更新日: 2022.12.13 控除
個人年金保険と契約形態で大きく異なる年金受取時の税金
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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個人年金保険とは
個人年金保険は老後資金のための貯蓄型の保険です。60歳や65歳など契約時に定めた年齢から年金を受け取れます。年金の受け取り方には、確定年金、有期年金、保証期間付終身年金などがあります。
確定年金は、10年、15年など契約時に定めた年金の受取期間中は、被保険者の生死にかかわらず年金を受け取れるものをいいます。したがって、年金受取期間中に死亡しても、一般的に残りの期間に応じた年金または一時金(年金現価)を受け取ることができます。
有期年金は、10年、15年など契約時に定めた一定期間、 被保険者が生きている場合のみ、 年金が受け取れるものをいいます。確定年金と違い、年金受取人が死亡した時点で、年金の支払いが終了します。
保証期間付終身年金は、年金受け取り開始後、10年、15年など一定期間は被保険者の生死にかかわらず年金を受け取れる保証期間があり、その後は生きている限り年金が受け取れるものです。
保険料負担者と年金の受取人が同一人の場合
契約者(保険料負担者)、被保険者、年金受取人が同一人の場合、毎年受け取る年金は雑所得として所得税・住民税の課税対象です。雑所得金額が25万円以上あると、その金額の10.21%が所得税および復興特別所得税として源泉徴収されます。「源泉分離課税」とは異なり確定申告による清算が必要です。
雑所得は以下のように計算されます。
総収入金額-必要経費=雑所得
個人年金保険の必要経費は、次の計算式で求めます。
年金年額×払込保険料の合計額 / 年金の総支給見込額
年金の総支給見込額は、年金の受け取り方法によって異なります。
確定年金:年金金額×支給期間
有期年金:年金金額×(支給期間と余命年数いずれか短い年数)
保証期間付終身年金:年金金額×(保証期間と余命年数いずれか長い年数)
余命年数は所得税法施行令82条の3により、年金開始日の年齢で判定します。例えば、65歳時の余命年数は男性が15年、女性が18年となっています。
ちなみに余命年数(平均余命)は、ある年齢の方があと何年生きることができるかを表すもので、0歳時の平均余命を平均寿命といいます。
保険料負担者と年金の受取人が異なる場合
契約者(保険料負担者)A、被保険者B、年金受取人Bのように、保険料負担者と年金の受取人が異なる場合、贈与税の課税対象です。
勘違いしている人が多いのは、110万円の基礎控除の範囲で年金を受け取れば、贈与税を払わなくていいのでは、という点です。正しくは、年金受け取り開始時に「年金受給権の権利評価額」に贈与税が課され、2年目以降に毎年受け取る年金は所得税・住民税の課税対象になります(年金支給初年は全額非課税)。
なお、年金が支払われる際には、所得税は源泉徴収されません。
年金受給権の権利評価額は、次のいずれか高い金額です(相続税法24条)。
(1)解約返戻金の金額
(2)年金に代えて一時金の給付を受けることができる場合は一時金の金額
(3)予定利率による金額
例えば、年金額100万円を5年間受ける権利(予定利率1.5%)を取得した場合、
(1)解約返戻金の金額(仮定):476万5000円
(2)一時金:479万円
(3)予定利率による金額:478万3000円(100万円×複利年金現価率4.73)
ですので、479万円が評価額になります。ここから基礎控除110万円を差し引いた金額が課税される金額です。
なお、雑所得の金額や年金受給権の権利評価額は、保険会社から送られてくる「支払証明書」や「年金受給権評価額証明書」などで確認できますので、自分で計算する必要はありません。
以上のように、個人年金保険の受取時には税金がかかりますので、ご自身の契約ではどのようになっているのか、事前に確認するようにしましょう。
出典
国税庁 No.1610 保険契約者(保険料の負担者)である本人が支払を受ける個人年金
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。