社会保険の適用拡大で扶養の範囲内から外れてしまうけど、メリットはある?
配信日: 2022.11.02
今回は、社会保険の適用拡大によって扶養の範囲内から外れてしまうことに対するメリット、そしてデメリットについて解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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社会保険の適用拡大(※1)とは?
2022年9月時点では、従業員の数が500人を超える企業に対し、社会保険の適用を義務付けていましたが、2022年10月より従業員数が100人超の企業に対しても、社会保険の適用が義務付けられることになりました。
また、今後2024年10月からは従業員数が50人を超える企業に対しても社会保険の適用が義務付けられます。
<適用対象者>
従業員数が100人を超える企業にパートで勤めていたとしても、すべてのパートやアルバイトの人が適用対象になるわけではありません。
対象となるのは、以下の要件をすべて満たした人です。
●週の所定労働時間が20時間以上である
●月額の賃金が8万8000円以上である
●2ヶ月を超える雇用の見込みがある
●学生ではない
つまり、学生アルバイトの人や、週の所定労働時間が20時間未満の人などは対象となりません。
扶養の範囲から外れてしまうけど、メリットはある?
社会保険に加入することで、将来受け取れる年金額を増やせるほか、健康保険に加入することでその給付を受けられるようになります。傷病手当金や出産手当金のほか、療養費や高額療養費、出産育児一時金、埋葬料などは申請することで受け取れます。
特に傷病手当金や出産手当金は、給与が支払われない時の補てんとなるため、非常に心強いのではないでしょうか。
さらに、保険料の半分は事業主が負担してくれるため、自分が負担する保険料額は本来の半分で済む点もメリットでしょう。
社会保険へ加入することで、自身が障害の状態になった際には障害厚生年金を受給できる可能性がありますし、万が一の際には遺族の方に遺族厚生年金が支払われます。要件を満たせば国民年金によって支払われる障害基礎年金、もしくは遺族基礎年金と合わせて支給されるため、手厚い支給が受けられる可能性があります。
保険料の負担と扶養から外れる場合の税金
では、社会保険の加入者となった場合、年間の保険料負担はどのくらいになるのでしょうか。また扶養から外れることで、世帯主の税負担はどのくらい増えるのでしょうか。
<年間保険料負担額(目安)(※2)>
社会保険に加入した際の年収別社会保険料負担額は、表1のとおりです。
【表1】
出典:厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト パート・アルバイトのみなさま/年金額・保険料シミュレーション
あくまで目安であり、実際の金額とは異なります。
<扶養から外れる場合の税負担>
世帯主の年収(給与収入)が500万円だった場合で、夫婦2人で子どもがいないケースだと、世帯主の控除は、給与所得控除と社会保険料控除、配偶者控除と基礎控除です(生命保険料控除や寄付金控除などは考慮しないものとします)。
給与収入500万円に該当する給与所得控除額は144万円ですので、給与所得金額は356万円です。そして、社会保険料(東京都在住、40歳以下)は約69万円です。そうなると、最終的な課税所得金額は356万円-(約69万円+38万円+48万円)=201万円です。
仮に配偶者控除がなくなったとすると、課税所得金額は239万円となり、所得税率は10%ですので、3万8000円税額が上がることになります。年収にもよりますが、社会保険料負担の方が多くなることがわかります。
社会保険に加入することで増える年金額
では、社会保険に加入することで、将来受け取れる年金額はどのくらい増えるのでしょうか。年収(横)そして加入期間(縦)に応じた年金額は表2のとおりです。
【表2】
出典:厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト パート・アルバイトのみなさま/年金額・保険料シミュレーション
老齢基礎年金に加え、これだけの老齢基礎年金を受け取れます。
まとめ
2022年10月から社会保険への加入適用者となる場合、どのような働き方を続けていくのかを考える必要があります。扶養から外れることで、年間の収入に制限を設けることなく働くこともできますが、正社員のように雇用契約が定年まで確保されているわけではありませんので、更新の際に勤め先が変わることもあるでしょう。
また、同じ年収を継続していくとしても、支払った保険料以上の年金が受け取れるのは15年以上加入した場合です。もちろん、受け取れる年金額が増える以外のメリットもありますので、130万円の壁を気にせず、働いてみてもよいかもしれません。
自分のこれからのライフイベントを考慮しながら、最終的にどのような働き方を選択するのがよいか、考えてみましょう。
出典
(※1)厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト 厚生労働省から法律改正のお知らせ
(※2)厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト パート・アルバイトのみなさま/年金額・保険料シミュレーション
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員