更新日: 2022.12.28 控除

夫と妻の年収が同じくらいの場合、子どもはどちらの扶養に入れる?

執筆者 : 林智慮

夫と妻の年収が同じくらいの場合、子どもはどちらの扶養に入れる?
夫婦がともに会社員の場合、子どもはどちらの扶養に入ればよいのでしょうか。
 
健康保険では、「年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの)が多いほう」に扶養されます。
 
では、年収が同じ場合はどうするのでしょう? 
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

「扶養」とは

扶養とは、経済的に自立できない家族や親族に、自分の収入で経済的に援助することをいい、経済的援助をする人を「扶養者」、援助を受ける人を「被扶養者」といいます。
 
被扶養者となる人の要件には、所得税の場合「年間の合計所得が48万円以下」、健康保険の場合は年間収入130万円未満、かつ扶養者の2分の1未満(自宅外の場合は仕送り未満)という収入に関する要件を満たす必要があります。
 
扶養する家族が増えると扶養者の負担は増えますが、健康保険や所得税・住民税には負担を軽減できるような制度があります。
 
所得に対して課せられる所得税や住民税には「扶養控除」があり、一定の金額を課税所得から差し引くことができます。被扶養者1人につき、16歳以上の一般の控除対象扶養親族は38万円(住民税33万円)、19歳以上23歳未満の特定扶養親族は63万円(45万円)を所得から控除できます。16歳未満の年少扶養親族には所得控除がありませんが、住民税非課税の判定の際、扶養人数にカウントされます。
 
健康保険料は、健康保険に加入している扶養者の標準報酬月額によって決まり、被扶養者が何人になっても、扶養者が支払う保険料が増額することはありません。被扶養者分の保険料を一切負担することなく、被扶養者は健康保険を利用して医療機関にかかることができるのです。
 

健康保険は生計を維持する者の扶養とする

令和3年4月30日の厚生労働省の通知「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」により、夫婦が子どもを扶養する場合の健康保険上の扶養認定が明確にされました。令和3年8月1日からは、年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの)が多い方の被扶養者とされます。
 
しかし、同じくらいの給与の場合、残業の時間等で年収の多い・少ないがたびたび入れ替わります。その都度に被扶養者を変更していては、被扶養者は困ってしまいますね。
 
「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」には、「夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多いほうの1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする」とあります。
 
少々収入が逆転しても、生計を維持する者がすぐに入れ替わるわけではありません。差額が収入の多いほうの1割以内の逆転なら、届け出は必要ですが、実際に生計を維持している者の扶養とされます。
 
また、共済組合の組合員であって、扶養手当の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えないこと、主として生計を維持する者が育児休業等を取得した場合、休業期間中は、被扶養者の地位安定の観点から、特例的に被扶養者を異動しないことなどが定められています。収入の多いほうの扶養に入るのが原則ではありますが、被扶養者の地位の安定が優先されています。
 
もし、年間収入の逆転により被扶養者が異動する場合は、年間収入が多くなったほうの保険に入れることが決まってから、今の扶養から削除します。被扶養者の地位が中ぶらりんにならないようにするためです。
 
健康保険上、どちらの扶養になるかは明確になっています。しかし、健康保険で決定した扶養関係がそのまま税制上の扶養となるということではありません。
 

健康保険上と税制上の扶養は別

税制上の扶養は健康保険上の扶養は異なり、収入の多いほうが扶養者になるような決まりはありません。両親のどちらの扶養としても、問題はないのです。ただし、同じ子どもを重複して扶養家族にはできません。どちらか一方の扶養家族となります。
 
例えば、子どもが2人の場合は、健康保険では2人とも収入の多いほうの親の扶養とされますが、税制上は被扶養者の扶養は収入の多い・少ないは関係ないので、それぞれ1人ずつ扶養家族とすることも可能です。
 
税制上の扶養とする場合、その旨を記載した「給与所得者の扶養控除等申告書」をそれぞれの勤務先に提出することで、給与についての扶養控除等の諸控除を受けることができます。
 
どちらの扶養家族とするかは、家計全体での税金、そして会社からの扶養手当の影響も考え、総合的に判断しましょう。
 

出典

厚生労働省 夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について
全国健康保険協会 被扶養者とは?
国税庁 2以上の所得者がいる場合の扶養親族等の所属
国税庁 No.1180 扶養控除
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者

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