更新日: 2022.11.30 その他税金
収入が大幅にダウン…「住民税」を払えない場合の対処法って?
今回は、経済的な事情などにより住民税を払うことができないときの納付猶予や減免、および新型コロナウイルス感染症の影響に伴う住民税の徴収猶予制度について解説します。
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
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住民税の減免
住民税の減免の事由に該当する方は、申請することで減免を受けられる場合があります(※1)。
この申請は、税額の決定後から納期限までに行う必要があり、納期限を過ぎた税額については減免を受けられません。また、申請により必ず減免の対象になるとは限らず、審査の結果では減免が適用されない場合もあります。
1. 減免対象者と減免手続き
(1)生活保護を受けている方
生活保護法に規定する扶助を受けている方は、「生活保護受給証明書」を持参して市区町村の税務課窓口で手続きを行います。
(2)失業などで生活が著しく困難となり、当分は回復の見込みがない方
納税者本人および納税者と生計を一にする方が、現在無収入あるいは収入が減少しており、かつ所持金や預貯金などの資産もなく、当面の間は状況の回復が見込めない方で、猶予や納期限の延長を行っても納税が困難と認められる場合、減免の適用を受けられます。
手続きは原則として、市区町村の納税窓口で納税の猶予などの納税相談を行った後に、必要な書類を提出して申請します。
(3)災害により自己が居住する住宅および家財に甚大な被害を受けた方
以下の2つの条件をすべて満たす方が減免の対象となります。
・災害による損害の金額(保険などで補てんされる金額を除く)が、その住宅および家財の価格の10分の3以上である
・前年の合計所得金額が1000万円以下であり、かつ、損害の程度が2割以上である
こちらも原則、市区町村の窓口で納税相談を行ってから、必要な書類を提出して申請の手続きをすることになります。
2. 減免割合
(1)生活保護を受けている方:全額免除
(2)失業などで生活が著しく困難となり、当分は回復の見込みがない方:全額免除
(3)災害により自己が居住する住宅および家財に甚大な被害を受けた方
被害の程度と前年の合計所得金額により、図表1の減免割合となります。なお、減免金額は、納期未到来分の税額に以下表の減免割合を乗じて算出されます。
図表1
※練馬区 「特別区民税・都民税(住民税)の減免」を基に筆者作成
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う住民税の猶予
新型コロナウイルス感染症の影響により、住民税(特別徴収分)の納付が困難な場合は以下のとおり、徴収猶予を申請することができます(※2、※3)。
1. 徴収猶予制度の概要
(1)徴収猶予の要件
新型コロナウイルス感染症に関連して以下のケースに該当する方は、猶予制度の適用対象となる場合があります。
・財産に相当な損失が生じた
・納税者本人または生計を一にする家族が病気にかかった
・事業を廃止、または休止した
・利益の減少など事業に著しい損失を受けた
(2)猶予期限と猶予期間中の延滞金
猶予期限は原則1年ですが、状況により延長される場合があります。また、猶予期間中の延滞金は、全部または一部免除となります。
2. 申請方法
徴収猶予の申請に当たっては、まずは市区町村の税務窓口で納税の相談を行うことをお勧めします。その上で、必要な書類を用意して窓口に提出してください。なお、電子申請(eLTAX)や郵送で手続きを行うこともできます。
まとめ
失業などで収入が前年より大幅に減った場合や、新型コロナウイルス感染症の影響で納税が困難な状況になった場合は、住民税について納付の猶予や減免を受けられることがあります。
いずれにしても住民税の納付が困難な場合、まずは市区町村の税務窓口に相談しましょう。また、納期限を超えた税額については徴収猶予や減免を受けることはできませんので、早めに相談して申請手続きを行うことが大切です。
出典
(※1)練馬区 特別区民税・都民税(住民税)の減免
(※2)総務省 新型コロナウイルス感染症の影響に伴う地方税における対応について
(※3)練馬区 新型コロナウイルス感染症の影響により住民税の納入が困難な事業所の方へ
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士