更新日: 2022.09.29 その他税金

副業収入「300万円以下」は雑所得!? 政府の副業推進の流れと併せて解説

執筆者 : 古田靖昭

副業収入「300万円以下」は雑所得!? 政府の副業推進の流れと併せて解説
国税庁は2022年8月1日に公表した所得税基本通達の改正案において、「副業の収入が300万円を超えない場合、原則として雑所得とする」という内容でパブリックコメントを求めました。
 
本記事では、雑所得と事業所得の違いや、政府の副業推進の流れについて解説します。
古田靖昭

執筆者:古田靖昭(ふるた やすあき)

二級ファイナンシャルプランニング技能士

副業収入300万円以下は雑所得になる可能性あり

今まで副業は、原則「雑所得」ではあるものの線引きがあいまいで、明確な判断基準がありませんでした。
 
雑所得で申告するよりも事業所得の方が、「損益通算」「繰越控除」「青色申告による最大65万円の所得控除」といったメリットも多いことから、事業所得で申告する人もいるような状態です。
 

事業所得とは

事業所得とは、「農業」「漁業」「製造業」「卸売業」「小売業」「サービス業」その他の事業を営む人の事業から生じた所得のことです。ただし、不動産の貸し付けや山林所得、譲渡所得については除かれます。
 
事業所得は総収入金額に必要経費を引いた金額で計算します。もし収益が上がらず赤字になった場合、一定の順序に従うことで他の所得金額から控除できる「損益通算」があります。
 
また、青色申告すれば最大65万円の所得控除ができます。青色申告は、所得にかかる取引を複式簿記で記帳し、貸借対照表や損益計算書を確定申告書に添付して申告期限内に提出すれば受けられます。
 
もし事業所得に赤字がある場合で、損益通算しても控除しきれない金額があれば、その赤字額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年の所得金額から控除できます。
 

雑所得とは

雑所得とは、「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「事業所得」「給与所得」「退職所得」「山林所得」「譲渡所得」「一時所得」のいずれにも該当しない所得のことです。他の所得に該当しないものはすべて雑所得となります。主に公的年金やFXによる収入、印税、講演料、副業収入などがあります。
 
事業所得と異なり、「損益通算」や「繰越控除」がないため、もし副業で赤字になっても他の所得金額に控除ができず、また「青色申告による最大65万円の所得控除」もできないため節税効果もありません。
 

政府は副業を推進している

内閣官房に設置された新しい資本主義実現会議において、副業推進の理由に「成長分野・産業への円滑な労働移動を進めるため」としており、副業や兼業を推し進めるとしています。
 
また、厚生労働省が2018年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」も策定していることから、実際に政府は副業を推進しているといえます。
 
しかし国税庁は、所得税基本通達において副業収入300万円以下の場合、事業所得にできず雑所得として申告させることを考えています。政府の副業推進の流れからは逆行しているようにも見えますが、なぜこのような改正案が検討されているのでしょうか。
 
国税庁は、政府の副業推進の流れに逆行しているわけではありません。今まで事業所得と雑所得の線引きをあいまいにしていたことで、不正な節税対策が行われていました。
 
節税対策の方法は、副業で必要経費を多く出して故意に赤字にした上で、給与所得と損益通算して節税するやり方です。不正なやり方の節税対策をつぶすために、副業収入300万円以下は雑所得にしようとしていると考えられます。
 
副業として事業を行う場合には、事業所得のメリットがありません。しかし、今までは副業を禁止にしていた企業も多い中、政府を始めとして副業を推進するようになりました。
 
もしこれから副業を検討している人は、副業収入300万円以下の税制面でのメリットがないものの、定年退職後のセカンドライフまでを見据えて考えるようにするとよいでしょう。
 

出典

国税庁 「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募手続の実施について
国税庁
内閣官房 新しい資本主義実現会議 新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画
厚生労働省 副業・兼業の促進に関するガイドライン
 
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士

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