更新日: 2022.12.24 確定申告

年金受給者も「確定申告」が必要? 不要なケースと必要なケースを解説

執筆者 : 西岡秀泰

年金受給者も「確定申告」が必要? 不要なケースと必要なケースを解説
初めて公的年金を受け取った人の中には、年金にかかる税金や確定申告が必要なのかどうかが分からないという人もいるでしょう。
 
本記事では、年金受給者で確定申告が不要な人と必要な人について解説します。確定申告をしないと損をする可能性もあるので、年金を受給している人は本記事を参考に確定申告の要・不要を確認しましょう。
西岡秀泰

執筆者:西岡秀泰(にしおか ひでやす)

社会保険労務士・FP2級

公的年金にも税金がかかる

まず、公的年金に対する課税関係について確認しましょう。公的年金は「雑所得」として、その他所得(給与所得や事業所得、不動産所得など)と合算して総合課税されます。
 
公的年金の雑所得の額は、年金の受給額から公的年金等控除を差し引いて計算します。公的年金以外に雑所得がなければ、計算式は次の通りです。
 
・雑所得=年金受給額-公的年金等控除額
 
公的年金等控除額は、年齢に応じて次の通りです。

・65歳未満の公的年金等控除:60万円(所得1000万円以下、年金額130万円未満)
・65歳以上の公的年金等控除:110万円(所得1000万円以下、年金額330万円未満)

年金以外の所得がなければ、所得税の課税対象額は、雑所得からその他の所得控除を差し引いた金額です。
 
・課税対象額=雑所得-公的年金等控除以外の所得控除額
 
総所得が2400万円以下の人は基礎控除が48万円であるので、65歳未満の人は年金受給額が108万円以下、65歳以上の人は158万円以下ならば課税対象額が0円となるので税金はかかりません。
 

確定申告が不要なケース

公的年金の受給者で確定申告が必要ないのは、「公的年金に税金がかからないケース」と「正しい税額が公的年金から源泉徴収されているケース」です。公的年金からは、一定の控除額を差し引いた額に5.105%(所得税と復興特別所得税)を乗じた金額が源泉徴収されます。
 
一定の控除とは次の通りです。

・公的年金等控除
・基礎控除
・配偶者控除や扶養控除など(扶養親族等申告書を提出している場合)

公的年金以外に所得がなく、かつ上記以外の所得控除がなければ、公的年金にかかる所得税はすでに源泉徴収されているため、確定申告の必要はありません。
 

確定申告が必要なケース

確定申告が必要なのは、主に「公的年金以外に所得があるケース」です。会社員の給与所得や自営業者の事業所得、不動産所得などが年間20万円以上あれば、確定申告が必要です。
 
また、「公的年金等控除・基礎控除・配偶者控除など以外の所得控除があるケース」では、確定申告によって税金が安くなり、源泉徴収された税金の一部が還付されます。確定申告しないと税金が安くならない主な所得控除は次の通りです。

・医療費控除
・社会保険料控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・寄付金控除・ふるさと納税
・住宅ローン控除 など

公的年金額が年間400万円以上の人も確定申告が必要ですが、対象者はあまりいないでしょう。
 

確定申告の要・不要を確認して必要に応じて申告しよう

公的年金からは「公的年金等控除」「基礎控除」「配偶者控除」などを反映した所得税が源泉徴収されているため、原則確定申告は不要です。ただし、公的年金以外に収入のある人は確定申告が義務付けられています。
 
また、源泉徴収時に反映されていない所得控除がある場合は、確定申告によって税金が安くなるため忘れずに確定申告しましょう。
 

出典

国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
国税庁 確定申告が必要な方
国税庁 No.1100 所得控除のあらまし
 
執筆者:西岡秀泰
社会保険労務士・FP2級

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