更新日: 2022.12.22 控除
最近登場したばかり?「所得金額調整控除」ってどんな制度?
しかし「所得金額調整控除」と聞くと「なにそれ?」と思う人も多いのではないでしょうか。いったいどんな制度なのか、かんたんに解説します。
執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
そもそも「控除」ってなに?
そもそも「控除」とは、納めるべき税額を計算する際に個別の事情を加味するための仕組みです。控除を受けられる条件にあてはまっている人がそのことを申請すると、税金が安くなります。
会社員や公務員なら勤務先の「年末控除」、自営業やフリーランスなら「確定申告」で申請するのが一般的です。条件にあてはまっていても、自分で気付いて申請しないと適用されないので要注意です。
控除にはさまざまな種類がありますが、そのなかでも所得金額調整控除は2020年分以降の所得税が対象になる、導入が始まったばかりの比較的新しい控除です。知らないまま申請し忘れて損をすることがないよう、どんな控除なのか確認しておきましょう。
「所得金額調整控除」はどんな控除?
所得金額調整控除はその名のとおり、税額を計算するときの根拠となる「所得」の金額を調整するための控除です。
この控除を利用できるのは「子どもや特別障害者がいる家庭の人」もしくは「給与所得と年金所得の両方がある人」です。
<子どもや特別障害者がいる家庭の人>
具体的には、以下の条件にあてはまる人が対象とされています。
●本人が特別障害者に該当する者
●年齢23歳未満の扶養親族を有する者
●特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族を有する者
「特別障害者」は障害者の中でも特に重度の人を指す言葉で、例えば身体障害者手帳に1級または2級と記載されている人、精神障害者保健福祉手帳に1級と記載されている人などが該当します。
夫婦のどちらか一方しか適用できない扶養控除と違い、所得金額調整控除は2人とも条件を満たしていればそれぞれが適用を受けることができます。間違えやすいポイントなので気を付けましょう。
この控除が適用されれば、以下の金額を給与所得から差し引いたうえで税額計算が行われます。
・控除額={給与等の収入金額(1000万円超の場合は1000万円) - 850万円}×10%(1円未満の端数は切り上げ)
例えば年収900万円の人の控除額は「5万円」です。
<給与所得と年金所得の両方がある人>
所得金額調整控除が適用されるパターンがもう1つあります。具体的には、以下の条件にあてはまる人が対象です。
■その年分の給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に関わる雑所得の金額がある給与所得者で、その合計額が10万円を超える者
ざっくり言うと、給与と年金あわせて10万円を超えていたら対象になる可能性が高いです。控除額は以下のとおりです。
■控除額={給与所得控除後の給与等の金額(10万円超の場合は10万円) + 公的年金等に関わる雑所得の金額(10万円超の場合は10万円)}-10万円
給与も年金もどちらも年間10万円を超えている場合、控除額は「10万円」です。
先述の「子どもや特別障害者がいる家庭の人」の所得金額調整控除に該当する場合は、その適用後の給与所得の金額から控除します。
まとめ
所得金額調整控除は、比較的最近できた制度です。適正に申請すれば税金の負担を軽くすることができますが、年末調整のときに「またいつもの手続きか」と思って詳しく見ずに今までどおり記入して書類を提出してしまうと恩恵を受けられません。
払い過ぎた税金を取り戻せず、本来より高い税負担をする羽目になりますので、年末調整や確定申告などお金に関する書類は適当にすまさず、1つ1つ丁寧に確認しながら進めていくようにしましょう。
出典
国税庁 No.1411 所得金額調整控除
国税庁 所得金額調整控除に関するFAQ(源泉所得税関係)(令和2年6月)
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表