更新日: 2022.12.16 年末調整
年末調整に必要な「保険料控除証明書」はいつごろ届く? 届かなかった場合はどうすればいい?
本記事では、年末調整における保険料控除の概要と保険料控除証明書の受領時期などについて解説するとともに、年末調整の電子化について紹介します。
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
年末調整における生命保険料控除の概要
1.年末調整の目的
会社員など給与所得者は、給与や賞与にかかる所得税および復興特別所得税(以下、所得税等)を、支給される給与や賞与から源泉徴収されています。源泉徴収された所得税等は、その人が1年間に納めるべき税額と必ずしも一致しません(※1)。
そこで、1年間に源泉徴収した所得税等の合計額と、1年間に納めるべき所得税等の額を一致させるために年末調整を行います。
2.生命保険料控除とは
この年末調整において、納めるべき所得税等の額を決定する際、所得から1年間に支払った生命保険料の一部を控除することができます(※2)。
生命保険料控除は、保険の契約時期に応じて新契約に基づくものと旧契約に基づくものとに区分され、それぞれ以下の額が控除されます。
(1)新契約(2012年1月1日以降に締結した契約)の控除額
新契約に基づく新生命保険料、介護医療保険料、新個人年金保険料の控除額は、それぞれ図表1の計算式に当てはめて計算した金額になります。
【図表1】
年間の支払保険料等(注) | 控除額 |
---|---|
2万円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万円超 4万円以下 | 支払保険料等×1/2+1万円 |
4万円超 8万円以下 | 支払保険料等×1/4+2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
国税庁 No.1140 生命保険料控除を基に筆者作成
(2)旧契約(2011年12月31日以前に締結した契約)の控除額
旧契約に基づく旧生命保険料と旧個人年金保険料の控除額は、それぞれ図表2の計算式に当てはめて計算した金額になります。
【図表2】
年間の支払保険料等(注) | 控除額 |
---|---|
2万5000円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万5000円超 5万円以下 | 支払保険料等×1/2+1万2500円 |
5万円超 10万円以下 | 支払保険料等×1/4+2万5000円 |
10万円超 | 一律5万円 |
国税庁 No.1140 生命保険料控除を基に筆者作成
(注)支払保険料等とは、その年に支払った金額から、その年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた残りの金額をいいます。
保険料控除証明書の受領時期について
年末調整において生命保険料控除を受けるためには、確定申告書の生命保険料控除の欄に必要事項を記入するとともに、「保険料控除証明書」などの証明書類を添付する必要があります(旧契約の一般の生命保険で、1つの契約の保険料が9000円以下であるものを除く)(※2)。
この「保険料控除証明書」は、各生命保険会社から10月から11月にかけてはがきや封書で送付されます。もし、年末調整までに「保険料控除証明書」が届かない場合は、各生命保険会社のコールセンターなどに問い合わせると良いでしょう。
また、「保険料控除証明書」を紛失した場合は、再交付を各生命保険会社のコールセンターなどに申し出てください。ただし、再交付には時間がかかります。年末調整に間に合わない場合、年明けに確定申告をする必要が生じますので、なるべく紛失しないように注意しましょう。
年末調整手続の電子化とは
1.年末調整手続の電子化のメリット
国税庁では、年末調整の電子化を進めています。これによって、保険料控除証明書などを電子データで受領し、控除申請書を電子的に作成することができるため、省力化とペーパーレス化を図ることが可能です(※3)。
2.電子化後の保険料控除手続
勤務先の企業において年末調整が電子化されている場合、保険料控除などの年末調整手続を、以下の手順でスマホやパソコンからペーパーレスで実施することができます(※4)。
(1)「年調ソフト」のダウンロード
国税庁が提供している「年調ソフト」を公式アプリストアからスマホやパソコンにダウンロードします。なお、パソコンに限り、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます(※5)。
(2)保険会社から保険料控除証明書をデータで受領
従来はがきなどで送付されていた保険料控除証明書を、以下のいずれかの方法を利用して電子データとして受領します。
・マイナポータル連携(※6)を利用して一括取得する方法
・保険会社のホームページなどからダウンロードする方法
なお、全ての保険会社が電子証明書の発行に対応しているわけではありませんので、詳細は各保険会社のホームページでご確認ください。
(3)「年調ソフト」を利用して控除申告書を作成し、提出
「年調ソフト」を利用して、以下の要領で控除申告書を作成し、勤務先の指示に従いデータを提出します。
・「年調ソフト」の案内画面に従い、氏名などの必要事項を入力
・「保険料控除申告書」を選択して必要事項を入力し、ダウンロードした控除証明書のデータを添付
まとめ
年末調整において、生命保険料控除を受けるためには、原則として各生命保険会社が発行する「保険料控除証明書」などの証明書類の添付が必要となります。「保険料控除証明書」は、通常10月から11月に各生命保険会社から送付されますので、紛失しないように注意しましょう。
なお、年末調整が電子化されている企業に勤めている人は、マイナポータルや生命保険会社のホームページなどからダウンロードした控除証明書のデータを使用し、ペーパーレスで年末調整を行うことができます。
出典
(※1)国税庁 No.2662 年末調整のしかた
(※2)国税庁 No.1140 生命保険料控除
(※3)国税庁 年末調整手続の電子化の概要・メリット
(※4)国税庁 年末調整手続の電子化に関するパンフレットについて
(※5)国税庁 年末調整手続の電子化に向けた取組について
(※6)デジタル庁 マイナポータル
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士