更新日: 2019.01.10 控除
この場合、住宅ローン控除は使える!? 住宅ローン控除のよくある誤解とは?
住宅ローンを使ってマイホームを取得すると、税金の軽減が受けられるのが「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」です。
ただ、この制度、とにかく住宅ローンさえ組んでいれば税金軽減が受けられるというものではありません。ここでは、住宅ローン控除が受けられると思ったのに受けられないケースをはじめ、住宅ローン控除でよくある誤解を紹介していきます。
Text:福島えみ子(ふくしま えみこ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
マネーディアセオリー株式会社 代表取締役
リュクスセオリーFPサロン 代表
大学卒業後、都市銀行に入行。複数の銀行、法律事務所勤務中に、人生の悩みは結局のところお金と密接に関係することを痛感、人生をより幸せで豊かにするお手伝いがしたいとファイナンシャルプランナーに。FP会社にて勤務後、独立。これまで500件以上の個人相談を担当すると共に、セミナー、執筆と幅広く活動。相続・資産運用・住宅相談・リタイヤメントプラン等を得意とし、個人相談にも力を入れる一方で、セミナーや企業研修、執筆を通じてわかりやすくお金の知識を発信することに注力している。
その広さでは住宅ローン控除が使えない?
住宅ローン控除で意外につまずくケースが、購入する住宅の面積です。ファミリータイプの住宅や一戸建ての場合はほぼ問題ありませんが、気をつけたいのがシングルや夫婦でマンションを購入する場合です。
というのは、住宅ローン控除が適用されるには、「その住宅の床面積が50平方メートル以上であること」という要件があるからなのです。
ところが実際のマンション物件には46平方メートルや48平方メートルなど、「あと少しで控除が使えるのに」といった面積のものも少なくありません。さらに、この制度で適用となる面積というのは、登記簿に記載の床面積(公簿面積)ですから、物件チラシや広告などにある面積とは違う場合もあります。
しかもマンション等では、壁や柱の中心から測った面積である壁芯面積でチラシ等が表示されていることが多いため、チラシ等で一見50平方メートルをクリアしているように見えても、住宅ローン控除が使えないこともあるのです。
「あと、ほんの少し広ければ住宅ローン控除を受けられたのに」と後悔しないよう、まずは広さをしっかり公簿面積までチェックしておきましょう。
思ったよりも税金の軽減を受けられない?
無事住宅ローン控除が使える場合でも、まだ、よくある誤解があります。それは、控除を受けられる金額についての誤解です。
控除を受けられる額は、ローン残高に対して1%の額です。
それゆえ、ローンをたくさん借りていれば、借りているほど税金がたくさん戻ってくると思い込んでいる人もいますが、上限金額があります。適用される年によっても違いますが、1年につき通常住宅の場合は40万円、認定住宅の場合は50万円で、最大10年間受けられます。
そして、さらなる誤解が多いのが、「トータルで」いったいどれくらい税金がおトクになるのかという点です。相談のなかで、控除で戻ってくる税金を「4000万円のローンを組むので、40万円×10年間、トータル400万円トクするのですね!」と言う人も少なくないのですが、残念ながら実際の額はもっと少なくなります。
その理由は、控除額の計算のもととなるローン残高は、各年の年末時点のローン残高だからです。毎月返済をしていけば、当然ながら年月の経過とともにそのローン残高は減っていきます。
その減ったローン残高をもとに控除額を計算するわけですから、年々控除額は下がっていきます。具体例を見てみましょう。
例えば、4000万円を2018年3月に借りた場合の10年間の控除額は、以下のようになります。
住宅ローン控除額(例)
【設定条件】
借入時期 2018年3月
借入金額 4000万円
借入期間 30年
条件 固定金利 元利均等返済
金利 1.4% 認定住宅以外の取得
このように、控除の上限額40万円を10年間フルに使えるためには、10年後もローン残高が4000万円以上ある必要があります。とはいえ、控除のためだけにローン借入額をわざわざ多くするのは、本末転倒となりかねないのは言うまでもありません。
築年数がたった中古住宅は控除が使えない?
ところで、住宅ローン控除を使えるのは、なにも新築の住宅だけではありません。中古住宅の取得にも使えますが、よくある誤解は「築20年の中古住宅は控除が使えませんよね?」というものです。
まず、マンションなどの耐火建築物の場合は、築25年でも控除適用となるのに加え、それよりも築年数が古くても控除を使える場合があります。それは、次の3つの証明書のうち、いずれかを提出できる場合です。
(1)「耐震基準適合証明書」
(2)「建設住宅性能評価書の写し」
(3)「既存住宅売買貸担保責任保険契約にかかる付保証明書」
一見難しそうな名前ですが、要は、「地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準」や、耐震基準に適合する建物であること、その評価がされたことを証明する書類などです。
購入希望の住宅が、少し築年数を超えているといった場合でも、こういう手があることを覚えておくとよいでしょう。ただし、例えば「耐震基準適合証明書」は、住宅の売主の名前で発行を受ける必要があるなど、事前の手間と準備が必須となる点には注意が必要です。
住宅を買っただけじゃ住宅ローン控除が受けられない?
ところで、住宅ローン控除にはこんな要件もあります。
「新築または取得の日から6カ月以内に居住のように供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること」
つまり、住宅ローン控除は、住宅を購入しただけではまだ使えません。その住宅に居住してはじめて使えるのです。ここで気をつけておくべきが、住宅ローン控除は、購入や新築した年に申請するのではなく、あくまでも居住した年に申請するという点です。
例えば、年末に購入して翌年の年明けに居住開始した場合は、翌年の申請になります。そうすると、翌年の1月から12月までローンの返済をして、1年間返済した分だけローンの残高が減ってしまっているため、その分、控除額も少なくなってしまいます。
購入だけでなく、その住宅に住み始める時期にも注意を払っておく必要があるのです。
このように、「住宅ローン控除があるから」と思っていても、落とし穴ともいうべき誤解が意外にあるのが住宅ローン控除の制度です。住宅の購入検討と同時に、しっかり控除の要件についても準備しておくことをおすすめします。
Text:福島 えみ子(ふくしま えみこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
マネーディアセオリー株式会社 代表取締役
リュクスセオリーFPサロン 代表