって住宅ローン控除額は変わる! 「30万戻ってくる」はどこまで本当?
「住宅ローン控除」は、マイホームを検討したことがある人であれば、ほとんどの人が聞いたことがあるのではないでしょうか? そして、「30万円戻ってくる」という情報を聞いたことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか?
 
これは間違っているわけではありませんが、必ず30万円戻るわけではない点に注意しなければなりません。
 
今回は、住宅ローン控除の仕組みを簡単に知り、なぜ30万円戻るとは限らないかについて理解していきましょう。
FINANCIAL FIELD編集部

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住宅ローン控除とは

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを取得し、一定要件に該当する場合に適用を受けられる制度で、所得税と住民税が軽減されます。
 
住宅ローン控除というのは通称であり、正式名称は「住宅借入金等特別控除」といいます。
 

住宅ローン控除の金額

住宅ローン控除の金額は、年末時点での住宅ローン残高の1%です。
 
例えば、住宅ローンの年末残高が4000万円だった場合には、その年分の所得税から40万円が控除されます。40万円よりも所得税の方が少なかった場合には、控除しきれなかった金額は住民税から控除されます。
 
所得税の計算では、所得から差し引くことができる所得控除と、税額から直接差し引くことができる税額控除がありますが、住宅ローン控除は税額控除に該当します。
 
控除額は住宅ローンの年末残高の1%という高額さに加えて、所得税から直接差し引ける税額控除であることから、非常に高い節税効果があります。
 
なお、令和4年1月1日以降の入居については、税制改正により0.7%となっている点に注意しましょう。ただ、現時点では住宅ローン控除1%の人が多いことと、計算の便宜上から、1%を前提に解説を進めます。
 

住宅ローン控除を受けられる期間

住宅ローン控除が受けられる期間は、原則として次のとおりです。
 
税制改正によって令和4年1月1日以降の入居分については、控除率が0.7%に下がり、控除期間は13年間(中古住宅は変更なく10年間)に伸びています。
 
【図表1:住宅ローン控除まとめ】

項目 入居日
令和3年12月31日まで 令和4年1月1日から
控除率 1% 0.7%
控除期間 10年 13年

国税庁 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)より筆者作成
 

所得税は年末調整で戻る

会社員の所得税は毎月の給与から源泉所得税が天引きされ、年末調整で精算されて払い過ぎた分が還付されます。12月に受け取る給与がいつもより多いのは、年末調整の還付が含まれているためです。
 
源泉所得税は基本的に多めに設定されていることから、多くの人は還付になりますが、支払いが足らない場合には徴収されます。
 
住宅ローン控除は年末調整に含めて計算してもらえるため、所得税は給与に上乗せされる形で戻ってきます(住宅ローン控除を初めて受ける年だけ確定申告になります)。
 

住民税の給与天引き額が減る

住民税は、事前に概算額が天引きされた後に精算する所得税とは違い、1年分が6月~翌年5月の給与から天引きされる仕組みになっています。要するに、所得税は前払いした後に精算、住民税は確定分の後払いなのです。
 
よって、住宅ローン控除によって軽減された住民税は、所得税のように還付されるわけではなく、翌年支払うことになる住民税から差し引かれる形になります。
 

「30万円戻ってくる」の意味


 
さて、住宅ローン控除を簡単に解説したうえで、本題である「30万円戻ってくる」の意味について解説します。
 
30万円というのは、住宅ローンの年末残高が3000万円の場合における住宅ローン控除額(3000万円×1%=30万円)のことを指しています。「所得税と住民税から30万円差し引くことができます」という意味です。
 
もちろん30万円というのは3000万円の場合であって、4000万円のマイホームを検討している場合には40万円、2000万円であれば20万円という話になるでしょう。確かに、30万円も年末調整で戻ってくるのだとしたら心動かされるのは当然です。
 
しかし、それでは少し理解が足らないため注意しなければなりません。
 

戻る所得税は源泉所得税が限度

上で解説したとおり、年末調整で還付される所得税は、1月1日から12月31日までの間に天引きされた源泉所得税のうち、支払い過ぎた部分の金額です。よって、住宅ローン控除が30万円あったとしても、源泉所得税が10万円の場合には、還付される税額は10万円なのです。
 
年収に対する所得税額は一概にはいえませんが、年収500万円の場合は14万円程で、30万円の還付を受けられる年収となると、700万円以上になります。
 
ただ、ここで控除しきれなかった20万円は住民税の方から控除される流れになるため、まだ終わりではありません。
 

住民税には控除限度がある

所得税で控除しきれなかった住宅ローン控除の残額は、住民税から控除されます。ただし、居住した年に応じた限度額が設けられているため注意しましょう。
 
【図表2:住民税の控除限度額】

令和3年12月31日以前に居住した人 令和4年1月1日以降に居住した人
・所得税の課税総所得金額等の7%
・13万6500円
いずれか小さい金額
・所得税の課税総所得金額等の5%
・9万7500円
いずれか小さい金額

筆者作成
 
例えば、所得税の方で控除しきれなかった住宅ローン控除が20万円だった場合には、最高でも13万6500円または9万7500円しか控除できないということです。
 
住民税でも控除しきれなかった住宅ローン控除残額は、ここで捨てになります。翌年に繰り越されるなどの配慮はありません。
 

まとめ

住宅ローン控除で戻ってくる所得税は、源泉所得税の金額が限度になります。
 
年収700万円以上になると30万円程の還付になる可能性がありますが、一般的な年収の会社員であれば10万円から20万円の間がほとんどでしょう。
 
「住宅ローンの年末残高×1%または0.7%」が、必ず現金として戻るわけではない点に注意してください。
 

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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